特『刀剣乱舞-花丸-』～雪月華～の美しい映像はどの刀剣男士ファンにも胸を張れるクオリティ！脚本・猫田幸さんインタビュー

　アニメ『刀剣乱舞-花丸-』の最新作として3部作劇場上映が決定している特『刀剣乱舞-花丸-』～雪月華～。第一幕となる特『刀剣乱舞-花丸-』～雪ノ巻～が5月20日に公開となります。

　本記事では、『PASH!』6月号に掲載された脚本・猫田幸さんへのインタビューの一部を特別に掲載します！

　TVシリーズ第2期『続刀剣乱舞-花丸-』から、本作の脚本を担当されている猫田さん。新刀剣男士が24振加わる今回の3部作について、制作秘話を語っていただきました。

何より大切にしているのは“原案ゲームファースト”の姿勢：脚本・猫田幸さんインタビュー

――まずは今回脚本を担当されることになった経緯から教えてください。

　『続刀剣乱舞-花丸-』から引き続きお願いしますとご依頼をいただきました。プロットを何本か出しつつ、3本でひとつの物語を描くのか、1本ずつ毛色の違う物語にするのかの議論を重ね、後者に決まりました。

　本作の魅力は何より絵が美しいことだと考えているので、作画作業に多く時間が取れるよう、早く脚本を書かなければ！　と、約半年で3本分の脚本を書き上げました。

――新刀剣男士は3部作で24振登場します。

　初めて行った打ち合わせで、「全部で24振増えます」と伺ったんです。正直なところ、多くない……？　と思いました……（笑）。第2期では全12話で15振増えているのですが、今回は60分×3本で24振となるので、これは大変だぞと。

　曲者揃いだったので、キャラクターを掴むのもみんな難しかったですね。ただそのなかでも、例えば粟田口や文久土佐藩にまつわる刀など、既出キャラとの関わりがある刀剣男士は話し始めるきっかけが作りやすく、比較的ストーリーに入れ込みやすかったです。

　福岡一文字派や江といったくくりで新登場するキャラクターも多く、それらを物語としてどうまとめていこうかというところは頭を悩ませました。

――86振を動かすためにどんな工夫がありましたか？

　第2期からどの刀剣男士がどの回に出ているか、すべてまとめた出番表を作成しています。またキャラクターデザインを描き起こす必要がありますが、戦装束はやはりファンの方なら見たい姿だと思いますので、戦闘に出たことがあるかも全部チェックしています。

　ほかにはTVシリーズで出番が少なかった刀剣男士もできるだけ活躍させるようにしています。86キャラも出てくる作品って、普通のアニメにはまずないと思うんですよ。キャストさんが多いぶん、音響費もかかってくるのでそこも自分なりに考えました。

――制作サイドからそこもお願いがあったのでしょうか？

　いえ、自主的に（笑）。シナリオの最初に全登場キャラを記載するのですが、そこに「セリフあり何キャラ、声優何名、兼役何名」まで書くようにしています。本作のキャストは総勢70数名いるうえ、今はコロナ禍のため分散収録なのも音響現場は大変なところで、全キャストさんに出演してもらうということは現実的ではなくて。

　でも兄弟なのに1振だけその場面にいない……といったことはできないので、どこに誰がいるかを脚本上でできる限り書き、それを元に動画工房さんが作画で補ってくださっています。

　また兼ね役の方が演じられている刀剣男士を同じ話数に登場させて、できる限り多くの刀剣男士が描かれるように調節したりもしますね。朝9時から夜9時まで収録といったハードなスケジュールを何日も行って、あのキャラ数を録音してくださった音響スタジオさんは本当に素晴らしいと思います。

――猫田さんが原作を大事に作っているのが伝わってきます。

　「すべての刀剣男士それぞれにファンがいる」ということも忘れないようにしていることですね。同時に、自分自身はお気に入りの刀剣男士を作らないことも大切です。これは全員を可能な限り平等に扱いたいからで、そうでないとこの物語を書くことはできません。

　もちろん第1期を踏襲している部分はあって、例えばへし切長谷部と燭台切光忠がよく会話していますが、そこを崩してしまうのは『花丸』ではない。ですのである種の様式美として組み込みつつ、誰かのことを特別気に入っているから多く登場させるとか、このペアだから出番を入れるといったことは基本的にありません。それよりも刀派や兄弟など、原案ゲームに元々ある設定を大切にしています。

――『雪ノ巻』の完成映像をご覧になった感想はいかがですか？

　とにかく絵が美しくて、みんなカッコよかったです！　脚本を急いだ甲斐があります（笑）。どの刀剣男士ファンの方もそこは本当に期待してくださいと、胸を張っていえる作品になっています。