平成30年分のTVアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』シリーズ! 今回は平成18年(2006年)のアニメを振り返ります。
この年は、『Fate』シリーズ初のアニメ化となった『Fate/stay night』、真っ白な死神の少女・モモを描いた『しにがみのバラッド。』、外すことのできない仮面をつけた青年・ハクロヲが民族抗争に身を投じていく『うたわれるもの』、2人の“ナナ”の物語を描いた『NANA-ナナ-』。
さらに、硝煙香るアウトローたち&キレキレのセリフ回しが魅力的な『BLACK LAGOON』、不治の病に侵された少女との恋を描いた『半分の月がのぼる空』、『恋☆カナ』、『バラライカ』など名曲が誕生した『きらりん☆レボリューション』などが放送されました。
今回は、数ある平成18年に放送されたTVアニメのうち4作をご紹介します!
“絶対順守の力”を用いて世界に反逆した青年の物語『コードギアス 反逆のルルーシュ』
『コードギアス 反逆のルルーシュ』は、サンライズ制作のオリジナルSFロボットアニメ。第1期が2006年~2007年、第2期にあたる『R2』が2008年に放送され、今年は『復活のルルーシュ』と題した新作劇場版の制作が発表されるなど、筆者にとっても熱いタイトルです。
架空の超大国“神聖ブリタニア帝国(ブリタニア)”に占領された日本は、植民地“エリア11”となり、日本人は“イレブン”と蔑まれ、ブリタニアに支配されていました。ブリタニアによる日本戦略から7年後、日本で暮らすブリタニア人ルルーシュ・ランペルールジは、謎の少女・C.C(シーツー)から他人に命令を強制できる絶対順守の力“ギアス”を授けられる。
ギアスの力を得たルルーシュは、暗殺された母親の復讐と、視力を失った妹・ナナリーの未来のため、仮面で素顔を隠し“ゼロ”として軍事組織“黒の騎士団”を結成。世界の3分の1を支配する超大国ブリタニアに対し、自らの野望のため、“日本独立”のため、闘いを挑みます。
本作は、主人公・ルルーシュがギアスを用い世界に変革を起こす“アンチ・ヒーロー”であるところが見どころのひとつ。ルルーシュは、自らの野望のためなら手段を択ばず、時として非道ともとれる手法(ルルーシュが望まぬ形であることがあっても)でブリタニアへの反逆を遂行します。そして、そんなルルーシュに敵対するのは、ルルーシュの親友であり、日本人でありながら“名誉ブリタニア人”としてブリタニア軍に従軍する枢木スザク。スザクは、“間違った方法で手に入れた結果に意味はない”とし、“正しい方法”で世界を変える方法を求めます。
“手段を選ばずに結果を求める”ルルーシュと“結果ではなく過程のために手段を選ぶ”スザク。同じ目的をもちながらも相いれなかった2人は、やがて対立の道を歩むことになります。
主人公であることからルルーシュの行動すべてが“正しいもの”として認識しがちになりますが、そこに対立し異なる方法で“正しさ”を求めるスザクがあらわれることで、“何が正しい”のかが視聴者にゆだねられている作品だなと筆者は思いました。そして、闘いのなかですれ違い続けるルルーシュとスザク、そして登場人物たちの姿に心が苦しくなります。ルルーシュが世界に反逆を誓った理由が理由なだけに胸が苦しい……。
これは余談ですが(このコラムで余談を書きまくっている)、『コードギアス 反逆のルルーシュR2』の最終回が放送されたのは筆者の誕生日でした。平成アニメ史に確実に残るであろう衝撃的なラストに、ボロボロと泣き、布団にこもって終わったことを誕生日を迎えるたびに思い出します。
社会現象にもなった! 超人的な頭脳戦に痺れた『DEATH NOTE』
『DEATH NOTE』は、『週刊少年ジャンプ』で連載された同名漫画を原作とするサスペンス作品。2003年から2006年にかけてアニメ化されました。
