ぼる塾田辺さん&山口勝平さんSP対談!『名探偵コナン』『らんま』『魔女の宅急便』の貴重なお話も【第2回目】

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 「ぼる塾」の田辺智加さんが“推し活”について掘り下げる連載の第2回となる今回は、『名探偵コナン』で工藤新一/怪盗キッド役などを演じる山口勝平さんがゲスト登場。怪盗キッド&『名探偵コナン』への愛にあふれる田辺さんからの質問に、山口さんが答えます!
(PASH!2023年3月号掲載に掲載されたものを再掲載しています。)

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※題字:田辺さん

『コナン』をきっかけに広がった世界と交流の輪

田辺 私は以前(TV番組の)『今夜くらべてみました』で、山口さんからコメントをいただいたことがありまして。その節はありがとうございました。名前を呼んでいただけて、本当に生きていてよかったと思いました。

山口 田辺さんが新一の好きなレモンパイを作ってくださったときですよね。あれはすごかったなぁ。今日もよろしくお願いします。

田辺 こちらこそよろしくお願いします。私、『名探偵コナン』(以下、『コナン』)の怪盗キッド様が大好きなんです。2019年に友人から「いい男がいる」と映画館に連れて行かれ、今さらながら『コナン』にハマりまして。それ以来、マンガを集めたりアニメを遡ったりすることを始めました。

山口 『コナン』のアニメって1000話以上ありますよね!? めちゃくちゃ忙しいのに観ていただいてありがとうございます。

田辺 毎朝配信を観ているので、もはや『コナン』を観ないと一日が始まらないと思うくらい大きな存在になっていますね。当初、友人からは安室(透)さんを紹介されたのですが、(劇場版第23作の)『名探偵コナン 紺青の拳』を観たときにキッド様に心を奪われて。それから世界が大きく変わったんです。もともとシンガポールのマリーナベイ・サンズに行きたいとは思っていたもののなんとなく踏ん切りがつかなかったのですが、『紺青の拳』を観たときに「同じ景色を見たい」と強く思って、バイトを頑張り、実際に行くことができました。それをきっかけにシンガポールのことも好きになって、実はまた行こうと思っているんです。キッド様が私に新しい世界を見せてくれたと思っています。

山口 すごいですね。ちなみに、キッドのどんなところが好きなんですか?

田辺 それはもう、すべての乙女を手のひらで転がすようなところといいますか…存在自体が〝夢〟ですよね。たまに聞かれるんです、「怪盗キッド様と付き合ったら、デートでどこに行きたい?」って。でも、そのたびに「馬鹿なことを言うんじゃないよ!」って私は思っています。

山口 デートしたいという気持ちはないんですか? 空中を一緒に歩きたいとか。

田辺 だって(キッドの正体である黒羽)快斗くんの横にはもう(中森)青子ちゃんがいますから。私はキッド様のファンなんですよ。「キッド!、キッド!」って叫んでいる群衆がいるじゃないですか。あのなかのひとりなんです。『コナン』を好きになってからお友達もすごく増えました。初めてお会いした芸人の方と『コナン』が好きということで仲良くなって、事件の舞台になった宿に泊まりに行こうという話になったり、業種が違うモデルの方とも「一緒に映画を観に行きましょう」と連絡先を交換できたり。もともと私はすごく人見知りなので、『コナン』の存在がなかったらこんなに交流が広がっていなかったと思います。

山口 そういう役にも立っているんですね。『コナン』すごいなぁ…。僕ら声優とお笑い芸人さんやタレント、役者の方って同じ芸能の仕事でありながらも普段はなかなか交わることがないですが、そうやって話題にしてくれているとうれしくなります。

田辺 友人に映画館へ連れて行かれたときは「最近の『コナン』の人間関係はまったく知らないけど、大丈夫かな…」と不安だったんですが、一歩踏み出してよかったと思います。

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怪盗キッド
▶︎変装の達人で、世界中を騒がせている神出鬼没の怪盗。毎回予告状を送りつけては、警察を完全に手玉にとり、鮮やかな手並みで盗みを成功させる。世間の人々から“怪盗キッド”と呼ばれている。

新一とキッドのふた役をどう演じ分けている?

田辺 山口さんは怪盗キッドと工藤新一を演じられていますが、見た目は似ていますけど中身や性格は違うふたりを演じ分けるうえで意識されていることはありますか?

