平成30年分のTVアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』シリーズ! 最終回となる今回は平成30年(2018年)のアニメを振り返ります。
この年は、“IDOLiSH7”をトップアイドルに!OP映像のクオリティーが高すぎる『アイドリッシュセブン』、ツンデレ彼氏×大らか彼女の日々を描いた『あっくんとカノジョ』、無実の罪で囚われたOLがココロもカラダも翻弄されていく『甘い懲罰〜私は看守専用ペット』、明日人、灰崎、野坂。それぞれがサッカーにかける想いが熱い『イナズマイレブン アレスの天秤』。
美麗な作画が話題になった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、“トウカイテイオー”や“ナリタブライアン”などの競走馬が擬人化した『ウマ娘 プリティーダービー』、18年ぶりの新作制作が話題になった『カードキャプターさくら クリアカード編』、これを見たら年末の箱根駅伝がもっと面白くなる『風が強く吹いている』が放送。
また、およそ20年の時を経てアニメ化された『からくりサーカス』、現代を舞台に描かれる『キャプテン翼』、電光超人グリッドマン25年ぶりの新番組『SSSS.GRIDMAN』、最下級モンスター・ゴブリンのみを狩る青年を描いた『ゴブリンスレイヤー』、殺されたい少女と殺したい青年の脱出劇『殺戮の天使』。
中華料理が美味しそうで見ているとお腹がすく『重神機パンドーラ』、人外さん×男子高校生の新婚生活に癒される『人外さんの嫁』、18年ぶりに復活!XJAPANのYOSHIKIさん登場で話題になった『深夜!天才バカボン』、『SAO』のスピンオフ作品『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』。
さらに、新人俳優と演技派俳優の恋模様にときめいた『抱かれたい男1位に脅されています。』、『月刊少女野崎くん』制作チームが手掛けるオリジナルテレビアニメ『多田くんは恋をしない』、『タイバニ』スタッフによる待望の新作バディ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』、部下からの信用失墜の危機、計算外のアクシデント……中間管理職のリアルを描いた『中間管理録トネガワ』。
弓道に情熱を注ぐ男子高校生たちを描いた『ツルネ -風舞高校弓道部-』、スライムに転生したらどうする?『転生したらスライムだった件』、ベビーたちと男子高校生のほんわかライフを描いた『学園ベビーシッターズ』、戦慄の純愛サイコホラー『ハッピーシュガーライフ』、美少女悪魔“ベルゼブブ”を中心に悪魔たちの日々が描かれた『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』などなど、盛りだくさんの年となりました。
今回は、数ある平成30年に放送されたTVアニメのうち3作をご紹介します!
アッシュと英二。2人の青年による“バナナ・フィッシュ”を巡る物語『BANANA FISH』
『BANANA FISH』は、吉田秋生による同名少女コミックを原作としたクライム・アキション作品。2018年7月~12月に“ノイタミナ”にて放送されました。
本作の舞台はアメリカ・NY。ダウンタウンのストリート・キッズのボスとして君臨する“アッシュ・リンクス”と日本人の大学生“奥村英二”が“バナナ・フィッシュ”を巡る、国家をも巻き込む陰謀に立ち向かっていく物語。『別冊少女コミック』で連載された少女コミックなのですが、マフィア同士の構想を描いたハード・ボイルドな世界観、様々な形で繊細に描かれる愛の形、映画のような劇的なストーリー展開は、性別問わず愛される魅力があります。
本作を語る上で欠かせないのは2人の青年――アッシュと英二の存在です。ストリート・キッズのボスを務めるアッシュは、類まれなる美貌に180を超えるIQを持ち、運動神経も抜群。戦闘に関しても一流で、圧倒的なカリスマ性を持つ完全無欠の存在……と思いきや、そのカリスマ性ゆえに悩み葛藤することや幼少期の孤独と精神的外傷から心に深い傷を負っている1人の青年です。
