2009年9月から2010年8月にかけて平成仮面ライダー第1作目として放送された『仮面ライダーW』。『仮面ライダーW』のその後を描いた人気漫画『風都探偵』がアニメとなり現在TOKYO MX、サンテレビなどで好評放送中だ。
本作より仮面ライダーWに変身する左 翔太郎役を演じる、細谷佳正さんとその相棒、フィリップ役・内山昂輝さんに本作の魅力を語っていただきました。
※本記事はPASH!9月号(8月9日発売)より再掲載したものです
――2009年に放送された特撮番組『仮面ライダーW』(以下、『W』)。その正統続編漫画『風都探偵』のアニメ化に先駆け、おふたりはゲーム『KAMEN RIDER memory Of heroez』で左 翔太郎/フィリップを演じられました。最初に『W』の設定や世界観に触れた際、印象的だったことを教えてください。
細谷 翔太郎とフィリップがふたりでひとりの仮面ライダーに変身するという設定が印象的です。探偵モノではあるけれど、犯人が人間ではないところも個性的なところだと思います。この設定は今っぽいというか、アニメファンに受け入れられやすい設定だと感じました。
内山 仮面ライダーというとひとりで変身するイメージが強かったので、ふたりで同時に変身してひとりの仮面ライダーになるという設定が新鮮で面白いと思いました。特に、僕が演じるフィリップは基本的に変身すると魂がWの身体のなかに取り込まれてしまうので、彼自身の身体はその場にバタっと倒れてしまうんです。
ドラマでも、フィリップは敵の前であろうと変身すれば倒れるし、それを「危ない!」って度々支えてくれるキャラクターもいたりして、それがすごくユニークだなって思いました(笑)。しかも、フィリップと翔太郎は変身後もしっかりとコミュニケーションが取れるんです。そうした設定なども含めて、すごく興味深い世界観でした。
――アニメ作品が実写化される際には、俳優さんが声優さんの演技などを参考にして役作りに取り入れるケースもあります。今回は反対に実写からのゲーム&アニメ化となりましたが、本作の役作りはどのように行われましたか?
内山 ゲームのときはオーディションがなく、制作サイドからのオファーで決まりました。その収録の際はスタッフの方から「ドラマのキャラクター性にとらわれず、内山さんのフィリップを演じてください」という風にお願いされたんです。そうした経緯もあり、僕としては『W』の世界観を大事にしながらも、あくまでゲームのなかのフィリップであることを大切にしました。
――ゲームでの出会いを経て、『風都探偵』で再度演じることになった左 翔太郎/フィリップの魅力を教えてください。
細谷 翔太郎はハードボイルドな探偵を自称してはいるけれど、犯人のバックグラウンドに同情できる余地があったりすると、捜査に私情を挟んでしまうところがあります。「ハードボイルド=冷酷で非情。合理的で感情に流されない」というスタイルからは外れています。それもあって、翔太郎は周囲から中途半端という意味で「ハーフボイルド」と呼ばれているんですけど、僕はそんな彼の人間らしさに好感が持てます。
たとえ犯罪者が相手でも、その人間が抱えるなにかを理解しようとする行動をとることができるキャラクターです。そして風都という「街」に対しても愛情を持っています。「ハードボイルド」を自称しているので、それに比べたら中途半端さが目立つけれど、愛情があるからこその行動だと感じるので、そこが好きです。
内山 フィリップはとても賢い人物で、性格的にはクールなんですけど、生まれ育った環境が特殊だったこともあり、人間の世界というものにとても興味を持っています。なので知らないことがあると、全力を尽くしてそれを調べようとするんです。何かについて興味を持つと、それに向かって猪突猛進で進んでいって、周りが完全に見えなくなるくらいの熱さを見せる。そういうギャップが魅力的なのではないかと感じています。
――フィリップは『W』の物語のなかで生家・園咲家との離別が描かれ、鳴海探偵事務所の所長・鳴海亜樹子と翔太郎がそれに代わる存在となりました。『風都探偵』ではすでに絆が構築された状態で物語がスタートしますが、翔太郎との関係性で特に意識されたことはありますか? 家族感・兄弟感といった感情なども乗せられたのでしょうか?