山口 初めのうちはかなり難しかったです。工藤新一という役をいただいたときは、新一みたいなクールでキザなタイプのキャラクターはあまり演ったことがなかったんですよ。だからかなり照れながら、自分のなかにあるキザさを最大限に出して演じていたんです。そうしたら、キッドというさらにクールでキザなキャラクターが出てきて、「新一とキッドのふた役やってくれ」と言われて。新一だけでもあたふたしているのに、もうどうしようかと思っていました。とはいえ、最初のうちはキッドと新一は別々に出ていたからまだよかったんですよね。「できれば一緒には出てほしくないな…」と思っていたのですが、そうこうしているうちにキッドと新一が一緒に出る話がついにきてしまって(第219話『集められた名探偵!工藤新一VS怪盗キッド』)。不安に思いながら収録に臨んだのですが、意外とその話をやってからキッドと新一を演じ分けられるようになりました。もちろん声自体はそんなに大きく変えているわけではないのですが、気持ちのさじ加減が定まったといいますか。

田辺 その繊細な違いは私たち観ている側にも伝わっています。同じだけど同じじゃないという、その演じ方が素晴らしいなって。

山口 ありがとうございます。キッドを演じてみて、新一って自分が最初に思っていたほどクールではなくて、むしろけっこう熱血だと気付いたんです。なので、気持ちのイメージとしては、新一を演じるときは「犯人はあなただ!」というように、ただ一点を見つめてそこに向かってしゃべる感じ、一方でキッドは「また会おう、名探偵」みたいに、高いところから全体を見下ろしながら余裕を持ってしゃべっているというイメージで演じ分けるようになりました。

田辺 こ…これは音声で読者の皆さんに伝えられないのが残念すぎます!

山口 ただ、キッドはどのセリフもキザなので、キッドのほうが演っていて照れちゃいますね。そこも最初は苦労した部分でした。(劇場版第3作の)『世紀末の魔術師』でも、歩美ちゃんの家のベランダで「飛び続けるのに疲れて、羽を休めていたただの魔法使いですよ…」って言っていましたけど、冷静に考えると「そんなことを小学1年生に言うヤツはいないだろう!」って思ったり(笑)。でも、キッドの正体である快斗くんは、自分が話題になっていれば喜ぶし、ちょっとHなことも考える、本当に普通の高校生なんですよね。そう考えたときに「彼はマジシャンだから、キッドのときの口調はショー中のサービストークみたいなものなんだ」と思うことができました。それ以降、キッドのセリフも照れずに、むしろ「もっとやってやる!」という気持ちでできるようになったんです。自分のなかでバラバラだった点が、新一・キッド・快斗くんとしてうまいバランスで繋がってからはあまり悩まなくなりましたね。

田辺 なんて貴重なお話を…。

山口 あと、新一くんの場合は出番があまり多くないから、皆さんのなかでどんどん〝かっこいい〟っていうハードルが上がっていって、それも一時は大変でした。普段は「かっこよく演じる」というのはあまり意識しないんですけれど、新一だけは〝かっこいい〟という前提がついてくるキャラクターになってしまったので、一時はかなりドキドキしながら演じていましたね。

田辺 私はまだ『名探偵コナン』歴は浅いのですけれども、映画冒頭の新一の語りを聴くと「今年もありがとう」って気持ちになって泣いてしまうこともあるんです。今のお話を意識してもう一度映画を観直したくなりました!

山口さんの人生を変えた場所

田辺 山口さんは休みの日はどんなことをして過ごされていますか?

山口 僕は意外とお休みの日の時間のつぶし方が下手なんですよね。休みの日と言っても仕事の準備をしていることも多いですし、何もなかったとしても「何をしよう」と思っている間に一日が終わってしまうパターンが多いかもしれません。でも、やっぱり趣味に使うことが多いかな。どちらも下手の横好きですけれども、絵を描いたり、ギターを弾いたり。本当はほかにやらなきゃいけないことがあるのに、そういうときに限って現実逃避のように絵を描くのに没頭したりしちゃいます(笑)。

田辺 その気持ち、わかります(笑)。私にとってはシンガポールが人生を変えた場所になったのですけれど、山口さんにはそういう場所はありますか?

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▲シンガポールのホーカーで推し活を楽しむ田辺さん。幸せそうな笑顔です!

山口 いろいろありますが、一番は滋賀県の長浜でしょうか。僕は戦国武将の豊臣秀吉が好きなのですが、長浜は秀吉が初めて城持ち大名になった場所なんです。それだけの理由で「行ってみたい!」とずっと言っていたら、「ひでよしくん」という長浜のご当地キャラとお友達になることができて。その後ひでよしくんの声を演れることになり、さらに「長浜市声の観光大使」をやらせていただけることになったんです。願いは口に出すと本当に叶うんだなと思いました。

田辺 すごいですね。私も歴史が好きなので、今度行ってみたいと思いました。山口さんは仕事で落ち込むことはありますか?

山口 あまりないかもしれません。自分の下手さを反省することはよくありますけど、反省はしても後悔はしないようにしています。自分の持っているマイナス要因って人に伝わるじゃないですか。だから、もし落ち込むことがあってもできるだけ楽しいことを考えたり、何か次に向かうこと考えたりして気持ちを切り替えていますね。

田辺 すごいです。私は一度「やばい、間違えた」と思うと、それが脳内に残ってずっと顔に出てしまって…。

山口 でも、田辺さんのそういうところをTVで観ているのも僕は楽しくて好きですよ。

田辺 あら!