対する英二は、カメラマンの助手としてストリート・キッズの取材でアッシュと出会った大学生。アッシュより2歳上の設定ですが、童顔&東洋人であることからアッシュよりも若く見られることもあるごく普通の青年。明るく穏やかな性格の持ち主ですが、時に頑固な一面を見せることもあるなど、見かけに反した度胸の持ち主です。
NYのストリート・キッズのアッシュ。日本の大学生の英二。きっと普通に生きていれば出会わなかったであろう2人が出会い、共に行動するなかで、アッシュは無償の愛を知り、英二はこれまで出会うことのなかった衝撃の世界へと身を投じていくことになります。
また、アッシュにとって英二は“最も心を許せる友人”となるのですが、これが原因でアッシュ最大の弱点となり、英二は幾度も命を狙われることになります。ここにたどり着くまでにいろいろとあるのですが、それはアニメを見て感じてほしい……。
青年2人の愛を表現するとどうしてもBL要素が絡まってしまいがちですが、この2人の間に生まれる愛は、兄弟愛であり、友愛であり、アガペーなのだと感じられるほど繊細に描かれています。あまりに美しすぎて「宗教画か?」と思うほど、慈愛に満ちています。
そして、『BANANA FISH』といえば衝撃の最終回。原作の通りの最終回を迎えたのですが、あまりにも美しく、切なくて、年末少し落ち込みました。最終回のタイトルが“ライ麦畑でつかまえて”なのも素晴らしい。
もしも、幼少期のアッシュが英二と出会っていたら、無垢な心でライ麦畑を駆け巡っていたら。そんなことを考えてしまう、良い最終回でした。まだ見たことがないかたはぜひ見てほしい。
「ばいばい菌だ」――“細胞のはたらき”を学べるアニメ『はたらく細胞』
『はたらく細胞』は、清水 茜さんによる同名漫画を原作とする細胞擬人化作品。7月~9月にかけて全13話が放送され、12月には特別編も放送されました。
本作の舞台は、私たち“人の体内”。そのなかでは数十兆もの細胞が年中無休で働いており、その“はたらく細胞”にスポットを当てています。
酸素を運搬し灰へ二酸化炭素を送る“赤血球”やウィルス・細菌の駆除を担う“白血球/好中球”、傷口をふさぐ役割を持つ“血小板”、がん細胞などの異物を殺す“キラーT細胞”、キラーT細胞などへ外敵の情報や対策を行う“ヘルパーT細胞”、細菌などの異物を捕らえて殺す“マクロファージ”など、細胞が持つ能力・個性を擬人化し、分かりやすく解説。「こんな細胞あったんだ」、「この細胞がこんな働きをしているのか」など様々な知識を与えてくれました。2018年(ひょっとすると平成アニメ史のなかでも)1番学べたアニメかもしれません。
細胞たちは愛着が湧くような描かれ方をされており、見ている内に細胞が好きになってしまう不思議な魅力があります。単なる擬人化作品ではなく、どうやって私たちの身体が成り立っているのか、健康でいられるのかを知ることができるので、視聴後は「(細胞のためにも)ちょっと体を労わろうかな」とやたらと体にいいものを食べていました。
そして、インフルエンザや花粉症など、身近な疾患が“外敵”として登場することで、誰もが関心を持てる舞台設定になっています。“細胞の擬人化”というとゆるふわ~な日常作品を思い浮かべるかもしれませんが、本作では細菌やウイルスを殲滅するため、時には細胞たちが血まみれになりながら戦うアクションシーンが登場するのも見どころ。
細胞に関して学べつつ、個性的なキャラクターに癒されつつ、しっかりとアクションでも魅せてくれる。『はたらく細胞』は、大人だけでなく、平成以降に生まれた子供たちにも見せたいアニメかもしれません。
熱い冒険! 意外なグルメ! そして男たちのラッコ鍋……強烈なインパクトで魅せる『ゴールデンカムイ』
『ゴールデンカムイ』は、野田サトルさんによる同名漫画を原作とするTVアニメで、明治時代末期の日露戦争集結直後の北海道を舞台とした、“金塊”をめぐるサバイバルバトル作品。第1期が4月~6月、第2期が10月~12月にかけて放送されました。
