平成のTVアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』シリーズ! 今回は平成28年(2016年)のアニメを振り返ります。
この年は、圧巻のバトルシーン&終盤のスリリングさはアニメならではの見せ方だった『亜人』、“無個性”の少年が“最高のヒーロー”を目指す『僕のヒーローアカデミア』、太宰 治、芥川龍之介ら日本を代表する文豪が異能力で戦う『文豪ストレイドッグス』、こんなスタイリッシュな高校生見たことない! 完全無欠な主人公・坂本を描いた『坂本ですが?』。
日本列島が海中に沈んだ世界で“ブルーマーメイド”を目指す少女たちの物語『ハイスクール・フリート』、十人十色の個性的なBOYSを描いた『B-PROJECT 〜鼓動*アンビシャス〜』、“サーヴァンプ”と呼ばれる吸血鬼同士の熾烈な戦いを描いた『SERVAMP -サーヴァンプ-』、各話エンディングが名曲ぞろい『ツキウタ。 THE ANIMATION』、内気で目立たない“モブ”だけどその“能力”は企画外な『モブサイコ100』が放送。
また、刀剣男士たちの四季折々を穏やかに紡いだ『刀剣乱舞-花丸-』、トラブルだらけの異世界生活も(残念な)キャラクターたちと一緒なら楽しい『この素晴らしい世界に祝福を!』、3姉妹が作るご飯が“飯テロ”すぎた『3月のライオン』、落語家の悩みや葛藤が時代の流れとともに描かれた『昭和元禄落語心中』。
石膏の胸像がイケボ&美しすぎるアイドルになった『石膏ボーイズ』、“タイガーマスク”を原点に2人の若きプロレスラーを描いた『タイガーマスクW』、ゲーム会社で働く女の子たちの日常を描いた『NEW GAME!』、女子高生×バイク=爽快ハイテンション学園コメディー『ばくおん!!』、青森県を舞台に魔女見習いの女の子が成長するまでを描いた『ふらいんぐうぃっち』などがアニメ化されました。
今回は、数ある平成28年に放送されたTVアニメのうち3作をご紹介します!
今までにない“本格派スケート”作品! 師弟、ライバル関係が熱かった『ユーリ!!! on ICE』
『ユーリ!!! on ICE』は、『モテキ』の久保ミツロウさん×『LUPIN the Third ―峰不二子という女-』の山本沙代さん原案によるオリジナルTVアニメ。2016年に全12話が放送され、来る2019年には劇場版の公開が控えています。
本作は、男子フィギュアスケートを題材にした本格スケートフィギュア作品。昨今では羽生結弦選手や宇野昌磨選手など実力派選手が活躍し、注目を集めている男子フィギュアスケートですが、意外にも“男子フィギュアスケート選手”を主軸にしたアニメはありませんでした。
それゆえに、『ユーリ!!! on ICE』アニメ化が発表された当時「どんなアニメになるんだ」と大きな注目を集め、放送がスタートすると、本格的なスケート描写、個性的なキャラクター、ライバルとの鎬を削るような熱い闘いが話題になり、瞬く間に大ヒット作品となりました。
主人公・勝生勇利は、実力はあるがメンタルの弱さが原因で思うように結果を出せないフィギュアスケート選手。ある日、勇利が滑る姿を見たという世界的トップ選手ヴィクトル・ニキフォロフが勇利の元を訪れ、コーチになることを申し出ます。
憧れの選手直々に声をかけてもらったことに喜ぶ勇利でしたが、ダイエットに成功するまでコーチはしない、リンクにもあげさせないとヴィクトルに宣言され、まずはダイエットに励むことになります。ここでヴィクトルが「そんなブタみたいな体じゃ、何を教えても無駄だね」というセリフを発するのですが、視聴当時、グサリときてしまい焦ってダイエットしたのを覚えています……見事にリバウンドしたけどね……。
無事にダイエットに成功した勇利は、ヴィクトルの厳しい指導の下、グランプリファイナル優勝を目指し特訓に励みます。そんな勇利の前に、もう一人の“ユーリ”ことユーリ・プリセツキーが現れ、ヴィクトルのコーチ権を賭けて勝負をすることに。ヴィクトルは、対局なアレンジを持つ『愛について』を課題にすると、勇利には“エロス”を、ユーリには“アガペー”をテーマに振り分けアイスショーを開催します。
色気より食い気な勇利、無償の愛よりも自身の欲望が前に出てしまいがりなユーリ。2人はヴィクトルが提示したテーマに苦戦しつつも、自らが思う“エロス”と“アガペー”を形作っていきます。
この2人は後にライバル関係となるのですが、最初の対決となる“温泉 on ICE”は、“アニメで見るフィギュアスケート”の面白さがふんだんに込められている回。今後、さらに素敵なショーが披露されるのですが、勇利とユーリの底知れぬ魅力、そしてヴィクトルの思惑が垣間見える名シーンです。まだ見たことがない人はとりあえず4話まで見て!
