洲崎綾登場:単行本発売記念「中島かずきと役者人」連載版期間限定公開

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劇作家・脚本家の中島かずきさんが縁のある役者と向き合う対談集「中島かずきと役者人」が4月10日(金)に紙&電子版が発売されました。発売を記念して、月刊ニュータイプにて掲載された連載版をwebNewtypeにて期間限定公開します! なお、単行本は連載時より2倍以上の文章量! それぞれの〝役者人〟との対話をお楽しみ下さい。

■ 役者人:洲崎綾

【オーディションを突破するための策とは】

中島 「キルラキル」がBlu-ray BOXになり、「キルラキル ザ・ゲーム ︲異布︲」も出て、5年ぶりに復活状態にあるので、きょうは洲崎さんの、満艦飾マコからの5年間を振り返る──といった話を聞きたいと思っているんだけど。
洲崎 うわー、緊張する……。私、かずきさんの話をいっぱい聞けるんだと思ってきたのに(笑)。
中島 いや、この連載は俺がホストだから! 「徹子の部屋」で徹子さんばっかりが自分語りをしてるのはおかしいでしょ?
洲崎 あはは(笑)。確かに。なんてうまいたとえなんだ……。
中島 そもそも「キルラキル」のときって新人だったんだよね?
洲崎 ド新人ですよ。「キルラキル」は’13年10月の放送開始で、その時点で私、ちゃんと役がついてた作品というと、1月から始まった「たまこまーけっと」だけだったんです。年齢的にはもう25歳とかそれぐらいだったんですが、「キルラキル」は、すごく新人然としていても許されるくらいキャリアが上の人しかいない現場で、すごく甘えさせてもらっていた感じがしますね。
中島 自由に振る舞ってたよねぇ。
洲崎 あはは(笑)。怖いもの知らずだったなって今でも思います。当時、私は何にも考えてなかったんじゃないかなぁ。もう当時の記憶があるようでないところもあるんですが。
中島 ああ、怖くて抹消してるんだ(笑)。
洲崎 たぶん、そうだと思います(笑)。
中島 以前から洲崎には、聞きたかったことがあったの。というのは、最初のテープオーディションのときに「いやー! マコ、大ピンチ! このままじゃ、パンツ丸見えだよー!」っていうセリフがあったでしょう? あれを「パパパパパンツ丸見えだよ」って、「パ」をものすごく足して言ったのはなぜだったの? あのとき、あんなふうに「パ」を足したのはあなただけだったのよ。僕はあの「パパパ」が決め手だったんだけどね。
洲崎 えー、ハマってよかったぁ(笑)。それはですね、当時、私は全然オーディションに受かることがなくって、「何がダメなんだろう」ってずっと思っていたんです。だから数少ないオーディションのチャンスをとにかく大事にしようと考えていて。それで、とにかくこのオーディション原稿に書いてあるセリフを、ちゃんと〝一個の人〟をしっかりつくって演じなくちゃいけないと考えたんです。ト書きに書いてあることだけじゃなくて、とにかく膨らませて「私が演じるならこういう人になります」っていうのを、全然違ってもいいから、とにかく提示しなくちゃ!と。そういう勝手な構想をすごい練りに練っていった結果、パンツが見える状況をめちゃくちゃ想像したら(笑)、「たぶんパが1個じゃ足りないんじゃないか」って思って、足したんです。あんまり役に受かったことがないから、役づくりの仕方もよくわかってはいない状態でやったことではあるんですが、今思うと「なんだこいつ、俺が書いた脚本、勝手に変えやがって」ってならなくて本当によかった。
中島 なるほどねえ。
洲崎 しかも、テープオーディションって2回ありましたよね。たぶん、今の自分だったら「2回目やるということは、1回目で絞りきれなかったんだろうから1回目と変えたほうがいいかな」と考えると思います。でも当時は、すごく頑固だったから、まったく1回目と同じものを納品して(笑)。さらにテープオーディション通った後の、スタジオオーディションに呼ばれたときも、同じことやって。
中島 (笑)。もともとマコは〝新人枠〟って考えていたんだけど、普通にできる役でもないからね。あと「パパパ」だけじゃなくて、もうひとつ感心したことがあって。第1話のアフレコのとき、電車に乗って「乗れた乗れた乗れたよー」って言うセリフがあったんだけど、これは今石(洋之)監督が多分コンテで足したセリフなの。それをあなたは、「乗れた(うれしい)乗れた(ビックリ!)乗れたよー(誰にともなく宣言する)」っていう調子で、3つの「乗れた」にちゃんと3つの意味を付けてきたんだよね。それは想像していなかったことで、それを聞いて「これはマコだよ!」ってなったんだよね。僕はあのとき、「あ、この子でよかった」って思ったんですよ。
洲崎 多分無意識にやったことだと思うんだけど(笑)、それはよかったです。
中島 でも、実際にアフレコ始まってどうだった? ここは大事だな、頑張らなくちゃと、思ったりしたシーンって覚えている?
洲崎 それが、まったくなかったんですよ! 
中島 ええっ? それはマコの出番も普通な感じで受け止めてたの?
洲崎 なんか、そうでした。でもそれって、いい意味でというか、あえて自分で言っちゃいますけれど、マコはあの世界でただのひとりだから、全体を俯瞰で見ることってないだろうなと、当時の私は思っていたんです。しかも、マコってあんまり空気を読むタイプでもないし、マコが知らないことは、私も知らなくていいはずだと思っていたので。
