名作『ウイングマン』が生誕40周年を記念して実写ドラマ化! そこで、原作の桂 正和先生、坂本浩一監督、主人公の広野健太を演じる藤岡真威人さんにインタビュー!
取材スペースの空調が強いことに気づいた藤岡さんが、取材陣に「寒くないですか? 温度上げますね」と気遣いを見せてくださって、温かい雰囲気のなか取材が始まりました。
ドラマチューズ!「ウイングマン」のあらすじ:特撮オタクで高校2年生の広野健太(藤岡真威人)は授業中も空想の世界にばかり浸っている。周囲から冷ややかに見られ冴えない日常を送っていた健太の元に、アオイ(加藤小夏)と名乗る不思議な美少女が現れる。彼女は悪の手を逃れて異次元世界からやって来たという。健太はアオイが持っていたドリムノートに、自分が空想したヒーロー“ウイングマン”を描いたことで、本当にウイングマンへの変身能力を手に入れてしまう。念願のヒーローに変身する力を手にした健太だが、異次元世界からはアオイを追って次々と刺客が送り込まれてきてー?
特撮ヒーロー作品にはなかなかない、青春ストーリーを楽しんで
主演を実感した瞬間
――桂 正和先生、藤岡真威人さん、第1話の完成映像はご覧になりましたか?(取材は10月上旬)
桂 観ました。1話は「戦闘シーンをいっぱい入れてほしい」って注文したんですけど、がんばって入れてくれていましたね。でも一番の売りは、健太の部屋であおいとウイングマンが語っているところだと思う。日常的な会話を変な2人がしゃべってるというのは『ウイングマン』の特徴だろうし、そういうところに異物感を感じて、それを面白がってくれたらいいなと思う。あと、あのタイミングで「異次元ストーリー」(アニメ版主題歌)が流れるのは「うまいな」と思います。
坂本 先生が「どこかで使ってほしい」とおっしゃっていたので(笑)。「異次元ストーリー」は1話のどこかでかけたいと思っていて、健太がドリームノートにウイングマンについて書き込むところだと、グッとくるんじゃないかと。あれは今回の劇伴用にアレンジされている曲ですし、今後も要所要所で使っていきたいと思っています。
桂 あえて言うなら、健太が不良に殴られるところはもっとボコボコにされてほしかったな(笑)。
藤岡 あぁ~(ショック)!
坂本 結構殴られたのにね(苦笑)。
藤岡 僕、実は完成版はまだ見られてないんですけど、アフレコの段階でカットをつなげた映像は見せていただきました。自分の話で申し訳ないんですけど、こんなにたくさん自分が、しかも連続で映っていて、そこで「主演なんだ」って。
坂本 実感がわいたんだね。基本、1話は(健太とあおいの)2人しか出てないし。
藤岡 はい。嬉しさはもちろん、驚きとかいろいろな感情が入り混じってました。僕が好きなのは、序盤で健太は自作の赤いコスチュームを着ているんですけど、造形部さんが手作り感を再現してくださった部分が本当にすごくて。マッキーか何かでラインをなぞったんだろうなっていう感じとか、ちょっとプラスチックっぽい目の所の感じとかも大好きです。ヘルメットの脱着を自分でするのは結構難しくて、公園で撮影する時も慣れるまで何回かやり直したことを思い出しました。
坂本 公園で健太がポーズの練習をする時に電光ライダーキック(仮面ライダー1号の必殺技)をすることにも、特別な意味があります。あれは唯一、お父さん(仮面ライダー1号/本郷猛役の藤岡弘、さん)ご本人はやらなかったキックなので、コアな特撮ファンが見たらたぶん「おっ!」ってなる。
藤岡 あれは、ずるいなと思いました(笑)!
桂 お父さん、電光ライダーキックはやってないんですか?
坂本 最終回のトカゲロンとの戦いの時に出た必殺技ですけど、その時期は事故で(撮影を)お休みされていたので。そういう意味も含めて、あそこで健太に電光キックをやらせたんです。
桂 マニアックだな!
こだわりが詰まった令和向け衣装
――なるほど! ちなみに、女性視聴者が1話をさらに楽しめるようなおススメのポイントはありますか?