本作は、警察庁刑事局長の一人息子であり、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、社交性を持つ(ハイスペックすぎる)青年・夜神 月が主人公。月は、ある日名前を書いた人間を死なせることができる死神のノート“デスノート”を手に入れる。ノートの所有権を得た月は、死神・リュークが見えるようになり、ノートに課せられたルール・能力を把握していく。やがて、“犯罪者が居ない新世界=自らが考える正義”を実現するため、ノートを用いて世界中の犯罪者を殺害していきます。
やがて、法で裁けない犯罪者を裁く存在“キラ(KIRA)と呼ばれ熱狂的な信者を得るも、警察組織からは”大量殺人者“としてマークされるように。持ち前の頭脳で警察を欺く月でしたが、名探偵・Lや第二のキラを名乗る弥 海砂、Lの後継者であるメロとニアなど、頭脳や力を持つ者たちが立ちふさがります。
本作の見どころは、“超人的な能力×頭脳戦”。デスノートという“神の技”とも言える力を手にした月は、警察組織の監視をかいくぐりながら、世界中の犯罪者に対して裁きをくだしていきます。時にはポテトチップスの袋の中にノート&TVを隠す、記憶をなくした自分が記憶をなくす前の作戦に気付くことを見越して作戦を立てるなど、常人では至らぬ方法で警察の目から逃れていきます(ポテチ作戦は学校でめっちゃ話題になった))。
また、同じ天才同士である月とLの闘いは、手に汗握る緊張感がありました。同じジャンプ作品の『ワンピース』や『ナルト』のように激しいバトル展開が描かれているわけでなく、盤上での頭脳戦でドキドキさせられたのは、天才同士の“予想できない駆け引き”が行われていたからこそかもしれません。
ちなみに、筆者が通っていた学校では『デスノート』が流行った際に、学年集会で「むやみに人の名前を書くのはやめましょう」と規制(?)がなされたことがあります。
学園ホストに心ときめいた『桜蘭高校ホスト部』
『桜蘭高校ホスト部』は、『LaLa』で連載された同名漫画を原作とする学園作品。2006年にTVアニメ化され、2011年にはドラマ化、2012年には実写映画化もされています。本作を見たことがないという方でも主題歌『桜キッス』を聴いたことがあるのではないでしょうか? KISS KISS FALL IN LOVE~。
本作は、上流階級のお金持ちばかりが通う私立桜蘭学園にある、暇を持て余した美少年が、同じく暇を持て余した女生徒をもてなす“ホスト部”の日常や恋を描いた物語。特待生として本校に入学した藤岡ハルヒは、校内オークションに出品するはずだった花瓶(800万円)を割ってしまい、返済のためホスト部の雑用係になることに。
しかし、素顔が美形であったことから接客係(ホスト)となり、100人の指名客を集めることをノルマとして課せられることに。突如としてホスト部員になったハルヒでしたが、中世的な見た目&男子制服を着用しているだけで実は女の子! かくして、ハルヒは女性であることを隠しながら、ホストとして活動していくことになります。
本作は“学園ホスト”という学園モノのなかでもかなり珍しい設定がポイント。ホスト部員もイケメン揃いで、フランス人の母を持つ甘いルックス&トークが売りの環、ホスト部の実権を握る頭脳派のクールビューティー鏡夜、禁断の兄弟愛&シンメトリーで魅了する光・馨、ロリショタな見た目に反して武道の達人であるとうギャップを持つ光邦(ハニー先輩)、言葉よりも行動で表現するワイルド系イケメン・崇(モリ先輩)たちが所属しています。みんな違ってみんなイケメン。
そんなイケメン揃いの本作ですが、それぞれが悩みを抱えており、ホスト部としての活動のなかで、またはハルヒとの出会いでその運命を変えていきます。コメディー的な展開が多いのですが、ふと弱みを見せてくれる彼らの姿は女性だけでなく男性でもときめきを感じる部分があるはず。
