劇作家・脚本家の中島かずきさんが縁のある役者と向き合う対談集「中島かずきと役者人」が4月10日(金)に紙&電子版が発売されました。発売を記念して、月刊ニュータイプにて掲載された連載版をwebNewtypeにて期間限定公開します! なお、単行本は連載時より2倍以上の文章量! それぞれの〝役者人〟との対話をお楽しみ下さい。
■ 役者人:藤原さくら
【小学校のときの夢は漫画家だった?】
藤原 「プロメア」、最高でした!
中島 ありがとう! Twitterに書いてくれたのも見たよ。
藤原 超よかった……興奮ですよ。「偽義経冥界歌」の打ち上げで映画のことを教えてもらって、気にはなっていたんです。そうしたら、私のお姉ちゃん夫婦が先にいっしょに見にいって、「あんたが見るべき映画でした」って言われて。もう、その日のうちに見にいったんです(笑)。この前も、早乙女太一さんにお会いした時に、感想を直接言いました。
中島 「けむりの軍団」を見にいったの?
藤原 はい。(早乙女)友貴さんに紹介してもらって、「『プロメア』最高でした!」って直接愛を伝えました。(笑)。
中島 リオの動きは、今石(洋之)監督さんが太一くんの動きをイメージしているんだよ。刀の振り回し方とか。リオのアクション、太一くんそっくりでしょ?
藤原 ああ、ほんとですね! 私、「天元突破グレンラガン」「キルラキル」も好きで。アニメがすごく好きなんです。
中島 それは子供のころからずっとなの?
藤原 小学生のときは、漫画家になりたいっていうくらい大好きでした。そこから歌が好き、音楽が好きになって、「歌いたい!」ってなっていくんですけれど。だから今でも漫画は大量に読んでます。それもあって今、ファンクラブの企画で漫画を描いてるんです(笑)。漫画家さんにお願いして、トーンの貼り方とかを習って描いてるんですよ!
中島 え、アナログで描いてるの? それはまたすごいね(笑)。そもそも漫画から歌にいこうというきっかけは何かあったの?
藤原 小さいころだと、将来の夢って二転三転するじゃないですか(笑)。父はもともとバンドをしていて、今でもベースを弾いてるので、父とライブをしたりとかしました。
中島 やっぱり、音楽についてはご両親の影響が濃いんだね。
藤原 そうですね。まず小学校4年か5年のときに、父が買った安いギターをもらったんです。ギターを弾いてる女の子って、当時は自分の周りにいなくて。で、ギターが弾けたらかっこいいぞっていう、男の子がバンドを始める理由みたいなものでした(笑)。だから「ギタリストになりたい!」って最初は思って、そこから、YUIさんを知るんです。お姉ちゃんがYUIさんのことをすごく好きで。
中島 そうか、同じ福岡出身だ。
藤原 お姉ちゃんがまずYUIさんを好きになって、CDが欲しかったみたいなんです。でも、ハマったら私がCDを買うのわかっているんで、次に私をハマらせてきて(笑)。それで「YUIみたいになりたい!」って思うところから、でしたね。
中島 そういう流れだったんだ。でもその間もアニメや漫画も好きだった、と。
藤原 自分のやってる音楽と、趣味のアニメや漫画は、「ちょっと乖離しているかな」と思っているところもあって……。そうしたら最近続けてアニメのお仕事をいただいて、すごくうれしかったです。まさかそういう仕事があると思っていなかったので。つながっていくものなのかなって思いました。「若おかみは小学生!」は曲調的にも自分のやっている音楽と寄り添ってつくれたと思っていて、劇場版「コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道」のときは……。
中島 「コードギアス」来たよ!って思った?
藤原 「『コードギアス』来ちゃったよ!」ですよ。しかも私、スザク役の櫻井孝宏さんの声がすごく好きだったから「どうしよう」って(笑)。自分なりに一生懸命、制作に取り組みました。
中島 そういうときって自分が好きでよく知っている作品ってやりやすいのかしら?
藤原 何も知らないで書いたものよりは、作品にグッと寄り添ったものにはなる気がします。もうファンだから。そういう意味では「コードギアス」の曲を書くのって、ちょっと二次創作みたいな気持ちでした(笑)。
中島 (笑)。じゃあ、お芝居についてはどうなの。やってみたかったの?
