カバーが運営する女性VTuberグループ「ホロライブ」所属の「天音かなた」の初のソロライブ Amane Kanata 1st Solo Live“LOCK ON”が2025年8月13日(水)に「有明アリーナ」での開催。本記事ではライブレポートをお届けします。
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本ライブは、「ホロライブ」所属「天音かなた」1stソロライブ。彼女が目指すアイドル像の発表会とも言える、ファン必見の内容となっていました。
「今、世界で一番幸せなアイドル!」Amane Kanata 1st Solo Live“LOCK ON”レポート
8月13日(水)、ホロライブ所属VTuber天音かなたの1st Solo Live “LOCK ON” が有明アリーナにて開催された。
天音かなたは自他共に認める、かなりコアなドルオタだ。彼女が歌ったり踊ったりしはじめたのは、アイドルが大好きだからだ。その分、こだわりが強すぎて悩むこともあるという。今回のライブはそんな彼女の考える、自分が目指すアイドル像の発表会とも言えるだろう。彼女を知っている人ならきっと、期待どおりのものを満点以上の状態で味わうことができるはずだ。
オープニングムービーの後、デフォルトの衣装で登場した天音かなた。一曲目はパワフルなナンバー「Knock it out!」を引っ提げてきた。デフォルト衣装の天音かなたは、胸元や袖がぶかぶかなのもあってかなりちんまり小柄に見える。歌とパフォーマンスは最初から何にも負けぬ勢いがあり、幼いイメージとのギャップを感じさせるオープニングになった。
一曲目の途中で、早速衣装チェンジ。天からの門が降りてきて、光に包まれる天音かなた。幼さが抜け、キリッと引き締まった、そしてキュートさをたっぷりあしらった衣装へと早変わり。変化を遂げたことで、歌い方も序盤と後半で変わってきているかのように感じられる。
衣装チェンジの際に銃を構えているのは大きなポイント。以後も「LOCK ON」することで、彼女は新たな姿に変貌し、ライブに大きな物語を作っている。
二曲目は「おらくる」。この曲が二曲目に来ているというのが、天音かなたのライブの特異性だろう。リズムはお祭りのお囃子のようで乗りやすく気持ちがいい。しかし歌詞はかなりダーティーで、病み要素強めのネガティブな作品だ。この曲で会場を序盤に大盛りあがりにさせた、というのはかなり異色の構成だ。天音かなたはこの曲を、明るくもあり、暗くもあり、そのどよっとした感覚をフラットにしたまま披露している。特に早口パートの完全再現は必見だろう。
序盤にネガティブめな「天音かなた像」を持ってきていることで、ラストの方で語られる彼女のアイドル像の考え方がより大きな意味を持つようになるので、最後まで見終わってからこの曲と次の曲を見直すと、また天音かなたというアイドルの持つ深みが変わって見えるだろう。
3曲目はさらにはっきりと陰鬱さが形になった楽曲「インキャララバイ」。自身の陰キャな性格を自虐ネタにした、キャラクターソング的作品だ。ナードなノリをポップなスタイルで聞かせるこの楽曲は、会場や配信の共感も非常に高かった様子で、大盛りあがり。ライブ前に公開されて間もない楽曲だったのだが、幾度も入る天音かなたの絶叫と会場のコールがばっちり噛み合っていたあたり、へい民(ファンネーム)の練度の高さと頼もしさが感じられた。
一旦曲が終わり、MCに入ったときの天音かなたの発言が印象的だ。
「ぼくの今までの活動を、ちょっとここにね、気持ちとかも全部みんなと一緒にぶつけていけたらいいなと思っているので、今日一日楽しんでください!」
彼女のVTuber・Vアイドル活動は波乱万丈すぎて、一言ではとても言い表せない。詳しくは後述するが、今回のライブは彼女の歩んできた経験や、どうしてもやりたかったこだわりが表現されたライブであることを、ここで明言している。
そのこだわりのひとつとして発表されたのが、バックバンドの構成。VTuberライブとしては非常に珍しい、女性のみのガールズバンドだ。これも彼女がイメージするアイドル像の表現のひとつなのだろう。ガールズバンドメンバーが全員、天音かなたのつけている腕章と同じ生徒会腕章を着用している、というのも細かいこだわりで、見ていて嬉しくなってしまう。
