VOISING所属の2.5次元歌い手グループ「いれいす」が、自身初となるドーム公演「『The Progress of Dice』-Memory- / -Future-」をベルーナドームにて11月30日(土)・12月1日(日)の2日間で開催しました。
2日間全曲違うセトリで計59曲を披露し、5周年目イヤーを迎えたいれいすの歴史が分かる公演にファンが大熱狂しました。本記事では、ライターであるヒガキユウカ氏によるライブレポートをお届けします。
いれいす One Man Live in ベルーナドーム「The Progress of Dice」 -Memory- / -Future-ライブレポート
古参から新規まで、すべてのファンが楽しめるセットリスト
2024年11月30日と12月1日、2.5次元歌い手グループのいれいすがベルーナドームでワンマンライブ「『The Progress of Dice』-Memory- / -Future-」を開催した。
今年2月、結成からわずか3年で、念願の日本武道館公演を成し遂げたいれいす。「ファンとの約束を守りたい」という思いを原動力に、彼らが次なる目標に掲げたのが東京ドームだ。そんな中、今回自身ら初のドーム公演を、2daysで開催。メンバーにとってもファンにとっても、重要な意味を持つライブになることは明らかだった。
1日目はいれいす結成から武道館ライブ実現までの楽曲を多く盛り込んだセットリストで、「Memory」という副題の通り、まさに思い出をたどるような構成だ。一方の2日目は「Future」と題し、いれいすの第2章とも言える、武道館以降~最近の楽曲が中心。長年のファンはもちろん、いれいすを最近知ったリスナーまで、全員が十分に楽しめる2日間となった。
本稿では2日間の演出の違いにも着目しながら、『The Progress of Dice』の2公演の模様を併せてレポートする。
1日目、開演時刻を迎える頃はすでに日が落ちていて、ペンライトの光がよく映える。オープニング映像を経て、メンバーは白を基調に黒のアクセントを利かせたロングジャケット姿で登場。
いれいすの始まりの曲「恋の約束」が、ライブの開幕を彩る。歌い出しから一気に会場のボルテージを上げると、息ぴったりの振り付けの合間にも、メンバーは手でハートを作ったり投げキッスをしたりと惜しみないサービス。ノンストップでなだれこむのは「ブチアゲ!!!!!!!」だ。底抜けに明るいアップチューンで、-hotoke-は「この最高の日を最高の思い出で埋め尽くしましょう!」と高らかに呼びかけた。続く「推せ推せ!いれいす応援団!」で<腹から声出せ!>とメンバーがリードすると、会場の声もひとつになり、最高のオープニングパートとなった。
2日目は開演時間が1時間早いこともあり、外の明るさが入ってきて、これまで屋内ライブのみだったいれいすとしては新鮮な雰囲気だ。6人がステージに登場し、黒のマントを揺らしながら板付きする様子までよく見える。開演後はまふまふ書き下ろしの武道館ライブリード曲「星降るフェアリーテイル」、いれいすの第2章スタートを彩った「Promise」、初のアニメタイアップ「Brave」と、メモリアルソングが続く。ないこ&If、-hotoke-&初兎、悠佑&りうらがそれぞれ背中を預け合う様子や、<I Promise>で全員が小指を差し出す仕草に、改めて心を強く揺さぶられた。
ここで、最初のMC。1日目の自己紹介では、「Memoryにちなんで、初配信の頃の気持ちを思い出しながら自己紹介を……」というないこの指示を完全に無視。りうらの22歳の誕生日を祝ったり、-hotoke-はベルーナドームの規模に改めて感動したりと、めでたい日に浮き足立っている様子だ。初兎は「この4年間ずっとハイトーンに染めてましたが、黒髪にしてきました!」ないこは「推しは推せるときに推せ。今日はぶちあがっていきましょう!」との挨拶。Ifはマイクなしの肉声をドーム中に響かせ、逆に髪を明るく染めてきた悠佑は、元西武ライオンズのアレックス・カブレラ選手のバッティングフォームを再現したが、いまいち観客に伝わらず…その後改めて自己紹介をし会場を盛り上げた。
