この世界の命運をかけて――。キャスト陣が熱くぶつかりあう、TVアニメ「プランダラ」。Web Newtypeのリレーインタビューでは今回、音響監督のえびなやすのりさんに劇伴制作やアフレコについてのお話を伺いました。
――「プランダラ」の原作をお読みになったときの印象をお聞かせください。
えびな 熱く、燃える作品だと思いました。同時に、キャラクターたちが最初に受けた印象からどんどん変わっていく作品だなと。僕自身が原作を読んでいくうちに、第一印象と変わっていくことに驚いたんですよね。だから、音響のプランを立てるときも(視聴者に)第一印象を強くもってもらえるようにしようと思いました。第一印象をしっかりと伝えておけば、そのあとの印象の変化も、僕と同じように驚いてくれるだろうと。
――えびなさんの今回の音響作業で主軸にした部分はどんなところでしょうか。
えびな 僕が作品を組み立てるうえで、自分の考え方を大きく反映する部分は「音楽」なんですね。そこで第1クールから第2クールに変わるところで、音楽の方向性をがっつりと変えようと思いました。まず、第1クールは管楽器や弦楽器など、オーケストラで使われているような楽器を中心とした構成の音楽にしています。いわゆるファンタジーの世界のイメージですね。第8話の「アビスの悪魔」が出てくるところから電子楽器や打ち込み系、バンドサウンドを使っています。そこから第11話で300年前の過去に行ってからは電子系、ドラムを使ったバンドサウンドにしてるんです。
――今回の劇伴を担当される松本淳一さんとは、どんなやり取りをされましたか?
えびな 松本さんは弦やオーケストラ系を海外でレコーディングしてくださいました。音楽は2回発注したのですが、前半にメロディアスな楽曲や分厚いオーケストラをつくっていただき、後半はデジタルサウンドをお願いしています。前半で使うコメディ向きの楽曲を、後半のメニューで追加したところもありました。
――松本さんに依頼する音楽メニュー(音楽発注表)は、どのようなイメージでおつくりになりましたか?
えびな 音楽メニューを書くときは、まず脚本を読み込んで、どのシーンにどんな曲をかけるのかを想定していくんです。そうやってシーンにあわせて曲を決めていくと、全部で200曲ぐらいつくってもらうことになってしまう。この作品は2クールのシリーズものなので、ひとつのシーンだけにかける曲をつくるのはもったいないんですよね。そこで、そのシーンで使いたい曲を、ほかのシーンで使うとしたらどうなるだろうと考えていくんです。メロディがみんなの耳に残るように、いいシーンで何度も使うことを考える。そうやって曲をほかのシーンでも兼用できるように絞り込んでいって、全部で50曲ぐらいにするんです。同時に、たとえば「戦いのシーンの音楽の印象的なメロディを、感動のシーンに使いたい」といったメロディをうまく使っていくことも考えます。それが作品の色にもなる。印象的なメロディを本編のみならず、TVCMであるとか、いろいろなところで使うことで、聴いた瞬間に「ああ、『プランダラ』だな」と感じられるようにするわけです。
――松本さんからお願いした音楽をどのように映像に付けていこうとお考えでしたか。
えびな この作品はシリアスなシーンで、いきなりリヒトーの表情がコメディの顔になったりするんですよね。そもそもお面をかぶって戦うので、シリアスに行きづらいところがあるんです。こういったシーンにどうやって音楽を付けていくかを、(神戸洋行)監督と相談しました。コメディにあわせて音楽を変えてしまうと、次のシリアスな曲をかけづらくなってしまう。そのままシリアスなシーンの曲をかけ続けるか、あるいは音楽を使わないか。やはりそのときの心情をそっと後押しするような楽曲を付けることが多かったですね。
――この作品は現在と300年前を行き来する作品です。キャスティングはなかなか難しかったのではないかと思いますが、キャスティングの印象をお聞かせください。
えびな キャラクターは基本的にキャラクターの年齢と実年齢が近いキャストさんにお願いしています。キャスト会議をしたときは、現在と300年前で年齢が変わるキャラクターを演じるキャストさんは、両方をできる人から選ぼうという話になっていました。リヒトー、シュメルマン、ナナ、園原水花、アレクのキャスティングですね。オーディションは、リヒトー、陽菜、ジェイル、リィンの4人をしましたが、リヒトーはたしか坂井離人時代のセリフもオーディションに入っていたんじゃないかな。原作の水無月すう先生もオーディションのテープは聴いて、ご意見をくださいました。
――リヒトーと離人はかなり幅のある役どころですよね。
えびな オーディション後、キャスティングのときに、学生時代の離人をベースにするか、現代のリヒトーをベースにするか、どちらがいいかという話があったんです。そこでシリーズの話数的には「過去編」のほうが短いので、第1クールをベースにしようと。だとするならば、学生(離人)を演じているときに、無理をしすぎないように、人工着色料が強すぎないように演じることができる人がいいだろうということを考えました。
――それで中島ヨシキさんがリヒトー役になったんですね。リヒトー役を演じるときに、えびなさんからリクエストしたことは何ですか?