藤原 うーん。ドラマ「ラヴソング」の出演は、「歌う女の子を今募集してるみたい」ってマネージャーさんから連絡をもらったのが最初です。そういうオーディションがあるというのは、友達とかから聞いていたんですけど、ドラマの撮影時期が私のツアーと完全にかぶっていたんです。だから最初は「無理ですね」って。ただマネージャーさんに「それでも、1回はオーディションに行ってみたら?」って言われて……。それで3回か4回かオーディションを受けたら決まってたので、決まっていたツアーをずらして……という流れでした。
中島 そうだったんだ。今回「偽義経冥界歌」の内容を思いついたときに、歌える若い女の子が必要になったんだ。その子が歌で冥界の扉を開くというアイデアがあったので。そうしたらさくらさんの名前が挙がってきて。僕は「ラヴソング」を何本か見ていたので、「これならいける!」って思ったんだよ。
藤原 うれしいです。でも、お芝居は大変でした。「偽義経冥界歌」はけいこ中も「やばい!」「大丈夫か!」ってずっと思ってました。舞台って同じことを何回も繰り返してやるじゃないですか。それがみんなすごいなとも思いましたね。たとえば、舞台で誰かが死んで「うわっ!」ってなるけれど、それって本日2度目の死だったりするじゃないですか。で、舞台裏で会っちゃったりするし(笑)。けいこ中も「気持ちつくるよ!」って思ったところで、「休憩でーす」ってなることもあったし。ペースがなかなかつかめなくて。難しいって最初は思いました。
中島 それはどんなふうに克服したの?
藤原 完全に克服できたかはわからないんですが、これはもう、とりあえず集中するしかないんだってなりました。
中島 そうだよね、目の前のことにね。
藤原 余計なことを考えちゃったりすると、雑念が入ってくるから、いかに集中するかが勝負だなって。それを考えると(生田)斗真さんはほんとにすごかった。私だったら絶対に、こんなにできない人間が相手だったらイライラするだろうなーって思うんです。でも、斗真さんは、けいこが全部終わった後に、何回も「あのシーンは、こうしたほうがいいよ」って、本当に何回もいっしょに練習につきあってくれて。本当に感謝です。
中島 斗真くんは、いい座長さんだったよね。
藤原 すばらしい方ですよね。
中島 静歌という登場人物は、演じてみてどうでした?
藤原 静歌という名前ですけれど、最初に話をうかがったときに「ハムレット」のオフィーリアをイメージしていると聞いていたので、最初の印象と全然違って。
中島 そうなんだ!
藤原 たとえばしゃべり方が思っていたよりも男っぽいんです。でも、いのうえひでのりさんが、振り入れをするとちゃんと女の子の一面も出てくるんです。それで「ああ、こういう子なんだ」ってイメージも湧いてきて。立ち位置も複雑で、最初は、平家の人たちにずっと囲われていた女の子が、そこから、敵だった斗真さん演じる義経に出会っていっしょに旅をするようになるわけですけれど、義経って、出会ってすぐ死ぬんですよ。だから静歌は、彼をどのタイミングで好きになったんだろうか、とかも計りながら演じていました。でも、歌を歌う女の子なので、自分から乖離しているとは思わなかったですね。
中島 静歌にとっては、義経が自分の歌を理解してくれたっていうのが大きいんだよね。やっぱりクリエイターって、自分のつくったものを理解してくれる人の存在って……。
藤原 うれしいですよね。それはわかります。
中島 恋愛って「あ、この人好きだ」って思ったら好きになっちゃうわけで、そこにロジックはわりとなかったりするんですよ。実は「好き」にロジックをつくることそのものが、物語の嘘だったりもするので。
藤原 ああ、そうですね。
中島 今回、「偽義経冥界歌」に出演して、何か自分のなかで変わったことはあった?
藤原 いろんな人から「声が出るようになった」っていうのは言われますね。歌のときに、無理に声を出そうとしているわけじゃないけど、ちゃんと通ってるって。今回の出演前は、絶対に声を枯らしてしまうって思ったんです。でも、うまい声の出し方っていうのがあるんですね。そういうフィジカルの面ではすごく発見がありました。
中島 無理せずに、通る声が出るようになったんだ。
藤原 そうなんです。それは「出演前はこういうことをしたほうがいいよ」とか、いろんな人が教えてくださったからで。たとえば出演が終わった後、整体すると確かに調子がよくて。本当に体が資本だなと実感しました。
中島 そのとおりですよ。
藤原 今まではわりと、起きて「眠い……」ってなりながら現場に行って、本番のときまでには体が起きる、っていう感じでやっていたんです、でもちゃんと前もって準備して、体をつくったら本当に、簡単に声出るんだなって。だから、またちょっと体づくりのために、ジムとか通おうかなって思うようになりました。
中島 この後は、来年2月からの東京公演もあるし、また楽しみですね。また新鮮な気持ちで演じられるようになっているはずなので。
藤原 そうですね。私も楽しみにしています。
Source: WebNewtype
藤原さくら登場:単行本発売記念「中島かずきと役者人」連載版期間限定公開