なお、作中にでてくるパフォーマンスの振り付けは、元フィギュアスケート(アイスダンス)選手である宮本賢二さんが担当。それゆえに“アニメならではのとんでもない技”は登場せず、“本格的なフィギュアスケート技”を見ることができます。
アニメならではのぶっとんだパフォーマンスも魅力的ですが、現実的な技が数多く登場するので、実際のフィギュアスケートを目にすると「勇利が飛んでた技だ」、「ヴィクトルが教えたかったのはこれなのかな?」と今までにない視点で楽しむことができました。
キャラクターたちの個性&ストーリーはもちろんのこと、“本格的なスケート”を体感できる作品です!
年末年始におすすめのアニメNo.1! シンプルに笑える『斉木楠雄のΨ難(第1期)』
『斉木楠雄のΨ難(第1期)』は、麻生周一さんによる同名漫画を原作とする超能力作品。2016年に第1期、2018年に第2期が放送されました。12月28日には年末特番として完結編が放送。終わっちゃうの寂しいね。
本作は、生まれついての超能力者の高校生・斉木楠雄を主人公とするギャグ作品。平穏な学園生活を送るため、超能力者であることがばれないようひっそりと生活していた斉木。
しかし、財布を盗んだ犯人と決めつけられていた憎めないおばか・燃堂 力を助けて以降、インチキイリュージョニスト・蝶野雨緑や悪の組織と戦う中二病・海藤 瞬、「一緒に汗をかこう!」が口癖の熱血男子・灰呂杵志、自分の美貌に絶対の自信を持つ学園のマドンナ・照橋心美、元ヤンの転校生・窪谷須亜蓮らと関わることになり、斉木の平穏な学園生活は、良いのか悪いのか賑やかなものになっていきます。
“超能力者”である斉木が1番強烈な個性を持っていそうなものですが、周囲のキャラクターの個性が濃すぎるがゆえに、斉木が一番普通な人間に描かれているのも面白いところ。ちなみに、斉木はテレパシーを使用できるため、ツッコミは全てモノローグ。主人公なのに喋らないのかよ!
そんな本作は、テンポの良い&良い意味で頭を使わないで見れる笑いが見どころ。緻密に張り巡らされた伏線、脳内で反復しないと分からない笑い、登場人物の裏切り……そういったものは一切ありません(誉め言葉)!
シンプルに目の前で起こる出来事をゲラゲラ笑って見たり、「そんなアホな!」と突っ込みながら楽しめる作品です。筆者は仕事に疲れるとNET FLIXを起動し『斉木楠雄のΨ難』を垂れ流しにしています。頭がまったく働かない時でも笑えるアニメ、最高だよね。
頭をオフにした状態で見ることもおすすめですが、本作はセリフの情報量とスピードが膨大なので、頭がすっきりしているときにセリフに集中して見るとまた違った面白さがあるかもしれません。セリフが多すぎて裏被りのセリフがあったり、メインで進行している会話のバックでめちゃめちゃしょうもない会話が進行していることもあります。
本作には神谷浩史さん、小野大輔さん、島崎信長さん、日野 聡さん、茅野愛衣さん、細谷佳正さんといった豪華キャスト陣が出演しているのですが、他作品では聴くことができないようなお芝居をされているので、そうした部分に注目するとまた面白いかも?