わちゃわちゃ感を持ちながら、1日目は「推しが見つかる3分ちょい!」「DEKOBOKO戦争」、2日目は「学級崩壊☆ですとろいやー」「言いたいことがあるんだよーーー!!」といったライブ向けナンバーになだれこみ、メンバーはセンターステージから3方向に延びる各ステージに移動。いれりす(いれいすのファン)の目の前に立ち、コール&レスポンスで愛を交換した。
「一歩ずつ」からそのままつなげる形で、「イノチノウタ」へ。歌い手界隈随一の歌唱力を誇る悠佑はスタンドマイクを握り、鋭い眼光で骨太のボーカルを響かせる。ここだけロックバンドのライブかと思うような熱さで、冬空が熱く染まっていく。2日目は「暴れたりないんじゃないの!」という煽りとともに登場。サビの一部は観客に託して、「DIVE!!」という曲をリスナーと一緒に完成させた。
コンセプト重視の選曲や挑戦的な演出で、楽曲の新たな表情を見せる
歴代の総選挙楽曲を経て、ここからは各季節にちなんだ楽曲を順番に披露するという、ユニークな構成。春曲の「花鳥風月(Day1)」「春は麗し舞え桜吹雪(Day2)」ではメンバーが乗ったトロッコが会場を巡り、夏曲「トキメキ☆loveバケーション(Day1)」「よっ!夏大将!LOVE紫外線(Day2)」ではタオルをぶん回してのパフォーマンス。続いては和風ロック「月白風清(Day1)」、ハロウィン意識で「ジダンダーナイト(Day2)」と、表情の異なる秋を表現。さらに冬の心をそっと温めるスクールラブソング「恋の方程式(Day1)」や東武動物公園とのコラボイルミネーションソング「Luminous(Day2)」で、季節楽曲パートをしめくくった。
ここからも、ファンのツボを押さえた曲順が続く。人気曲「Irregular Battle」ともなれば、イントロの最初の数音でもう歓声が上がる。エキサイティングなラップバトルに散りばめられた、遊び心たっぷりのアドリブも楽しい。休まず畳みかけていくのは結成3ヶ月でリリースした懐かしのジャジーナンバー「Crazy Dice」、過去のツアーリード曲「RAID OF DICE」や「DOG BOY」。こうしてライブで聴いていると、いれいすの曲は大量にあれど、一つひとつにその曲だけの思い出が詰まっていることを実感する。
このパートについて、2日目はいれいすの音楽の世界観を拡張させた、スリリングでアンダーグラウンドな楽曲群が用意された。「Paparazzi」では椅子に座って、サングラス姿の初兎が「親愛なるアンチの皆様。いれいす、ベルーナまで来たぞ!」と不敵な挨拶。続く「百鬼夜行」は、「吉原ラメント」で知られる亜沙が手掛けた曲。 メンバーは花道を練り歩きながら、カメラに順番にファンサービス。このパートはカメラワークも計算され尽くしていて、全員がぎゅっと集合してのサビは迫力も破壊力もバツグンだった。FAKE TYPE.が書き下ろした「Place to be」でさらに狂気度を高めると、「零番街」で蠱惑的なステージングを展開した。
りうらの誕生日に加え、Ifの誕生日が近いことも言及された本公演は、記念写真も特別なものに。2日目はりうら・Ifをセンターに撮影後、2人がひそひそ話をしているかと思えば、突然のW投げキッス。大きな歓声が上がったことは言うまでもない。
