色々なアニメを観ていると、まるで別次元のストーリーなのに、「どこか似ている」と感じることはありませんか? 今空前のブームを巻き起こしている『鬼滅の刃』と、スポ根漫画の金字塔『巨人の星』に、その感覚を覚えました。
実際、この2つの作品を比較してみると、一見まるっきりテイストの違う作品なのですが、実は“意外な共通点”を発見しました。
今回、調べてみてわかった『鬼滅の刃』と『巨人の星』の共通点を、以下にて考察してみようと思います。
『鬼滅の刃』と『巨人の星』を比較してみた!
■巨人の星
昭和を代表するスポ根漫画です。アニメ化もされ、1968年3月30日から1971年9月18日にかけて、全182話を放映。最高視聴率36.7%を叩き出しました。主人公、星飛雄馬(ほし ひゅうま)が元巨人軍選手の父・一徹に英才教育を受けて、巨人軍ナンバーワンの投手を目指す物語です。
■鬼滅の刃
こちらもご存知、令和を代表する人気漫画。こちらもアニメ化され、2019年4月6日から9月28日にかけて、全26話放映されました。主人公、竈門炭治郎(かまど たんじろう)が鬼になった妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻す為に鬼殺隊に入隊し鬼と戦う物語です。
炭治郎と飛雄馬の対比
■星飛雄馬
17歳(巨人軍入団当時) 身長(推定)165センチ 体重(推定)60キロ
■竈門炭治郎
15歳(鬼殺隊入隊当時) 身長165センチ 体重(推定)43キロ
どちらも決して体格に恵まれているとはいえず、敵と戦う際の弱点となります。
飛雄馬➡コントロールは良いが、球質が軽く当てられれば長打を打たれやすい。
炭治郎➡高い身体能力を持つ鬼との闘いでは、まだまだ未開発な身体能力。
しかし、二人は共に厳しい修練と努力を自らに課す事で技量と身体能力を高めて
弱点を克服していきます。そして、熱くなり過ぎると自らを見失い、身体を酷使し過ぎてボロボロになることもしばしば……そんなところもそっくりです。
飛雄馬は高校時代、甲子園の準決勝戦で左門豊作の折れたバットで爪を負傷し、怪我をおして決勝戦に挑み敗退こそすれ、ボールを血染めにしながらも完投します。炭治郎は、幾度となく鬼との闘いで瀕死の重傷を負い蝶屋敷送りになっています。
実は似ている!? 2人の性格に共通点が
努力が実を結ぶには、アドバイスを素直に聞き入れて愚直にやり通す頑固さと、決して修練を怠らない生真面目さが必要不可欠。飛雄馬は元巨人軍の父・一徹、炭治郎は元柱の鱗滝の元、厳しい修行を逃げ出さずに完遂するのです。
そして、自身を奢らず、現状に満足しません。共に向上心が非常に強く、常に向上する為の方法を探求しています、鋭い観察眼も二人の共通するところです。
必殺技を持つ二人の共通点とは
飛雄馬と炭治郎は、共に敵を倒すのに必殺技を有しています。どのように必殺技をあみだしているのでしょうか?
飛雄馬の必殺技といえば【大リーグボール】。
大リーグボール1号は、お寺で座禅を組んでいた時にかけられた禅僧の言葉から。大リーグボール2号は、少女がゴム毬をついているところを見て。大リーグボール3号は、京子が投げたリンゴを左門が受け取り損ねた瞬間のリンゴの軌道を見て、それぞれ“ヒント”を見つけています。このように、飛雄馬は日常生活の中から『球が軽い』という弱点を補う魔球のヒントを探し出します。
炭治郎の必殺技は【水の呼吸】と【日の呼吸ヒノカミ神楽】が挙げられます。
鱗滝、錆兎、真菰らに鍛え上げられ、全集中の呼吸や水の呼吸を習得し、これ以降、鬼達と戦いながら炭治郎は進化していきます。次第に力を増す鬼達に対して炭治郎は水の呼吸だけでは対応できず、かつて見た父の舞うヒノカミ神楽を用いて必殺技日の呼吸ヒノカミ神楽を繰り出しますが、当初は身体能力が足りずに使いこなせず身体がボロボロになるのですが、特訓により全集中常中の習得をはじめ、さまざまな鬼との闘いで自らの能力を覚醒していきます。
このように、炭治郎は“未開発の身体能力”という弱点を鬼との闘いの中で創意工夫しながら鬼を倒すことで、技術の向上を図って行きます。
共に繰り出す必殺技も人まかせや与えられた才能だけでは無く、自らの弱点を克服し成長するという部分こそが二人の共通点だと思われます。
実は〇〇なところもそっくり!? 意外な共通点
2人共、素直ながら頑固な性格故に、トラブルを起こしがち。その素直さ故、思わず出てしまう言動や行動で周囲から、空気の読めないズレてる奴と思われたりするシーンが多々出てきます。上下関係や友人関係問わず、相手の逆鱗に触れてしまうことも。そして、感情を爆発しやすく持ち前の頑固さで自らの主張を頑として曲げません。
飛雄馬は誰にも何も告げず失踪すること度々あります。説明すれば特に問題にもならないと思うのですが……。炭治郎も柱合会議で柱の不死川に頭突きを入れて倒します。
しかし、元来に快活さと素直を持ち合わせている2人は次第に周囲の人達に、認められ信頼されるようになります。
敵(ライバル)にも共通点が!?