藤岡 あおいさんのコスチューム、イメージ通りで素敵ですよね。
――コスチューム製作のJAP工房さんが、良い仕事をしておられますよね。
坂本 桂先生こだわりのデザインですから。
藤岡 その辺のこだわりとか、聞きたいです。
桂 コンプライアンスに厳しい世の中で、あおいのイメージを崩さずにどうやって作ろうかなと悩みました。でも、原作の衣装はヒラヒラがいっぱいついているから撮影の邪魔にならないようにするにはどうしたらいいか、なんて考えているときは面白かったですね。
坂本 (デザイン画を)何度も描き直していただきました。
桂 露出を抑えてほしいっていう意見もあったので、腰から後ろに半透明のヒラヒラをつけました。人が着た時、あそこにフワッてスカート的なラインがくることでバランスもよく見えたし、実写の衣裳はそれなりにまとまった良いデザインになったと思います。
藤岡 塩梅が上手すぎるというか、誰もが喜ぶデザインじゃないですか?
坂本 素材にもこだわっていましたね。あれは女性目線で見てもかっこよくて憧れるようなコスチュームになっていると思います。
桂 ポイントは、原作だと健太はあおいのコスチュームにドキドキしちゃいますけど、今回の健太はあの衣裳を見た時に「エロい」って思わないで「すげぇカッコいい!」って思うんですよね。
藤岡 確かに。でも、本当にカッコいいです!
坂本 見たときのセリフが「この人も相当な特撮好きだな」だからね(笑)。
藤岡 (加藤)小夏ちゃんにもばっちり似合っていて、「すごい」としか言えないです。
――他には、何かありますか?
藤岡 『ウイングマン』って特撮ヒーローものらしからぬ、恋愛ものの要素もちょっとありますよね。そこが気になる方も多いんじゃないかと思います。しかも、その恋愛部分がちゃんとストーリーの展開とか心情の変化の部分につながっていくんですよね。美紅ちゃんとの関係性もそうだし、それがありつつ、あおいさんともどうなっていくのか。きっと楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
坂本 通常の特撮ドラマだと、お子さんがメインターゲットだし1年間(または半年)放送されるものなので、なかなか恋愛に力をおいて描くのは難しい。でも今回は深夜枠で対象も大人世代ですし、『ウイングマン』ということもあって、結構がっつり描きました。撮り終わって編集してみると、自分が思ってた以上に青春ドラマだったんです。それがすごく新鮮だし、女性から見ても面白いところじゃないかと思います。でもやっぱり一番は、健太のかわいさじゃないでしょうか。真威人くんのピュアさが健太のオタクなピュアさと重なって、本当にかわいくて応援してあげたくなる感じが出ていると思います。
――確かに一生懸命なところがかわいいですし、もしかしたら女性視聴者はあおいさんの目線に近くなるかも?
坂本 ほっとけない弟みたいな感じというか。
藤岡 それは、ありそうですね。
――藤岡さんご自身は、今回のドラマの健太をどういう人だと捉えていますか?
藤岡 軸にあるのは、ヒーローが大好きで憧れている度合いが他の人以上に突き抜けているというか、それだけで生きていると言っても過言ではないような子だなと思って。でもそれって、すごいことじゃないですか? 「ヒーローだったらこうするだろう」「ヒーローだったらこんなことはしない」って、彼の行動原理、言動、すべてが、そこで決まっている。それだけ好きなのは一種の才能だと思うし、それが最初から最後までぶれずに一貫しているのが、健太っていうものを作っている精神的な部分だと思いました。そこは、演じるうえでは絶対に外さないでいたつもりです。
――あそこまで突き抜けてると、ある意味怖い人に見える時もあると思うんです。でも1話を見ると、藤岡さんが演じているとそれすらも爽やかに見えるんですよね。
桂 そこは「変なやつだな、こいつ」って嫌われるか、「面白いな」って思われるか、紙一重なので心配でした。でも、結果的にすごく良かった。
藤岡 それが変に見えずに、周りが「かわいい」って思ってしまうのが健太の魅力ですよね。
坂本 真威人くんのピュアな部分がすごくよく出ていると思う。ほかの人が演じていたら、まったく違っていたでしょうね。
――動きのキレも、「こいつ本当に好きでやってるんだな」っていう感じが出ていて。
藤岡 そこは皆さんにご指導いただいて。
坂本 いっぱい練習したもんね。