そして、“ホストもの”ではありますが、少女漫画でもある本作。主人公・ハルヒが誰とくっつくのかも見どころ……。コメディー展開が多いため、めちゃくちゃ恋愛している! 感がなくさっぱりと見守ることができると思います。
こんな学園生活送りたかったでしょでしょ?非日常的な学園生活を描いた『涼宮ハルヒの憂鬱』
『涼宮ハルヒの憂鬱』は、谷川 流の同名ライトノベルシリーズを原作とする学園SF作品。2006年に第1期、2007年に第2期、2009年に新作14話を加えた全28話が放送され、2010年には劇場版アニメが上映されました。全然意識していなかったけれど“ハルヒ”繋がりですね。
本作は、女子高生・涼宮ハルヒが立ち上げた団体“SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)での活動や非日常的な日々が描かれた物語。
涼宮ハルヒのクラスメイトでごく普通の男子高校生・キョンの視点で物語が進んでいき、主な物語はハルヒを始め、宇宙人(対有機物生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース)の長門有希やハルヒを監視する未来人・朝比奈みくる、“機関”に所属する超能力者・古泉一樹ら“非日常的な存在”に彼らがふりまわされる形で進んでいきます。キョンの本名は『ハルヒ』シリーズの謎の一つ……そしてアニメ放送当時、やたらとキョンのような「やれやれ」喋りが増えたのも思い出の一つ……。
ライトノベルを知らない、アニメを見ない層にも名前を轟かせた『ハルヒ』。ハルヒが「夏休みを満喫できていないんじゃないか?」と思ったことをきっかけに、8月31日24時になると夏休み最後の2週間を延々ループした『エンドレスエイト』は、放送当時の話題を集めた異色エピソード。第13話から第19話までの全8話(期間にして2ヶ月)放送されるなど、登場人物だけでなく視聴者もループを味わっているかのような気分に。
どうせ2、3話で終わるだろうと思ったら、8話にもなるだなんて思いもしなかった……しかも8話連続でほぼ同じ内容が繰り返し放送される(しかも毎話書き直し・録り直しされていた)というスタッフの本気を感じさせる内容でした。今年の夏にはニコニコ生放送にて『エンドレスエイト88時間生放送』が実施されたことでも話題に。乗っかろうと思ったけれど流石に88時間は無理でした……。
ここでは代表として『エンドレスエイト』を取り上げましたが、ハルヒが世界から消えてしまう『涼宮ハルヒの消失』(劇場版)や3年前のハルヒと出会う『笹の葉ラプソディ』、ハルヒが『God knows』を披露した文化祭回『ライブアライブ』、戦艦を使用した宇宙戦争が繰り広げられた『射手座の日』など、記憶に残る名シーンが数多く存在します。
また、アニメとしての大ヒット以外にもOPの『冒険でしょでしょ?』、EDの『ハレ晴れユカイ』、古泉一樹のキャラソン『まっがーれ↓スペクタクル』なども話題になりました(WAWAWA忘れ物~も記憶に残る曲)。今でも歌える人多いはず。社会人になってからアニメ知らなそうなお父さん世代でも『ハレ晴れユカイ』を知っていて驚きました。しかも踊れてた。
平成18年の日本はどうだった?
ちなみに平成18年の日本は、早稲田実業を夏の甲子園で優勝に導いた斎藤佑樹投手がハンカチ王子として話題に。
また、フィギュアスケート選手・荒川静香さんの“イナバウアー”やキューピーのCM曲『たらこ・たらこ・たらこ』が流行語に選ばれたほか、東京三菱銀行とUFJ銀行が合併で三菱東京UFJ銀行が発足、玩具メーカーのタカラとトミーが合併しタカラトミーが発足、ニンテンドーDSソフト『ポケットモンスター ダイヤモンド/パール』が発売、ソニーよりプレイステーション3が発売、任天堂よりWiiが発売されたのもこの年の出来事です。
次回の『平成アニメ備忘録』をお楽しみに!
Source: PASH! PLUS