飛雄馬の最大のライバルと言えば、花形満です。お金持ちかつスポーツ万能という絵に描いたような超エリートですが、初対面の小学1年生の飛雄馬に対して「君は生涯のライバルだ!」と断言し飛雄馬の才能を見抜き以降、執拗に勝負を挑みます。
そして、炭治郎の最大の敵・鬼舞辻無惨もまた、炭治郎の耳飾りを一目見て継国縁壱の姿を重ね合わせ、以降容赦無く炭治郎に刺客を送り込み、執拗に追いまわし戦いを挑み続けます。
ふたりの姿から、共に主人公の能力を一瞬で見抜く眼力とプライドが高くの執着心の強いところは共通点していると思われます。
2人の複雑な家庭環境の中に見えてくる“愛”
星家の家族構成は、父・一徹、姉・明子、飛雄馬の3人家族。母・春江は他界しています。飛雄馬は、幼少の頃から一徹のスパルタ教育を受けており、厳しい父に対して反抗心を持ったり、野球を嫌う時期もあったりしますが、自ら進んで“巨人の星”になることを誓います。
一徹は、ちゃぶ台をひっくり返したり、酒に酔って暴れたりとDV親父のイメージが強いですが、第一話で雪の降る夜に飛雄馬の投げる200球もの球を受けています。投げる飛雄馬も大変ですが、身動きせず200球も受ける一徹もスゴイと思います。さらに、昼間は苛酷な工事現場での仕事をしながら、夜は飛雄馬のトレーニングに付き合っているというタフさ。休む間もなく働き、鍛え、飛雄馬を甲子園の狙える私立のおぼっちゃん高校へ進学させるのです。飛雄馬もそんな父親を誇りに思っています。
一方、竈門家の家族構成は、母・葵枝、長男・炭治郎、次男・竹雄、三男・茂、四男・六太、長女・禰豆子、次女・花子の7人家族で、父・炭十郎は他界しています。炭治郎は亡き父に代わり、幼いながらも炭焼きで一家の大黒柱として働き、大人数の兄弟の中、長男としての自覚と誇りを持ちながらも、兄弟たちと仲良く平穏な日々を過ごしていました。
しかし、鬼の襲来により、禰豆子は鬼化。他の家族は惨殺されてしまいます。これにより、炭治郎は禰豆子を人間に戻す為に鬼殺隊に入ることを決意。その中で、自身に合った技が、幼い頃、父が舞っていた“ヒノカミ神楽”にあるのではないかと思い、自力で取得していきます。
作中で炭治郎は、父の境地に達した動きについて尊敬の念を抱き、また父も、ヒノカミ神楽と耳飾を子々孫々に継承するように懇願しています。
2つの作品の共通の“テーマ”とは?
飛雄馬の目標は“巨人の星”であって、決して球界ナンバーワンではありません。父の果たせなかった夢を自分が果たす事です。
また炭治郎の目標は、禰豆子を人間に戻すことであり、鬼を滅して平和を取り戻すことではありません。
つまり、これら2つの作品は家族の深い情愛と親子の継承をテーマに謳っているのではないでしょうか。共に我々の心を掴んで離さない作品ですが、根底にこのようなテーマがあるからこそ、人々の心に響く、素晴らしい作品なのだと思います。
時代を超えた名作アニメの共通点は、まだまだ他にもありそうです。こういった、違った目線でアニメを観るのも面白いと思います。ぜひ、皆さんも探してみてください。
参考文献
ウィキペディア 【アニメ巨人の星】【鬼滅の刃】
ピクシブ百科事典 【竈門炭治郎】【竈門炭十郎】【星飛馬】【星一徹】
文・内海 健(よしもとライターズアカデミーウエスト)
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Source: PASH! PLUS