藤岡 変身ポーズも、鏡の前で何回も練習しました。変身までの所作がくどいのも、健太っぽくていい。絶対その間に攻撃されそうだけど、それも“特撮あるある”で面白いですね。
会見で坂本監督から「目力とか存在感は遺伝子を受け継いでいると感じました」と褒められて恐縮するなど、好青年ぶりが溢れていた藤岡さん。
奇跡的に明るい健太が要
――映像を見た時、ウイングマンの目というか、ゴーグルの部分がマットな感じでほかの部分との境目が目立たないことも印象的でした。
桂 これは脚本家さんからも質問されたことだけど、ウイングマンはスーツを着ているのか、それとも肉体が変化しているのか、と。僕の中では、あれは肉体が変化しています。異次元の不思議な何かをまとっているっていう解釈で、今回レインボー造形さんに撮影用スーツを作ってもらいました。
――連載当時に先生が着用されたウイングマンのスーツを作ったのも、レインボー造形さんだったそうですね。
桂 それも感慨深くて、以前僕が依頼した時は、当時の社長さんと『電子戦隊デンジマン』のスーツなどを作っていたチーフ造形家さんが作ってくれたんですよ。『デンジマン』大好きなので、本当に嬉しくて。そして今回は、社長を継いだ息子さんが手がけてくださった。そういう、いろいろな縁というか。
坂本 めぐりめぐってですね。
藤岡 そうなんですね! 素敵な話ですね。
坂本 今回の造形は、本当に素晴らしく、カッコいいと思います。
桂 今後登場しますけど、キータクラーもすごいんですよ。マスクがかなり宇宙人感というか生物感を出していて、肉体も血管が浮き出ていたりとか、なかなかリアルにできている。本当に感動しました。
――今回のドラマ版は坂本監督が撮られていることにも意味があるのではないかと思います。桂先生と藤岡さんは今回坂本監督とご一緒されて、坂本演出の魅力をどういうところに感じましたか?
特撮アクションの第一人者・坂本浩一監督も、原作の『ウイングマン』のファンで、ワクワクしながら撮影にあたったそう。
桂 熱さじゃないですか。たぶん現場にいた人はすごく感じてると思うんですけど。
藤岡 おっしゃる通りで、特撮はもちろん、『ウイングマン』という作品自体も本当にお好きなんだろうなって、監督をしている姿を見てるだけでも伝わってきました。それにすごいのは、監督だけじゃなくてチームの一人ひとりが特撮好きな方々で。実際にこれまでもたくさん撮影に関わってきた皆さんだし、僕は今回ご指導いただきながら「本当にみんな特撮が大好きなんだな」って強く感じました。
坂本 自分にとって『ウイングマン』は中学生の頃に読んで夢中になった作品だから、余計に気合いが入りましたね。先生との打ち合わせの時も、集中力100%! ずっと前のめりで、桂先生がおっしゃることを一生懸命理解して、それをどうやってうまく作品にぶつけていくかを考えていました。
桂 僕は、原作と違うことを言いますからね。
坂本 それが一番びっくりしました。「これでいいのかな?」と思いながら、「先生、本当によろしいでしょうか」って何回も聞き直したくらいです(笑)。
――それは、例えばどういうところでしょう?
桂 基本的に、だいぶ変わってますよ。ある意味、健太のキャラクターを変えなかったことによって原作とは変わったとも言える。どうしてかというと、原作やアニメの中では健太があまり周りからいじられることもないし、普通になじんじゃってるんですよ。でも今回はリアル寄りの令和の時代の設定にしたので、あのままの健太がここに来たら違和感が発生しないとおかしい。でも、むしろそこを楽しんでほしいと思ったので、振り切れば振り切るほど目立つキャラクターになると思ってさらに特撮好きを際立たせました。そういう意味で原作とは違うけど、健太っていうキャラクターと『ウイングマン』が最後まで通して描くことは一緒だから、原作からはそれていない。だから、原作を知っている人間こそ新鮮な目で見られるドラマになっているはずです。
藤岡 このドラマは坂本監督じゃなければ撮れなかったなって、僕は思いますし、たぶんすべての関係者が口を揃えてそう言うと思います。スケジュールも本当にお忙しいのに、すべてのピースがうまく嚙み合って、恐怖を感じているくらい(笑)。本当に、その中に自分がいるなんて(ある意味現実感がなくて)フワフワした気分です
――おふたりはこうおっしゃってますが、坂本監督としてはどのように思っていますか?