4曲目は「テレキャスタービーボーイ」。2022年5月にカバーMVを出し、570万回以上再生されている楽曲だ。この曲も「おらくる」同様、リズムはキャッチーだが歌詞はネガティブな構造の作品。これを天音かなたは、会場に立つタレントとして明るく、けれどもアーティストとしては病みも包含して表現している。このネガとポジのバランス感覚こそが、天音かなたという表現者の味だ。
5曲目は「睡キャン界隈」は、王道ポップスの文脈に則って作られている失恋ソング。ファンからもコメント欄で、アイドル好きの天音かなたにぴったり、などの声も寄せられていた作品だ。今回のライブでは、他の曲と比べて、ソロで活動するアイドルのパフォーマンスを彷彿とさせるダンスと歌い方が徹底されていた。
曲のあと、天音かなたはおもむろに銃を取り出し、宙を撃った。すると背景にあった天使の輪と扉は焼け落ち、彼女の姿は堕天使スタイルへと変化してする。これには観客も驚きの声。以後、堕天使であることと自作オリジナル曲のスタイルがリンクしていく。
6曲目は「別世界」。天音かなたが作詞作曲をしたこの曲が堕天使の姿で披露されたことに、ファンはどよめいた。なんせ、推しと自分は別世界の住民で触れることも叶わない、という絶望にも似た思いを含む、悲しみの曲だからだ。
この歌でなぞらえるならば、彼女は「手が届かなかった側」であると同時に、ファンからは「手が届かない側」でもある。それを自身で、この大舞台で再現してしまうのは様々な痛みを伴うであろう表現のはず。でも痛いからこそ、生きているのを体感できるとも言える。あえて高音部分が消え入るような歌い方をする天音かなたの歌声は、心に静かに刺さる。
7曲目「十万億土」も天音かなた作詞作曲の作品だ。「君は今更戻れない」などのように、歌詞のダーティー度は今回のライブで一番かもしれない。悲壮感がじわじわ広がっていくタイプのダウナーなこの作品、彼女の歌い方が高らかで力強いゆえに、とてつもなくかっこよく見える。自身の表現を知り尽くしている彼女だからこそ作ることができた曲なのだろう。それを最高の形で舞台で披露しているのが、彼女の自己プロデュース能力の優れている部分だ。
MCタイムでは「推しカメラ」に対して「寄せとくね!」と最高級のファンサを見せてくれる天音かなた。コールアンドレスポンスでは「かなたん!」に対してすぐ観客も「かなたん!」と返したものの、唐突な「ソーラン!」には会場もさすがに一瞬躊躇。天音かなたはデビュー時にソーラン節を披露していたことが元ネタだ。
微笑ましいネタフリではあったが、彼女が初配信時(2019年12月27日)、パワーポイントで掲げた夢の一つに「ライブに出演してコールアンドレスポンスをやりたい」を上げていたことを考えると、ソロライブの舞台でそれがかなっているという熱い状況でもあった。「ソーラン!」のあとの「どっこいしょ!」には、意図を汲んだ会場からも地面を揺らすような「どっこいしょ!」が戻ってきていた。
エレクトロスウィング調のメロディが魅惑的な8曲目「DA・LI・LA」。イントロのラップパートも華麗にこなし、天音かなたのかっこよさはうなぎのぼり。メロディと歌詞を自分のものにした歌声で、妖艶さとポップスのいいとこどりをしているのも、彼女の実力を感じられる。
ここで堕天使スタイルの背中に大きな白い羽がはえ、天高くに天音かなたが飛び上がった。羽に包まれた彼女は、開くと同時に新しいステージ衣装へと姿を変えた。天使として、バーチャルならではの衣替えをした彼女はここでも銃を握りしめて、会場へと弾丸を放ち、歌う。9曲目「きゅーぴっど。」だ。
テクノポップの軽快な音と「ちゅちゅちゅちゅ」という歌詞でかわいらしさ抜群のこの作品、一気に曲のスタイルがポジティブになっているのが興味深い。ダンス中の笑顔頻度がかなり大きくなっているのも注目したいポイント。歌い方も緊迫感が減り、ふわっとした優しさが増している。
10曲目「セルフサービス」は、天音かなた曲の中でも飛び抜けたBPMの速さと、凄まじい高音を誇る異色作。躁と鬱がいっぺんに来るような構成のこの作品、歌詞自体は比較的ネガティブ。これをライブ中盤クライマックスに持ってきているのが天音かなたの構成力だ。「今出来ることなんて何もないんだ」という絶望の歌詞を、会場での彼女はとても力強く、揺らぐことなく歌っている。まるで絶望を踏み越えてきたかのような頼もしさを感じる。