山口 僕は田辺さんに対して「何か嫌なことがあってもいいほうに受け取る方」という印象があって。そういうことも笑いに昇華させていかなきゃいけない仕事柄なのかもしれませんけど、観ていて明るい気持ちになれるので好きなんですよ。実は以前から山口家全員で田辺さんを推していまして、今日も「田辺さんと対談してくる」と自慢したら、娘と息子から「いいな~!」って言われました(笑)。

田辺 うれしい…これからの人生の活力にします…(涙)。実は私、山口さんの声での初恋は『ご近所物語』の(山口)ツトムなんです。当時小学6年生ぐらいだったのですけれど、ずっと「ツトム~!」って思って観ていました。

山口 ツトム、明るくていいですよね。彼も新一と同じで、「オーディションに受かったはいいけど、本当に僕に合うのかな?」と心配なキャラクターでした。演っている当時は夢中だったんですが、放送から15~16年ぐらい経ったころに、深夜のラジオで若い子が「今、自分はデザイナーを目指しているけど、それは小さい頃に観た、デザインの学校に通う仲間たちを描いた物語がきっかけで…」という話をしていたんです。

田辺 それは絶対『ご近所物語』ですね!

山口 そうなんです。自分が演っていた作品を観てその職業を目指してくれる子がいるんだって、胸にグッときましたね。『コナン』を観て警察官を目指しているという方にもお会いしたことがあるのですが、やっぱりそう言っていただけるのはうれしいです。

記憶に残る名作やキャラクターの数々

田辺 漫画やアニメの力ってすごいですよね。山口さんはこれまでたくさんのキャラクターを演じられてきて、もちろんどのキャラクターも愛しているとは思うんですけれども、なかでも特別な位置付けの存在っているんでしょうか?

山口 『らんま1/2』の早乙女乱馬は初めて主演したキャラクターなので、ちょっと特別なところにいますね。オーディションで初めて受かったのが『魔女の宅急便』のトンボなんですが、通常オーディションからひと月ぐらいで収録が始まるところを『魔女の宅急便』は結果が決まってから収録まで半年くらい時間があったんですよ。それで、収録が始まる前にアニメの経験がほぼなかった僕に少しでも経験を積ませるために録音監督さんがいくつかオーディションを回してくださって。そのなかにあったのが乱馬なんです。本当に経験がなかったので、初期の乱馬を観ると自分でもむずがゆくなるんですけど(笑)。当時は(早乙女らんま役の)林原めぐみさんになんとか追い付かなきゃって一生懸命でした。

田辺 林原さんは『コナン』でも灰原(哀)役をやられていますから、その当時から今もご一緒されていると思うとすごいですね。

山口 そうなんですよ。高山みなみさん(『魔女の宅急便』キキ/ウルスラ役、『らんま1/2』天道なびき役、『名探偵コナン』江戸川コナン役)も、林原さんも、日髙のり子さん(『らんま1/2』天道あかね役、『名探偵コナン』世良真純役)も、みんな『らんま』から『コナン』で一緒なんですよね。それから、僕は小さいころから野沢雅子さんが大好きだったので、『ドロロンえん魔くん』がリメイクされたときに、かつてマコさん(野沢さん)が演っていたえん魔くんになれたときは感慨深いものがありました。だからえん魔くんもほかとはちょっと違うところにいるキャラクターですね。そしてもちろん『コナン』の新一やキッド、『ONE PIECE』のウソップも僕の代表作といわれるキャラクターですが、彼らがいてくれるから「山口勝平」という人間も知ってもらえるのですごく大事な存在です。

田辺 『ONE PIECE』はルフィとウソップがケンカするエピソードが大好きです。『週刊少年ジャンプ』本誌で読んだときもすごくよかったんですけど、アニメで声がついたことでより感動しました。これまで数々の作品で「ごめん」と言うシーンがあったと思いますけど、あの「ご゛めーん!!!!」が「ごめん」史上で一番泣けます。

山口 ウォーターセブン編の、ゴーイングメリー号をめぐってぶつかった話ですね。僕もあのエピソードは『ONE PIECE』のなかで一番好きなんです。原作のサブタイトルが「3人目と7人目」なのもグッときました。あそこでウソップは本当の意味で仲間になったんだ、って。それにしても本当にいろんな作品を観てくださっているんですね。本当にありがとうございます。

田辺 こちらこそ、素敵な作品をいつもありがとうございます。今日の記憶を胸に焼き付けて、また近いうちにお会いできるよう仕事を頑張りたいと思いました! これからも一生大好きです。

山口 ものすごく愛をいただきました! 僕もこれからも仕事を頑張ります。そして、田辺さんのことも引き続き家族全員で応援していきます。

田辺智加

たなべ・ちか 吉本興業東京本社所属。4人組お笑いグループ。「ぼる塾」のボケ担当。「まぁねー」という持ちネタで人気を集めるほか、アニメやスイーツなどの趣味を活かした活動も積極的に行っている。

山口勝平

やまぐち・かっぺい 悟空所属。1988年、『どんどんドメルとロン』船員A役で声優デビュー。『らんま1/2』早乙女乱馬役で初主演を果たし、以降さまざまな作品に出演。最近の主な出演作:『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』オウガ役、『ONE PIECE』ウソップ役 ほか

(PASH!2023年3月号掲載に掲載されたものを再掲載しています。)

©2019青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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