死んでも生きろ。必死に足掻き、生きる姿に心を打たれた『甲鉄城のカバネリ』
『甲鉄城のカバネリ』は、WIT STUDIO制作のオリジナル作品。2016年にノイタミナにて放送され、2016年、2017年には総集編が劇場公開され、今春には新作劇場版を控えています。
本作は、TVアニメ『進撃の巨人』や『魔法使いの嫁』を手掛けたWIT STUDIOが制作を担当。監督は同作品でも監督を務めた荒木哲郎さん、シリーズ構成・脚本は『コードギアス 反逆のルルーシュ』の大河内一楼さん、音楽は『進撃の巨人』や『機動戦士ガンダム』の澤野弘之さん、キャラクター原案は『超時空要塞マクロス』の美樹本晴彦さんが担当。
ここでラインナップした作品群が全て“アクション作品”であるように、荒木監督は「(『甲鉄城のカバネリ』では)自分たちが最も得意なことをやる」と“超王道アクション作品”に仕上がっています。このスタッフの顔ぶれで面白くないわけがない!
噛んだ人間をウイルス感染さえ同族にしてしまう怪物・カバネに占領された世界。蒸気機関が発達した極東の島国・日ノ本(ひのもと)で暮らす人々は、“駅”と呼ばれる城塞都市に立てこもり、カバネリの脅威から逃れる日々を送っていました。本作の主人公・生駒は、妹を殺したカバネに報いるため、対カバネ武器の製造・研究を独自に行っていました。
しかし、カバネの襲来を受けた生駒は、自身の器具でウイルス浸食を阻止するも、体はカバネ、心は人間の“カバネリ”と化してしまいます。自らのカバネリ化、住処を失うという多大な犠牲の果て。生駒は、同じくカバネリである少女・無名や住民とともに、カバネ包囲網からの脱出、そしてカバネに奪われた土地の奪還を決意します。
本作のタイトルにもある“甲鉄城”とは、壁で覆われた駅と駅を繋ぐ蒸気機関車“駿城”を意味します。駅がカバネによって支配されると、人々は“駿城”へ乗り込み、カバネの侵攻を受けていない駅へと逃げ続けるのです。
本作はカバネとただ戦うだけでなく、無力な人間が“生きる”ために“逃げる”姿が描かれているのも見どころ。本作のキャッチコピー「死んでも生きろ」の通り、“生きること”に重きを置いたストーリー展開は心かき乱されそうになりました。
時にはカバネの侵略を食い止めるため、過剰になる人々の姿も描かれています。生駒のような“カバネリ”が存在するため、カバネの疑いがある人物を、撃ち殺してしまうことも。そんな時、生駒は「臆病者」と彼らを叱責するのですが、“誰しもが強い心を持って戦えない”、“自分(または近しい人物)だけでも生きていたい”と願ってしまう人の心の弱さがなんともリアルで、心に重いものがのしかかることもあります。
カバネとの闘いの行く末、喪失と苦悩を背負う生駒が立ち向かい続ける姿、そして“カバネリ”と化した生駒の未来とは? 気になる要素だけを列挙することで、この年末年始に『甲鉄城のカバネリ』が見たくなる暗示をかけました。ぜひ見て!
平成28年の日本はどうだった?
ちなみに平成28年の日本では、『君の名は。』や『シン・ゴジラ』などの邦画が大ヒット。また、『Pokémon GO』が大流行したのもこの年の出来事です。
さらに、40年にわたって『週刊少年ジャンプ』にて連載されていた『こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)』の連載が終了したのも平成28年のことでした。『こち亀』最終回が掲載された『週刊少年ジャンプ』は、オールページ『こち亀』というこれまでにない仕様。何件もコンビニ・書店を回ったのに買えなかったことも今では思い出深いです。
次回の『平成アニメ備忘録』をお楽しみに!
Source: PASH! PLUS