ステージ上の階段にスタンドマイクが登場し、それぞれ位置につくと「Repeat」へ。これまで激しいパフォーマンスをしていた6人が、ダンスをせずただ歌うことだけに注力したときのエネルギーもまた、圧巻のものがある。「メモリークラウン」では、作詞を担当した悠佑が「俺たちがお前らの居場所を、ずっと一生守ってやるから。俺らがライブしてる限り、これが俺らとお前らの居場所だから。それだけは忘れずにいてくれ」と語りかけた。
この部分に、2日目は「世界はそれでも進んでいく」「メテオライト」といった曲が並んだのも、非常にポジティブで頼もしい構成だ。先の読めない時代、何が起こるかわからない毎日だけれど、いれりすにとってはいれいすの存在そのものが羅針盤となってくれるだろう。
爆笑&胸キュンの企画映像から、個々の強みを最大限に発揮するソロパートへ
いれいすのライブといえば、幕間に流れる実写企画映像も人気コンテンツだ。1日目は「即興口説きバトル」。シチュエーションの決まったコント風の即興劇で、VOISINGの社長・ないこは、普段会社員でもあるIfを「一緒に働かないか?」と口説く。一方のIfは「タスクじゃなくて、僕に振り回されてみませんか?」と反撃し、見事勝利した。他にもリビングを舞台に夫役・悠佑VS嫁役・りうら。バーを舞台に女役・-hotoke-VS男役(+マスター役)の初兎など、爆笑必至の対戦カードだった。
2日目は、実写ドラマ「鍋の約束」。メンバーの中に潜むウルフを暴くというゲーム性を盛り込みつつ、意中の食材、もとい意中の相手を探すストーリーだ。何やら恋愛リアリティショーのような雰囲気の中、メンバーは早速駆け引きをスタート。ないこと初兎がりうらを取り合ったり、やや重めでワガママな-hotoke-をIfが強引に口説いたりして、鍋の話をしているはずなのになぜか上がる黄色い歓声。こちらも見どころの絶えないムービーとなった。
ソロパートでは衣装を着替え、ダイスナンバー順に各メンバーが登場し、自身の曲とともに個性たっぷりなパフォーマンスを届けた。トップバッターを務めるのは、メンバー最年少のりうら。「全然足んねえから、限界の先を俺にぶち込んでこいや!」と叫んで「Just keep the faith」を歌唱。ダンスパートでは照明の明滅によりシルエットのように見え、こうした演出もりうらの堂々たるパフォーマンスを際立たせていた。2日目のバラード曲 「一等星」のイントロでは、些細な息遣いまでマイクが拾う緊張感の中、ピアノの旋律にのってりうらの歌が情感たっぷりに響き渡る。
-hotoke-ソロの「you&U&me」は曲調こそポップだが、等身大の歌詞に胸を焦がれ、寄り添いたくなるような曲。感情がのった声が、原曲よりもドラマチックさを際立たせていた。2日目の「超次元(ハート)理論→→→」では、歌いながら複雑な振り付けを難なくこなし、間奏では客席にウェーブを要求。自身の表現したいことを全て出し切り、満足した表情だった。
低音強めのバンドサウンドは、ラップ担当の初兎にぴったりだ。「BlanchE NeigE」の<挿し殺して>の流し目や、しなやかに舞う女性的なダンスはあまりにも艶美で、年齢制限がつきそうなほどセクシーだった。2日目もダークな世界観は健在で、「Xos」でドームを支配。がなりまじりのラップやハスキーな笑い声があまりにも刺激的で、その圧倒的な求心力は神そのものだった。
メインステージ上のステップから登場したのは、リーダー・ないこ。ジャジーな「Masquerade Dance」によくマッチする好戦的な表情で、時折顔を隠したり、自身の服の裾を翻したりと、細やかな仕草でも楽曲の世界観を表現した。2日目のキャッチ ーなフィンガーダンスが特徴の「メンヘラホイホイ」ではリスナーにもダンスを要求し、「上出来です!」のご褒美をプレゼント。
