PASH!8月号では、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』より荼毘役・下野 紘さんのインタビューを掲載しています。
本記事では、その一部を特別に公開!
――第7期に突入しての率直な心境を教えてください。
第2期での初登場のときは、荼毘という人物がどんなキャラクターなのか、よく分かりませんでした。加えて今までは、原作コミックで登場シーンがどんどん増えてキャラクター性が分かってきても、アニメではまだそのあたりが出せないというもどかしさを感じていたんです。ですが、そうした部分を第6期第124話『ダビダンス』でやっと見せることができ、それを経ての第7期ということで、僕自身楽しみでもあり、心配でもありました。とにかく最終決戦ということで、ありとあらゆるものをぶつけなければ戦えないので、自分の喉が心配ですね(笑)。
――では、下野さんが感じる荼毘の魅力を教えてください。
魅力はある意味で、家族想いなところかな。彼はもともとお父さんに喜んでもらいたい、自分を見てほしい、という想いだけで、さまざまな努力をし続けてきました。それがどんな形であっても、です。そのためだけに今まで身分を隠したり、家族を殺そうとしたりしています。そういうひたむきさがあるからこそ、今これだけの言動をしている荼毘に対して、同情したり、理解を示したりして、荼毘を好きになってくれる人がたくさんいるのだと思っています。ただ、彼がどれだけ熱い想いを持って生きてきたとしても、彼の家族はそれを受け入れられない、受け止めきれない…。そうした部分を見てしまっているから、僕は荼毘に同調してしまうところがあります。荼毘を演じているからこそ、彼が言っていることは正しいと思ってしまうんです。
――第7期での荼毘は以前より表情豊かになっていると感じます。下野さんが演じるうえで、何か注力したことはありますか?
荼毘はエンデヴァーがNo.1ヒーローになり、家族に向き合うようになった瞬間が、自分のすべてを明かすのにちょうどいいタイミングだと考えたからこそ、それまでは自分のことをまったく語っていませんでした。だから僕自身も『ダビダンス』でいろんなものを一気に解放できたと思っていますし、それ以降の話を演じるうえで、きっと荼毘はこう考えているんだろうなとか、こういう気持ちなんだろうなというのが、すごく掴みやすくなりました。最初の頃は気持ちを抑えていたので人間味がないなと感じていましたが、今は荼毘自身が“生きている”と強く実感できているので、自然と気持ちが溢れてきて、感情も豊かになっているんじゃないかなと思います。なので僕としても、何かを特別に意識したというよりは、自然と今のお芝居になりました。
――お話に挙がった第6期第124話『ダビダンス』を振り返って、演じられた際のお気持ちもぜひ教えてください。
「やっとやれた!!」です (笑)。荼毘はいろんなものをずっとひた隠しにして暗躍してきましたが、僕自身も「この回までは気持ちを抑えるんだ! 我慢するんだ!」という想いでここまで来ました。きっと荼毘も、こういう気持ちで行動し続けていたんですよね。収録に向けては、原作コミックを寝室で読みながらこうかな? ああかな?とブツブツ言って、事前に何度も練習していました。全力で演じられて、本当に嬉しかったです。むしろ演じたい気持ちがあまりにも強過ぎて、アフレコの際、通しで一度OKが出てから、部分ごとにディレクションをいただき、再度演じるとなったとき、一から全部やろうかな?と思ってしまうほどでした。それぐらい、収録が楽しかったです。ただ完成したアニメを観て、あんなにしっかり踊っているとは思っていなくて。ディレクションで「ここは踊っているふうに演じてほしい」と言われ、「踊っているふう? たしかに『ダビダンス』ってタイトルだけど…」と疑問に思っていたのですが、本当にダンスをしているとは。しかもアフレコが終わってから知ったのですが、僕はこの回を収録する前に、ちょうど映画『JOKER』を観ていたんですよ。妙に運命的なものを感じてしまいますね。
――荼毘も下野さんご自身も、気持ちを溜めに溜めた末、放出した回だったんですね。
だってそれまで誰に聞いても何にも教えてもらえなかったんですもん!(笑) 「彼はどういうキャラなんですか?」と聞いても「まだ明かされてないので分からないんですよね…」と。「轟(焦凍)と何かあるんですか」と聞いても「それもまだちょっと…」といった感じで。あとから聞いたところによると、僕には情報が伏せられていたようです。でも、そうして抑圧された部分があったからこそ、一気に『ダビダンス』へ想いをぶつけられた…と考えれば、スタッフ陣に上手く転がされたなと思いました(笑)。
――第7期第145話『INFLATION』、第146話『二つの赫灼』では、弟である轟 焦凍との全面対決が描かれました。この回を演じたうえでのお気持ちを教えてください。
第7期は最終決戦ということもあり、あまり後先考えず、この回だけに集中しようという想いでした。荼毘は人ならざる姿になりつつあったので、僕自身も何かを守っていたら演じられないだろうと考えていました。
※PASH! 2024年8月号より一部抜粋。
Text=前川菜央(ウララコミュニケーションズ)
© 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会
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Source: PASH! PLUS