えびな この役柄は、リヒトーとしてのギャグもあるし、離人の学生生活でのギャグもある。離人の学生生活におけるギャグは「笑わせる方向ではないギャグ」、今のリヒトーのギャグは「あえて演じている、濃い目のギャグ」なんです。リヒトーにとってギャグは武装のひとつなんですよね。そのあたりはちゃんと切り分けて、違う芝居をつけてもらっています。
――「過去編」になって注目が高まるアレク(アラン)、シュメルマンのキャスティングはいかがでしたか?
えびな キャラクターの年齢的にも、自分たちスタッフが「声を聞いてきた世代」の方をキャスティングすることになるんですね。その段階でだんだん候補者が絞られました。その候補者のなかから、僕がお仕事をした経験のある、それくらいの年齢のキャストをプレゼンしまして。みんなの共通のイメージから、シュメルマン役に関俊彦さん、アレク(アラン)役に東地宏樹さんにお願いしました。
――インパクトあふれる登場だった園原水花のキャスティングはどうでしたか?
えびな 園原に関しては、現代と過去のキャラクターの両方がかなり極端なんです。その両方ができるということで、みんなの頭のなかではきっと、悠木(碧)さんが思い浮かんでいたんだと思います。全員の意見が一致したうえで悠木さんにお願いしています。
――「過去編」のナナの登場もサプライズになりました。
えびな 300年前のナナを伊藤(静)さんも見事に演じてくれて。僕らもびっくりしました。さすがだなと。
――「過去編」に登場する、第13特設軍学校の生徒たちのキャスティングはどのように進めていきましたか?
えびな 年齢感とキャラクターの見た目ですね。生徒のなかにはヒゲが生えているキャラクターもいますよね。だとしたら、ちょっと年上のキャストがいいだろうなと。道安(武虎)は日野(聡)さんにお願いしましたが、僕らの予想を飛び越えるお芝居をしてくれました。
――第1クールのなかで、えびなさんの指針が定まった話数はどこでしたか。
えびな 第2話のリヒトーが陽菜を助けるところですね。リヒトーがジャンプしたところで、どんな音楽がかかるかでこの作品の印象が決まるだろうなと。まず、ここにかける楽曲をしっかりと松本さんに発注しようというところから音響作業を始めました。その後、リヒトーは陽菜を置いていく。あのリヒトーの裏切りは、陽菜を悲しませないためなので、その心情はすごく難しいんです。はじめにお話ししたように、第一印象でこの作品を見てほしいから、リヒトーに対して「何だあいつは」と思えるように。「実はいい人なんだよ?」みたいな音楽を付けたら、このあとのリヒトーの展開にびっくりしない。第4話でジェイルが出てきたときも、第9話で園原が出てきたときも、いわゆる悪者として音楽を付けています。
――「過去編」の音楽の印象はいかがですか?
えびな 第1クールで使っていたオーケストラ系の音楽はメロディを活かすために、いかに長く使うかを追求していたところがありました。でも「過去編」はいわゆるデジタル系やバンド系の音楽を使っていて、リズムで構成されているので、短く切りやすいんです。そういう意味ではすごく音楽を付けやすかった印象があります。
――視聴者に向けて、今後の展開で楽しみにしてほしいところをお聞かせください。
えびな これから毎話数のようにどんでん返しがあるので、そのときの驚きを一緒に味わってもらえるとうれしいなと思います。
Source: WebNewtype
「プランダラ」音響監督えびなやすのりインタビュー「第一印象をしっかりと強調する音楽をつけていくことで、そのあとのどんでん返しの展開を楽しんでもらおうと思っていました」