ここでゲストにAZKiが登場! ふたりで歌うのは「hololive IDOL PROJECT」の楽曲「至上主義アドトラック」だ。会場のペンライトは、天音かなたの水色とAZKiのピンクで華やかに染まる。ふたりとも高音が得意なボーカリストで、天音かなたは凛々しめ、AZKiは柔らかめの声質なのもあって、相性は抜群。サビのハモリ部分は背筋がゾワッとなるほどきれいなシンクロをしてくれている。
天音かなたによると、AZKiは「ソロライブまだ?」と一番言い続けてきた存在だったようだ。「かなたんがこのライブにかける思いとか、これまでの苦労を知っているから、こみ上げるものがあって」と語るAZKiの発言は、おそらくファンの代弁でもあるだろう。
ふたりで歌った2曲目は「三つ葉の結びめ」。2020年9月19日にふたりがカバーMVを公開したものだ。天音かなたはまだ活動一周年になっておらず、AZKiはまだイノナカミュージックにいた時期の話だ。5年間一緒に歩み続けてきたふたりの見る景色がどうなっているのかは、この曲を聞けばよく分かる。技術面と心理面での変化を見るつもりで、カバーMVとアーカイブを聴き比べるのも面白いと思う。MVの方のコメント欄が、ファンの喜びのあまり同窓会のようになっているのも楽しい。
再びソロに戻ってから、マイク代わりにオリジナルスピーカーを取り出した天音かなた。13曲目「Last-resort」だ。「世界を変える撃鉄を」と低音ボイスで歌いながら、上着を脱ぎ捨てる仕草がかっこいい。ステージを右へ左へと歩いて、観客を煽りまくる。「弾丸にこめて」と拳を握りしめるシーン、彼女の握力を考えるとかなり攻撃力が高そう。会場のペンライトが真っ赤に染まる様子も圧巻。ここからは革命を起こす天音かなたの出番だ。
14曲目、「アイドル」のカバーがかかると会場は大きく盛り上がった。というのも実は天音かなたは2024年の「JAPAN EXPO Paris」で「アイドル」のカバーを披露したことがあるから。海外のファンはものすごく盛り上がっていたそうで、それに対し日本のファンが羨ましがっていたという。
そこで、日本人ファンの思いを叶えるべく今回選曲されたそうだ。ファンに寄り添うタイプの天音かなたらしいファンサービスであると同時に、アイドルを直接的にテーマにした作品を歌うことで、自身のアイドル像への向き合い方から逃げない意思表明をしているかのようにも見えた。なぜなら彼女は「アイドル」の曲の中で描かれる「アイドル」を、今までとの曲と異なる振り付けで演じきっていたからだ。
ここで盛り上がった会場に向けてMCで思いを伝え始める天音かなた。気持ちを伝えるスピーチタイムだ。デビュー前に耳の病気になり、片耳が今も聞こえない天音かなた。アイドルが大好きで、歌が大好きで、みんなの前で歌い踊りたいと夢見ていた彼女にとってはあまりにも残酷な仕打ちだ。しかし彼女は、歌を「好きだよ」と言ってくれたファンのおかげで、歌をやめなかった。「諦めないでよかったー!」と彼女は、ステージから高らかに叫ぶ。
「明るく元気でポジティブなアイドルじゃないかもしれないけど、ぼくは本当にみんなのことが、へい民が、ほんとに宝物です。ありがとね」
涙するファンがいるほど、エモな空気であふれる有明アリーナ。そこで唐突に「ちなみに、あと2曲なんですよ」と言ったことで、会場から割れんほどの大声での「えー!」。残念な気持ちゆえの声のはずだが、ツッコミのようにも聞こえるから面白い。
彼女が3分の1作詞している作品「片羽」。翼が片方になっても、心が折れかけるかもしれないけれども、飛べるんじゃないだろうか? という希望を持つ曲だ。今天音かなたは、その羽で羽ばたいて間違いなく飛んでいる。ウィスパーボイスと低音ボイス、そして超高音ボイスを駆使して歌う彼女。まさに彼女がすべてを注ぐことで完成する、彼女のための歌だろう。