内山 ピンポイントで家族ということは、あまり意識しなかったです。それよりは、やっぱり仕事仲間の相棒や友情に近い感覚が強かったように思います。翔太郎は一番身近にいる存在ですし、フィリップの持つ「人間の世界に関する興味」というのは、もちろん翔太郎に対しても向けられているはずなので。そういう意味では、ふたりはすでに一定の絆を築いていると言えるし、翔太郎はフィリップにとって常に気になり続けている存在なのだと思いますね。
――細谷さんは、現在のふたりの絆やバディ感をどのように捉えていますか?
細谷 翔太郎は、実際に現場に行って証言や証拠を収集していく、いわゆる「足で捜査するタイプ」で、フィリップは、集められた証言や証拠を使って仮説を組み立てていく「頭脳で捜査するタイプ」だと思います。足りないものを結果的に補い合っているので、『W』を象徴するような関係というか、大局的なふたつの個性が揃ってひとつの形を成しているなと思います。
――では、ふたりでひとりの仮面ライダーとして、声を合わせられたときのお気持ちをお聞かせください。
内山 「変身!」の掛け声や必殺技の名前などは細谷さんとユニゾンで言う箇所が多かったのですが、最初は声を合わせるのが結構難しかったですね。あと、フィリップは事件の概要や推理について話す長めのセリフが多くて、それが普段あまり日常生活では口にしない内容だったことなど、『風都探偵』の収録では大変だったところがいくつかありました。
――『仮面ライダー』を観て育った世代にとっては、「変身!」はある種憧れのセリフではないかと思います。
細谷 そうですね。仮面ライダーの「変身」というセリフをアニメで言えるのは限られるので、『W』のセリフを内山さんと一緒に言ったシーンは印象深いし、嬉しかったです。
――特撮、漫画、アニメと進化を続けている『W』シリーズ。今回、アニメ『風都探偵』だからこそ生まれた新しい魅力を挙げるとするならば?
細谷 『風都探偵』は、仮面ライダー50年の歴史のなかで初のシリーズアニメ化作品ということで、そのこと自体がこの作品の大きな魅力で、個性だと思います。
内山 あとアニメという表現手段になることで、実写では実現しづらかったようなアングルや描写なども沢山映像のなかに含まれることになるはずです。実写や漫画とはまた違う、そうしたアニメーションならではの魅力というのも楽しんでいただきたいですね。
細谷 椛島洋介監督は仮面ライダーが本当に好きなので、そんな監督が手がける『風都探偵』は、大きなリスペクトが込められていると思います。
――新しい魅力がある一方で、立木文彦さんが実写から引き続きナレーションを担当されたり、鳴海荘吉(仮面ライダースカル)役&大道克己(仮面ライダーエターナル)役を演じていた吉川晃司さんと松岡 充さんが主題歌を担当されるなど、『W』シリーズが育んできた要素がアニメに反映されているのも、ファンにとっては大きな喜びだったと思います。
内山 そういう核になる部分であったり、『W』らしさみたいなものはスタッフの方々が絶対に意識して制作されているはずですし、そこには『W』という作品の歴史や、ファンへの愛が込められていると思います。実は、セリフ練習用のDVD映像にも立木さんの声や必殺技のSE(効果音)がつけられていたんです。そういうところからも『風都探偵』や『W』の世界観を感じられて嬉しかったし、演じやすくなってありがたかったです。
――細谷さんも、制作チームの作品愛を肌で感じた場面はありましたか?