中島 そのとおりだね。
洲崎 今は「ちゃんと台本読めや!」って思うんですけど、当時は、私を取り巻く(主人公の纏)流子ちゃんたちとの状況を知っていれば、その裏で、(悪役の鬼龍院)羅暁がどう動こうが私が知っている必要はないと思ってたんです。だから、あえて自分がかからわないほかのところについては、ちゃんと読んでなかった。
中島 ああ、なるほど。
洲崎 こうやって言うと、言い訳っていう感じもしちゃいますけれどね(笑)。でもそれもあって、あんまり物語全体を把握してなかったので、よく(WEBラジオの)「キルラキルラジオ」で三木(眞一郎)さんに、「お前、先週の内容覚えてないのか」ってすごくいじられたんです。
中島 ラジオはそんな調子だったよねぇ。でも、あれがすごく洲崎っぽかったんだよ。それはつまりマコっぽいっていうことでもあって。……でも、一度こういうハマり役に入ってしまうと、その後で結構苦労すると思うのだけれど、そのあたりはどうだった。
洲崎 それは、めちゃくちゃいろんな人に言われました! 音響監督の岩浪(美和)さんにも打ち上げのときに、「洲崎は幸せだよ。本当に自分にしかできないような役というのは、一生に一度出会えるか出会えないか。なかには出会えない人もいる。それがこんな、デビュー当初に、〝THE 洲崎〟っていう役をやらせてもらえるなんて、とても幸運だから。ちゃんとわかってる? それ?」って言われました。「わかってます!」って当時は答えましたね。あと当時、檜山(修之)さんにも飲み会で「お前が3年後に生き残ってたらほめてやるよ」みたいなことを言われました。それも印象に残っていますね。
中島 そういえば、檜山さん、言ってたね!
洲崎 やっぱりファンの人からも「マコは洲崎さんしかできないと思います」とか、言ってもらえることがいまだにあって。でもここに甘んじていては成長しないということも確かなので。全然ほかの役柄をやっても、洲崎じゃないとできないよって言われるようになっていきたいなとは思います。
中島 演じる役柄も変わってくるよね。
洲崎 そうですね。20代後半は、それまでと同じような、明るくて前向きな役がふられることが多かったです。でもそういう役は、若い子のほうが得意な子が多いじゃないですか。だから、だんだんお姉さんぽい役とか、ちょっとクールな役とかもやらせていただいくようになってはきています。自分ではまだまだと思うことも多いんですが、でもその後、檜山さんと何度かごいっしょする機会があって、少し前にもいっしょにレギュラーをやっている作品の飲み会があったんですが、そこで檜山さんにすごくほめてもらったんです。
中島 本当!? おおおお!
洲崎 「ようやく俺はお前を認めたよ」って。
中島 よかったじゃない!
洲崎 めちゃくちゃうれしかったです。うふふふ。
中島 きっとそうやって着実に続けながら、新しい役を探す時期が来ているんだろうね。でも、もともと先生になろうとしていたんだよね? そこから声優になってみてどうだった?
洲崎 何だろう、そう聞かれると、答えるのが難しいんですけど……。私が、先生になろうと思ったきっかけって、自分がちっちゃいころに見たアニメで感動して、心が震えるような体験をたくさんしてきたことなんです。
中島 へぇ!
洲崎 人間──特に子どもが──成長につながるような、涙が出ちゃうような経験をする現場に立ち会いたい、というか、自分がそのきっかけになれたらいいのになっていう思いがまずあって。それが先生に対するあこがれにつながったり、自分が見てきたアニメに携わりたいという思いになっているところがあって。そういう意味では声優も先生も、同じ気持ちから生まれているんですよ。結局いったんOLになってはいるんですけれど、やっぱり声優になりたいという気持ちが捨てきれなくてこっちの道を選びました。
中島 確か就職して、壁紙とか売ってたんだよね。
洲崎 そうそう(笑)。かずきさんの記憶力すごすぎません? 確かに壁紙とか床材を売ってました。でも、そこから声優になって……何でしょうね……これ、自分語りをしてもいいですか?
中島 いいよ、いいよ。
洲崎 私がずっともっている気持ちって、声優になりたいっていうよりは、この仕事を通して、自分を成長させたいっていう思いがまずあるんですよ。だから今もまだ声優をやっているけれど、多分それって声優じゃなかったとしても、そう生きているだろうなとは思います。
中島 どんな仕事についても、それは変わらない、と。
洲崎 そうです。この仕事始めたころは、宅配便の荷物の仕分け作業もやっていたんですけど、それもそこそこうまくできていたと思うし、ちゃんとやっていました。でも、自分が天職って思えるのは声優だったんです。これは暗い話じゃないんですけど、現実世界の私ってそんなに人のためになってないんじゃないか……と思うこともあるんです。でも、アニメーションの歯車のひとつになることで、ちびっこを楽しませたり、会社員の人とか学生さんを元気づけたりすることができるんです。声優をやっていてよかったなと思うのはそういうところなんです。
Source: WebNewtype
洲崎綾登場:単行本発売記念「中島かずきと役者人」連載版期間限定公開

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