元陸軍兵で“不死身の杉元”の異名を持つ杉元佐一は、戦士した親友・寅次の「妻の梅子の眼病を治してやりたい」という願いを叶えるため、北海道にて一攫千金を夢見て砂金収集を行っていました。
ある日、アイヌが秘蔵していた“8万円(現在の価格で8億円)の金塊”を奪った男・のっぺら坊の噂を耳にする。のっぺら坊は、仲間に金塊の在処を伝えるべく、収監された網走監獄の獄中で同房の囚人の体に“金塊の隠し場所”を示す入れ墨を掘り、脱獄させたという。
脱獄したうちの1人に出会った杉元は、金塊探しを決意。狩人として高い技量を持つアイヌの少女・アシリパや“明治の脱獄王”との異名を持つ脱獄囚の白石由竹と行動を共にし、金塊の在処を示す“刺青人皮”の持ち主を探し始めます。
道中、“日本最強の陸軍師団”第七師団のスナイパー・尾形百之助や死亡していると思われていた土方歳三、第七師団の中尉でクーデターを計画する・鶴見ら“金塊”を狙う面々と遭遇、闘うことに。
本作は、“金塊”を巡るサバイバル作品であり、激しいアクション描写が主軸。杉本のぶつかれど倒れない圧倒的な近接戦闘シーン、アシリパの弓の腕前は美しく、尾形の針の穴をも通すスナイプ技術、土方歳三の追随を許さぬ剣術シーンは見事。
『ゴールデンカムイ』は対人戦闘だけではなく、「こんなに登場するか?」ってくらいヒグマとの戦闘シーンも描かれています。私たちにとってのヒグマは非現実的な存在だけれども、本作の舞台・北海道ではある意味で身近な存在なんですね。個人的にはヒグマとの戦闘シーンめっちゃ怖い。
また、『ゴールデンカムイ』では、自然と共生するアイヌ民族の文化や北海道開拓の歴史が学ぶことができる作品でもあります。さらに、美食や一風変わった食事などグルメ描写も数多く、見ているとお腹が空く作品でもあります。
エゾシカのライスカレーやアザラシの肉の塩ゆで、イトウの刺身など「これは絶対に美味しい!」と確信できるメニューから、リスの脳みそやカワウソの汁物(オハウ)など「味が気になる」ジビエ料理も登場。こうしたたたき料理では「チタタプ」と言いながらたたくのがアシリパさんルール。調理シーンはなかなかに衝撃的だけど、きっと食べればヒンナヒンナ!
さらに、『ゴールデンカムイ』はやたらと“男たちの全裸”シーンが登場。なかでも有名なのが“ラッコ鍋回”。催淫効果があるラッコ肉を用いてラッコ鍋を食べることになった杉本たち。ぐつぐつと煮えるラッコ肉の香りを嗅いだ杉元たちは、(男の)開ける胸元を見て「……スケベすぎる!」なんてムラムラと変な気持ちに。
頭がクラクラした尾形が倒れこむと、一斉に脱がせにかかる一同。そこに現れたアシリパと家族ぐるみの付き合いがあったアイヌの漢・キロランケ。杉元を一目すると「おまえ…ちょっと見ない間に急に…いい男になったな?」と褒めると、杉元は少し嬉しそうな様子。
そんな杉元を「かわいい……」と見つめる男たち。そして、感情を抑えられなくなった男たちは服を脱ぎだし……相撲をとることに! 改めて文字にすると「本当にヤバイ」って感じなのですが、第20話で実際にアニメ化されたエピソード。なんかもう……ごっちゃんです!
平成30年の日本はどうだった?
ちなみに平成30年の日本では、歌手の安室奈美恵さんの引退やジャニーズ事務所所属のアイドルユニット“タッキー&翼”の解散など、長きに渡って芸能界を盛り上げてきたトップスターがその活動の幕を下ろした年でした。
また、カーリング女子日本代表“ロコ・ソラーレ”の「そだねー」やドラマ『おっさんずラブ』、NHK番組『チコちゃんに叱られる!』の「ボーっと生きてんじゃねーよ!」、「(大迫)半端ないって」などが流行語にノミネートされました。
そして、今回で『平成アニメ備忘録』は最終回! およそ3ヶ月にわたって平成30年のアニメを振り返ってきました。気になる作品、もう一度観たい作品、まだ観ていない作品はありましたか? 平成が終わるまであと少し。ぜひともチェックしてみてくださいね!
Source: PASH! PLUS