2023年で生誕70周年を迎えて注目を集めている特撮怪獣映画の『ゴジラ』。11月3日より日本の同シリーズ30作品目となる『ゴジラ-1.0』が大ヒット上映中ですが、ゴジラのような巨大怪獣が現実に誕生する事はあり得るのでしょうか?
大人気のゴジラですが、彼らを含めた怪獣の多くは人による公害によって発生したもの。現代日本を見た時に、公害怪獣が誕生する可能性があるほど環境問題が深刻化しているのか気になりますよね。
そこで今回は日本の社会情勢や環境問題と照らし合わせ、公害怪獣を紹介すると共に、誕生する可能性も考察していきましょう。
非核三原則がある日本にゴジラは現れない……こともないかも?
日本を代表する怪獣といえば『ゴジラ』を思い浮かべる人が多いと思います。1954年に誕生してからは平成シリーズやハリウッド版などの作品を展開し、2016年には庵野秀明監督による『シン・ゴジラ』が公開されたことも記憶に新しいでしょう。
今回考察のために取り上げるのは、1作目の1954年に公開された『ゴジラ』。まずはゴジラが誕生した設定を確認しますが、参考にするのは人文科学と動物・植物・地学の自然科学の各分野をあわせた博物館である「徳島県立博物館」の公式HPで紹介されている「思想としてのゴジラ」です。
同ページの「ゴジラ誕生」によると、ゴジラの元の姿は深海で生き延びていた約1億4000万年前の恐竜。それが度重なる水爆実験によって眠りからさめ、水爆エネルギーを全身に充満させて巨大怪獣となり、それを周りが「ゴジラ」と呼ぶようになりました。
水爆実験が繰り返しおこなわれていること、さらに実験地の深海に恐竜が潜んでいればゴジラが誕生する可能性があると考えられますが、現代の日本において水爆実験は実施されていません。
ただ爆弾の種類は変わりますが、他国が実験のためにミサイルを日本海に発射している事実はあります。日本海の深海に恐竜がいると仮定し、奇跡的にミサイルのエネルギーを充填できれば、恐竜が巨大化して「ゴジラ」が誕生するかもしれません。
その場合、巨大化した恐竜がどこへ向かうのかが気になるポイントになりそうです。
「ヘドラ」を生み出した「ヘドロ」も現代日本では耳馴染みがなく…!?
公害怪獣はゴジラの他に、1971年に公開された映画『ゴジラ対ヘドラ』の「ヘドラ」も見逃せません。ヘドラは1970年代に社会問題となっていた公害から誕生した怪獣で、ヘドロのようなドロドロとした状態に赤い目玉が2つだけあるというインパクト抜群のビジュアルをしています。
ヘドラ誕生の経緯は、“宇宙からやってきた鉱物起源の宇宙生命体が、都市近海に堆積していたヘドロや公害による汚染物質などの鉱物を吸収。さらに分裂や合体を繰り返して巨大化し、汚染物質を吸収し続けて成長した”とのこと。
宇宙生命体とヘドロの組み合わせによって誕生したヘドラですが、日本の川や海の水質が良くなったせいか、近年になってヘドロという言葉は耳馴染みがありません。2023年6月に環境省が公開した「水浴場(開設前)の水質調査結果」によれば、水浴場の777カ所すべてが水浴場として適当な水質だったそうです。
もちろん水浴場に限った話になりますが、調査結果を踏まえると、現代の日本では“宇宙生命体のエサになるヘドロはほとんどない”という見解に。そもそも宇宙生命体が日本に来襲するという前提が可能性として極めて低いですが、エサさえなければヘドラの襲撃を心配する必要はなさそうですね。
ちなみに余談ですが、『ゴジラ対ヘドラ』のオープニング曲である「かえせ!太陽を」は公害問題をテーマにしています。歌詞には「水銀 コバルト カドミウム」など有害物質の名称が登場し、さらに「みどりを 青空を かえせ」という環境問題を訴えるストレートなサビも特徴の1つです。当時の公害問題の重大性を体感したい人は、同曲を聴いてみるといいかもしれません。
東京湾の水質汚染で巨大化した「ゲスラ」
最後に注目するのは、1966年放送の『ウルトラマン』6話「沿岸警備命令」に登場した海獣「ゲスラ」です。元来は害虫を捕食する益獣だったのですが、たまたま生息していた東京湾の汚染によって巨大怪獣に変異してしまいました。好物のカカオ豆を求めて船舶を次々と襲うも、最終的にはウルトラマンに弱点である頭部の触覚を取られて絶命します。
光線などの必殺技ではなく、何とも原始的な方法でやられたゲスラですが、巨大化した原因は東京湾の汚染です。確かに東京湾といえば現代でも“汚い海”という印象は強く、実際にも水質は悪いため、ゲスラが誕生した時の設定と状況は変わりません。ちなみに、東京湾に限っていえばヘドロがある状況なので、ゲスラに加えてヘドラも誕生する可能性もあるそう……!
しかし東京都も無策ではなく、高度な技術や多彩なアイデアで都市課題を解決して持続可能な社会につなげようと、「SusHi Tech Tokyo(スシテックトーキョー)」というプロジェクトを推進しています。
その一環として最先端の技術やサービスを開発する国内外の企業が集まる展示会が2023年2月に開かれ、その展示会に出展した「株式会社イノカ」は、日本の大手鉄鋼メーカーである「JFEスチール株式会社」と共同で、東京湾の水質改善の実証実験をおこなっています。
そもそも水質を悪くする大きな要因は、東京湾の底にたまったヘドロから発生する「硫化水素」という有毒なガスといわれています。そこで今回の実験に使われているのが、鉄鋼製品の製造過程で生まれる副産物「鉄鋼スラグ」。化学反応によって硫化水素の発生を防ぐというアイデアです。
水温や水流などが異なる複数の水槽で、効果的な鉄鋼スラグの量などの検証を重ね、2025年に実際の海での実証実験を目指しているそうです。彼らの成果次第では公害怪獣が誕生しない東京湾を実現できるかもしれませんね。
【参考資料】
・特撮から学ぶ「SDGs」!怪獣たちが教えてくれる環境問題 温暖化も公害も重大な人類の敵
・ゴジラって、もともと何?どうして街を襲っているの?謎だから調べてみた。
・思想としてのゴジラ
・公害怪獣はこんなにいた!ゴミや環境問題の怪獣・怪人
・Wikipedia:ヘドラ
・令和5年度水浴場(開設前)の水質調査結果について
・テレビ朝日|東京サイト:技術で都市課題を解決
・脳裏に焼きつく公害怪獣史
・株式会社イノカ
・JFEスチール株式会社
文・LUIS FIELD
The post ゴジラやヘドラは現代日本に誕生できるのか? 昭和の公害怪獣からを環境問題を考えてみた first appeared on PASH! PLUS.
Source: PASH! PLUS