Ifが姿を見せる頃には、もうドームが青一色に染まっている。真摯なメッセージを込めた「一歩ずつ」では、「疲れたときは休んだらいいから。またゆっくり歩き出していこう」という口上も相まって、優しく背中を押してもらったような気持ちになった。2日目は「Sky Blue」。花道を全速力で走り抜けるIfの姿と、曲終わりの叫ぶようなロングトーンが心に焼き付いた。
センチメンタルな空気もまといながら、「Irregular Quest」「僕らが描いた夢のその先に」がそれぞれ本編の締めくくりを彩る。6名は一切疲れを見せず、ぴったりそろった振り付けとジャンプで、最後まで会場を盛り上げた。
メンバー間の信頼とリスナーへの愛を実感したアンコール
アンコールではメンバーが白パーカーに着替え、本編よりも少しリラックスした空気のパフォーマンス。サプライズでケーキが登場しみんなでりうらの誕生日を祝ったほか、曲中も手をつないで回ったり、肩を組みながら花道を歩いたりと、思い思いにこの瞬間を楽しんでいた。「ずっと一緒にいような」という初兎のセリフや、「Irregular Story」「君のために生まれてきた」の曲調も相まって、クライマックスへの熱量が高まっていく。
2日目、最終日のアンコールパートはひときわエモーショナルだ。「ACROSS DIMENSIONS」も、両手を広げて歓声を浴びるIf、初兎&悠佑のWピース、ないこの眩しすぎる笑顔、顔に人差し指をあてておどけるりうら、-hotoke-のほっぺハートポーズなど、名シーンを挙げるときりがない。その後もそれぞれ肩を組んだり背中を預け合ったりと、メンバー間の信頼関係が伝わってくる振る舞いや、感情があふれるような歌に、思わず涙したリスナーもいたことだろう。
ラストで語られたないこのMCも、いれいすらしい誠意あふれるものだった。「みなさん見渡してみてください。ペンライトの海がめちゃくちゃ綺麗。今日は満席ではなく、正直悔しい気持ちもあります。僕たちの目標である東京ドーム公演は、やるだけじゃなく満席で実現したいと思っています。今の僕たちにとってベルーナドームは少し力足らずだったかもしれません。でも次は、またドーム規模の公演を満席で、大成功をおさめたいと思います。今日のこの景色、この悔しさ、味わったこと、僕たちは絶対に忘れません。今日の最後に僕たちが伝えたいのは、こんな綺麗な景色を見せてくれてありがとうの、感謝の気持ちです」
そうして始まった「愛をありがとう」の歌唱は、それまでに増して、パワフルなものだった。アウトロでは口々に「ありがとう」を告げ、いれいすは退場した。夢のような2日間も、これでついに終わり……かと思いきや、ステージ上では、公演を振り返る映像が流れ始めた。今回は、両日参加したいれりすも多い。いれいすが届けてくれたあまりにも輝かしい思い出の一つひとつをかみしめ、嬉しさ、寂しさ、誇らしさ、切なさ、いろんな気持ちがあふれていたことだろう。
ムービーが終わると、再度いれいすが登場し、新曲「追憶のダイヤモンド」のお披露目サプライズ。初心に戻って出会いの奇跡を喜び、また新しい日々に向かっていく、そんなメッセージを感じる曲だ。最後はセンターステージから名残惜しそうに手を振ると、リーダーの音頭で感謝を告げ、全員で丁寧な一礼。拾った銀テープを互いの首にかけ合いながら花道を戻り、名残惜しそうに退場した。
1日目と2日目、全曲違うセトリで計59曲を披露。駆け抜け続けてきたいれいすの4年間を、余すことなく堪能できる2日間だった。夢を託し応援すること。
その夢を背負って前に進み続けること。いれりすといれいすは、そんな「約束」を通じていつもつながっている。イレギュラーで、音楽と笑顔にあふれた旅を、これからも彼らと一緒に続けていきたい。
文:ヒガキユウカ(ライター)
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