細谷 初回のアフレコ現場には、制作スタッフがたくさんいることが多いんですね。普通は、話数が進むにつれてそうした関係者の人数は減っていくんですけど、『風都探偵』ではそうじゃなかったので驚きました。実写に関わっていた方も、アニメをメインに担当している方も、みんなでこの作品を観察して、意見を出し合いながら作品をよくしていこうとする雰囲気が収録現場にはあった気がします。
――さて、『風都探偵』では事件の謎に関わるキーパーソンとして、新キャラクター・ときめが登場しました。この謎多き美少女には、どんな印象を持たれましたか?
細谷 ときめはミステリアスで物語の序盤で翔太郎を翻弄するキャラクターです。翔太郎は、彼女の弱い部分を感じ取って、 「なんとかしてやらないと」と思っているんだと感じました。彼女が持つはかなさや影のようなものに惹かれているんでしょうね。
――しかも、そうした部分をフィリップに見抜かれているところが翔太郎らしいですよね(笑)。
細谷 翔太郎とフィリップは長く一緒にいるからこそ、お互いのことがわかるんでしょうね。
――次々に巻き起こる事件、怪しい美少女…そして、風都という街の裏側で暗躍する大きな影。毎週、ドキドキとハラハラが止まらなさそうですね!
内山 『風都探偵』は『W』の続編に当たる物語ではありますが、『W』を観たことがない方にも最初から思い切り楽しんでいただける作品になっていると思います。
また、もしも『風都探偵』を観てハマったら、原作の漫画を読んでみようとか、ドラマを観てみようとか、ゲームをやってみようとか……シリーズ開始以来のコンテンツが豊富に揃っていますので(笑)、是非お好きなジャンルで楽しみを広げていただきたいです。放送が始まったばかりのアニメ『風都探偵』を、どうぞよろしくお願いします!
細谷 今後のストーリーでは、実写版『仮面ライダーW』のファンの方々のテンションが上がるような演出があるので、ぜひ楽しみにしていてください。
HP:https://www.kamen-rider-official.com/fuuto/
Twitter:@anime_Fuuto
STAFF:監督=椛島洋介、副監督=種村綾隆、シリーズ構成=樋口達人、脚本監修=三条 陸、キャラクターデザイン・総作画監督=蛯名秀和、総作画監督=小松原 聖、仮面ライダー・ドーパントアニメーター=椛島洋介、山根理宏、メインアニメーター=式地幸喜、冨永一仁、横屋健太、メカ・プロップデザイン=大河広行、美術設定=青木智由紀、森岡賢一、美術監督=渡辺幸浩、色彩設計=横山さよ子、撮影監督=志村 豪、竹沢裕一、2Dグラフィックス=影山慈郎、3DCG制作=iPSアニメーションスタジオ、3DCGアクション=unknownCASE、CGディレクター= 加島裕幸、CGアニメーションディレクター=崎山敦嗣、3Dモデリング=ジェットスタジオ、3Dモデル監修=石井 貢、編集=髙橋 歩、音響監督=明田川 仁、音響制作=マジックカプセル、音楽=中川幸太郎、鳴瀬シュウヘイ、音楽プロデューサー=飯田真由(avex entertainment)、エグゼクティブプロデューサー=塚田英明、プロデューサー=内藤 恵、古谷大輔、アニメーションプロデューサー=増尾将史、スーパーバイザー=小野寺 章、アニメーション制作=スタジオKAI、製作=「風都探偵」製作委員会
CAST:左 翔太郎=細谷佳正、フィリップ=内山昂輝、ときめ=関根明良、鳴海亜樹子=小松未可子、照井 竜=古川 慎、万灯雪侍=小野大輔 ほか
©2022「風都探偵」製作委員会
The post TVアニメ『風都探偵』細谷佳正、内山昂輝インタビュー「50年の歴史のなかで初のシリーズアニメ作品ということが大きな魅力で個性」 first appeared on PASH! PLUS.
Source: PASH! PLUS