2018年4月から放送がスタートし、妖怪と人間の関係を通じて、現代社会の陰と陽を描き続けた『ゲゲゲの鬼太郎』(第6期)。そして、2018年11月にリリースされて以降、幅広い世代に人気を集めているゲーム『ゆる~いゲゲゲの鬼太郎 妖怪ドタバタ大戦争』(以下、ゆるゲゲ)。
3月に放送が終了したことを記念して、両者のプロデューサーによるスペシャル対談が実現! 東映アニメーション・永富大地さんとポノス・岩原ケイシさんによるここだけの話満載なインタビューの後編をお届けします!
――『ゲゲゲの鬼太郎』第6期が完結しましたが、改めて本作の感想をお聞かせください。
永富 僕らの作った第6期は、水木しげる先生が亡くなって初めてのアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』ということになるんです。これまでのシリーズは、最初に水木先生に何かをお見せしてから作ってきたわけですが、もう先生はこの世にはいらっしゃらないわけです。なので、これまで放送されたアニメの再コピーにならないよう、改めて原作を尊重した現代ならではの『鬼太郎』にしようと考えていました。もちろんオリジナルは『鬼太郎』なんだけど、そこで僕らが何を作れるか、残せるか。原作に込められていた想いと現代性、ライターの才能をどうブレンドするかでその塩梅は変わってきますから、とても長丁場のシナリオ会議を2年間続けて……。毎回7時間くらいはやっていたんですかね。大好きな『鬼太郎』のためにみんなが魂を削って作りあげた思い、それが第6期『ゲゲゲの鬼太郎』の世界として完成されたのかな、と改めて感じています。
――最終話のシナリオの表紙に第7稿と書いてあって驚きました。
永富 第7稿なんて、映画のシナリオくらい煮詰めてますよね(苦笑)。最終話は小川(孝治)監督、僕、(シリーズ構成の)大野木寛さんで大論争を繰り広げましたから、それだけ改訂の数も多かったんです。みんな頭の中に「自分たちが作ってきた『鬼太郎』の最後はこうあるべき」というビジョンがあり、それをどう落とし込むかが本当に大変でした。
岩原 『鬼太郎』第6期は、エピソード配置がとても見事だと感じました。日曜日の朝から子どもたちを恐怖に怯えさせたかと思えば、翌週はギャグ満載のお話だったりして……。
永富 エピソードの順番に関しては、大野木さんが僕に一任してくださっていて、視聴者の方が飽きないように、例えば怖い話やギャグ回が続かないようにしていました。放送休止や季節も気にしていましたね。そのために最初の発注通りの話数で放送されたものの方が少ないという……(苦笑)。さざえ鬼の話(編注:第90話「アイドル伝説さざえ鬼」)なんて、第7話くらいの発注ですからね。そんなこともあって、2話連続で同じライターさんが書いているように見えても、実は季節が違うときに書いていたなんてことはよくあったんです。
岩原 さざえ鬼の話、リアルタイムで見ながら衝撃を受けましたね。思わず「えっ?」って口に出ちゃいました。
――第6期といえば、人間側のレギュラーキャラクター・犬山まなの存在が大きかったですね。
永富 最終回のラストシーンに直結する話なのですが、信じなくなったり興味が薄れたりすると、妖怪って見えなくなるんですよ。まなは自分の命を賭けて――結果として、記憶だけを持っていかれましたが、鬼太郎をこの世界に取り戻すことができました。でも、その代償で徐々に人間は鬼太郎のことを忘れて見えなくなる。やがて10年が過ぎて、大人になったまなの頭に、ふと鬼太郎のことが思い浮かぶ……。これは僕も監督もどうしても描きたかったシーンだったんです。というのも、水木先生が亡くなった今、『鬼太郎』にとって一番辛いことは人々に忘れられることだと思うんですよ。だから、いつまでも『鬼太郎』を忘れないで欲しい。第5期から約10年経って第6期を作ったように、また10年後にもし『鬼太郎』が蘇るとして、その下地は僕らが作らないといけない。そういった幾つもの意味も込めて、まなというキャラクターに想いを託しました。
――まだ『ゆる~いゲゲゲの鬼太郎 妖怪ドタバタ大戦争』は続いていきますし、『鬼太郎』は永遠に忘れられない存在として今後も語り継がれると思います。
永富 そうなんですよね。アニメは終わりますけど、『鬼太郎』という存在は永久不滅のものですし、スタンプもゲームの『ゆる~いゲゲゲの鬼太郎』も『ゲゲゲ忌』(編注:調布市名誉市民の水木しげるさんの功績をたたえ、命日の11月30日を『ゲゲゲ忌』とし、イベントなどを開催)も続いていきます。
岩原 『ゆるゲゲ』はこれからも長く続けていきたいですね。忘れられないため、と思って考えたわけではないんですが、「ゆるゲゲさんぽ」という新たな機能を追加する予定です。GPSを用いて、実際に外を歩いてみると妖怪に出会えるという機能ですね。なので、アニメが終わっても『ゆるゲゲ』をプレイすれば、鬼太郎たち妖怪にすぐ会えます。見えない世界がある――その一端をプレイしていただければ嬉しいです。『ゆるゲゲ』があれば『鬼太郎』ロスにはさせませんので!!
永富 アニメと同時期に始まって、志を一緒にしてきた『ゆるゲゲ』には、皆さんが『鬼太郎』を忘れないようにずっとずっとがんばって欲しいですね(笑)。
岩原 これからも頑張ります(笑)。
永富大地(ながとみ・だいち)
1979年生まれ、福岡県出身。東映アニメーション所属。主なプロデュース作品に『ワールドトリガー』『デジモンユニバース アプリモンスターズ』など。『ゲゲゲの鬼太郎』(第6期)ではプロデューサーの他、ノベライズ『蒼の刻』『朱の音』で短編を執筆している。
岩原ケイシ(いわはら・けいし)
1973年生まれ、福岡県出身。広告代理店を経て、現在はポノス ダークホーススタジオ所属。主なプロデュース作品に『Wizardry Online』『ゆる~いゲゲゲの鬼太郎 妖怪ドタバタ大戦争』など。福原蓮士氏作画によるマンガ『ウィザードリィZEO』の原案も手掛けた。
Source: WebNewtype
「ゲゲゲの鬼太郎」アニメ&ゲームWプロデューサー対談【後編】“大好きな『鬼太郎』のためにみんなが魂を削って作りあげた”