最後の曲は「わたしのせいだ」。タイトルの通り、明るい歌ではない。しかしこの歌はすべてをひっくり返して光にできる曲でもある。「遅すぎた希望も絶望もわたしのせいだ」と悲観しつつも「何もかもを諦めた一秒を 命が「はじまり」と呼んだよ」としめることで、歌の全体の意味がネガティブではなくなっている。彼女がなぜあえてこの曲を本編のラストに選んだのかは、ぜひ実際に聞いて確かめてみてほしい。彼女がネガティブとポジティブの両方の視点を持って、アイドルとして、アーティストとしてステージに立ったときに届いた地点がこの曲なのだろう。
アンコール一曲目はもちろん「特者生存ワンダラダー!!」。彼女の初のオリジナル曲だ。Tシャツに着替えた彼女がぴょんぴょんはねながら、腕を振り上げる。今までの楽曲と打って変わって、底抜けに明るい作品だ。根強い人気のあるこの楽曲、SNSやコメント欄では大喜びしていたファンが多かった。曲調とスタイルの違いもあって、歌い方がガラッと変わっているのもアンコールらしくてとても楽しい。これもまた、アイドル天音かなたの一面だ。
アンコール2曲目は、ホロライブのタレントたちにとっての旗印的作品「Shiny Smily Story」だ。アイドルであることを重視した構成である今回の天音かなたのライブで、この曲がこの位置にある意味はとても大きい。来ている観客もこの曲はほとんどの人が知っていたのだろう、コールも覚えているのだろう、盛り上がりはすさまじいものがあった。
彼女は自身に向き合って、一人のアイドルとして歩んでいる。その中で「ホロライブの一員」というアイドルの側面をとても重視しているのを、この曲でしっかり伝えてくれた。前向きな歌詞を腕を振り上げて歌う彼女、その歌声の明るさはキラキラと輝く、星の光のようだ。
最後の曲は「世界で一番のアイドル」。ライブ終了後に最新のMVとしてアップされている。
「今、世界で一番幸せなアイドル、天音かなたでした!ありがとう!」
この曲は、ファンが推したり愛したりしてくれることで世界で一番幸せになったアイドルから、世界で一番の幸せをファンに届ける、というエネルギーの連環をハッピーに表現した作品だ。さきほどの「Shiny Smily Story」とまた少しベクトルが違う、アイドルの魅力がはっきりと表現されている。
笑顔で飛び跳ねながら、心の底から楽しそうに歌う天音かなた。彼女の華やかな歌声に盛り上がるファン。大人数のファンの声援を一身に受ける天音かなた。幸福のエネルギー循環が有明アリーナを覆い尽くした。
このライブをこれから見る人、あるいはもう見た人にぜひ見てほしいのが「 【3D重大告知】VTuber人生を教科書にして #しくじりかなたそ 先生爆誕!!【天音かなた/ホロライブ】 」という配信だ。
彼女が送ってきた人生の楽しい部分も苦い部分も両方語られている内容で、某テレビ番組パロディにもなっているので、重い話題も楽しんで見ることが出来る。辛い過去にも向き合い続け、それをパッケージングして作詞作曲で楽曲にしたり、楽しく披露してエンターテイメントにできるのが、天音かなたというアイドルなのだ。
だから天音かなたは、自身を「明るく元気でポジティブなアイドルじゃないかもしれない」と言うのだろう。しかし今回のライブ、確かに曲単位ではネガティブな歌は多いものの、全体の雰囲気でのネガティブさ、陰鬱さはほとんどない。それぞれ笑い飛ばしたり、かっこいい作品にしたり、乗り越える姿勢を見せたりしているからだ。まぎれもなく、ライブそのものはひとつの作品としてみたとき、抜群の盛り上がりを見せる楽しいエンターテイメントだった。
ネガティブな自身をそのまま認めつつ、その上でキラキラ輝く存在になる。そうすれば世界で一番幸せなアイドルになれる。天音かなたのアイドル哲学が、今回のライブを見れば十分伝わってくるはずだ。
セットリスト
01.Knock it out!
02.おらくる
03.インキャララバイ
04.テレキャスタービーボーイ
05.睡キャン界隈
06.別世界
07.十万億土
08.DA・LI・LA
09.きゅーぴっど。
10.セルフサービス
11.至上主義アドトラック
12.三つ葉の結びめ
13.Last-resort
14.アイドル
15.片羽
16.わたしのせいだ
【アンコール】
17.特者生存ワンダラダー!!
18.Shiny Smily Story
19.世界で一番のアイドル
ライター:たまごまご
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