彡(゚)(゚)「はあー、ワイのコレクションもなかなかのもんやな」
彡(゚)(゚)「本棚にはありとあらゆるラノベが並び、ショーケースにはフィギュアがいっぱいや」
彡(-)(-)「でもすこし隙間があるな。埋めたいなあ」
彡(゚)(゚)「……」
彡(^)(^)「せや、また盗ってきたろ!」
イチオシ記事
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そのコレクションを充実させるにあたり、金を払ったことなど一度もなかった。
だが、男の仕事は決して盗人というわけでもない。
男にとって、盗むという行為はコレクター欲を満たすための手段に過ぎなかった。
では、男の仕事とは何であったのか。
彡(^)(^)「さあ、今日も墓の点検をはじめるか!」
男は、とある墓園の管理を行政から任されていた。
墓園をきれいに保ち、新しい入居者があれば快く迎え入れる。
それが、男の仕事であった。
しかし、墓園の管理というのは実に退屈なもので。
掃除なんてものは、一時間もあれば終わってしまい
残った時間は小さい管理室で暇を持て余すのみだ。
さまよいあるくようになっていた。
彡(^)(^)「おっ! こんなところに、新しいお客さん発見!」
無縁仏の受入れ営業は、男が思いついた仕事の中でも特に有意義なものであった。
広大な墓園には、まだまだ使われていない墓がたくさんあったため
男はそれを積極的に売り出すことにしたのだ。
だから男は、営業のターゲットを家族のいない孤独な者たちへと絞ることにした。
その目論見は見事的中し、男は膨大な数の客を獲得することとなった。
だが、そうして得た多くの無縁仏をもってしても
その広大な墓園を埋めるには一生をかけねばならないでだろう。
この無縁仏営業は、男の本来の仕事とは大きくかけ離れたものであったが
誰も男をとがめるようなことはなかった。
その男は、貪食の限りを尽くした。
彡(゚)(゚)「腹減ったなあ。深夜2時か」
彡(゚)(゚)「……」
彡(^)(^)「大盛りUFO食べたろ!」
いつ何時であろうと、腹が減ったら食べる。
深夜であろうが早朝であろうが、分け隔てなく食欲を解き放つ。
それが男の日常であった。
彡(゚)(゚)「UFOだけじゃ、なんか味気ないなあ」
彡(^)(^)「せや、あんこかけたろ!」
その力強く頭を穿つような甘さを、舌に馴染む柔らかさ、黒く艶やかな色彩。
その全てを慈しみ、信奉し日毎食した。
彡(。)(;)「さ、さすがに焼きそばにはあんこはあわんかったな……」
男の食事は、冷凍食品や缶詰といったできあいの物ばかりで栄養バランスに偏りがあった。
当然、男の体の内は健康とは言えない状況で
時折襲い来る苦痛に地面をのたうち回ることもしばしばだ。
しかし、それでも男は貪食を止めなかった。
ある朝、男は墓園の中にある自身の家の墓に向かった。
墓石には、祖父母と両親、それと若くして亡くなった兄の名が刻まれている。
彡(゚)(゚)「ワイもいつかは、この墓に入るんやろうなあ」
彡(゚)(゚)「決して仲のいい家族とは言えんかったが、それでも昔は楽しかった」
彡(;)(;)「また、みんなで食卓を囲みたいもんや」
父が連れて行ってくれた、こってりが売りのラーメン屋。祖父が買ってくれたソフトクリーム。
兄と奪い合った、自生のアケビの種。
思い出すだけで、男の腹はぐううと音をあげる。
だが、どれも現代においては手に入らない物ばかりだ。
だから男は、思い出の料理に思いを馳せ
せめてもの慰みに今日もお気に入りのあんこに手を付けるのだった。
その男は、怠惰であった。
彡(゚)(゚)「……仕事だるいなあ」
彡(゚)(゚)「……」
彡(^)(^)「そうや! さぼったろ!」
それに飽きたら、今度はテレビゲームに取り組んだ。
そして、それすらも飽きたらレンタルビデオ屋に走り、名作映画を片っ端から借りてきた。
その時すでに、男のサボタージュは三日に及んでいた。
彡(゚)(゚)「この映画おもろいなあ」
男の目に留まった映画は、アメリカのロードムービーだった。
髭を生やした壮年のライダーが、荒野を延々と走る映画だった。
髪をなびかせ、全身に風を感じるその気持ちよさそうな姿に、男は自身を重ねた。
彡(゚)(^)「ライトマイファイアや!」
そこからの男は俊敏であった。
車庫で埃を被っていた愛車、あずき色のセロー225を引っ張り出し
その美しい姿にニヤリと厭らしい笑みをこぼした。
だが、長らく走らせていないバイクだ。
当然のように、いくらセルを回そうともエンジンはかからない。
彡(-)(-)「どっか、ちかくにバイクやあったかな」
男は、バイク屋へと押し入り使えそうなパーツを片っ端から盗ってきた。
そして時間をかけて、一つ一つの部品を丁寧に交換し再びセルを回す。
深夜の住宅街に、ギュンギュンとセルモーターの金切り声が轟く。
ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン……ドルンドルンドルンドドドドドド。
息を吹き返した愛車に、男は狂喜乱舞し
まるでステップを刻むかのようにリズミカルにアクセルをひねり続けた。
彡(゚)(^)「ライダーの聖地、北海道にいったろ!」
彡(^)(^)「広大な大地を、ワイの愛車で踏破するんや!」
その2日後、男は北海道にいた。
しかし、美しい景色に心振るわせるのも初めのうちだけで
男はしばらくするとバイクを走らせることにすら飽いてしまったのだ
更にその翌日には何事もなかったかのように職場へと向かうのであった。
そうした、男の衝動的なサボタージュは、半年に数回程度の割合でその後も続いた。
切なさとか虚しさを感じるのに、満ち足りた幸せがあるような気もして複雑な気持ちになる
Source: V速ニュップ
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