坂本 自分が『ウイングマン』を撮っているっていうワクワク感と、桂先生が、視聴者の方々が、ファンの方々がどう思うのかっていうプレッシャーのドキドキ感を感じる毎日です。まだ放送されていないので皆さまのご意見はわかりませんが、先生が1話が完成した後に「良かった」って言ってくださったことが、自分にとっては救いになっています。でも自分自身がすごく好きな作品だから、撮影中もむちゃくちゃ大変だけど楽しかったです。真威人くんも素晴らしかったし、真夏だったのでとにかく暑かったですけど、それでもすごく楽しかったし、凝縮された期間でした。
藤岡 僕も本当に、そう思います。
坂本 編集も仕上げもどんどん進めていますが、確実に手ごたえはあるし、「早く見てほしい」という気持ちはすごく強いですね。
桂 ぶっちゃけた話、予算に限りがあるなかで僕の「こうしてほしい」にギリギリのところまで応えてくれていたと思います。
坂本 合成部をはじめスタッフの各部署に「『ウイングマン』読んでました!」「アニメも見てました!」っていう『ウイングマン』が大好きな世代の人がたくさんいるんです。なので、気合いの入り方が違います。本当に愛が詰まっているので、予算以上のことはできていると思います(笑)。
――皆さんの『ウイングマン』愛の結晶なんですね。
藤岡 本当に、すごいと僕も思います。
桂 少なくとも、変身シーンに文句を言う人はいないと思いますよ。あれも原作通り。
坂本 ありがとうございます! あれをどういうふうに現代的に解釈して表現するかが、重要な所なので。
桂 最近は、闇落ちするヒーローが多いじゃないですか。僕自身も『ZETMAN』でコウガっていうキャラクターをそういうふうに描いてますけど。でも『ウイングマン』っていう作品はそれとは差別化しなきゃいけない。この作品の持っている魅力って、曲がらない、純粋な、純粋培養の正義バカにしないとダメ。
藤岡 先生、言い方(笑)!
桂 1話でも、あれだけ不良にボコボコにされたら、「なんだよ!」ってなるじゃん。でも忘れてますからね。
坂本 帰る時も「面をつけるタイミングが……」という所に悩んでいますからね(笑)。
桂 違うことで悩んでいる。でも、それが健太。『ウイングマン』には健太の明るさが必要だと思うから、絶対に闇落ちさせません。僕は「奇跡的に死ぬまでああなんだろうな」っていう捉え方をしているので、今回のドラマでもそれだけは絶対に守らなきゃいけないと思った。逆に言えば、そこを貫けばどんなふうに設定が変わっても『ウイングマン』なんです。
坂本 先生と打ち合わせをすると、毎回このような貴重なお話を聞けるのですごくお得なんです(笑)。
藤岡 僕も今、すごく楽しんじゃってます。僕も健太を演じていて、「闇落ちは絶対しないな」って思いました。
本格的にドラマ作りに携わり、何度も坂本監督と打ち合わせを重ねられたという桂 正和先生。最終的に総監修というポストに。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
桂 このドラマは他のヒーロー作品とは違って、現実にウイングマンがいたとしたら感じるに違いない違和感、リアルな世界観の中に広野健太っていうおかしなやつがいるっていう感じを楽しんでもらえたらいいんじゃないかと思います。
坂本 原作の素晴らしいところを詰め込んだ形でドラマ化しています。それは全話見ていただければきっと伝わりますので、ぜひ見届けてほしい。これを機に『ウイングマン』の世界観にふれて、「続編を見たい」という声を聞かせていただけたらと思っております。
藤岡 僕の俳優人生の中で、代表作になるといいなというくらい、本気でぶつかった作品です。桂先生や坂本監督、そして共演者やスタッフの皆さんと、本当に一丸となって取り組んで、こうして皆さんにお届けできることがすごく楽しみです。原作にまだふれていない方にも、原作ファンの皆さんにも、絶対に届く何かがあると信じているので、楽しみにしてくださると嬉しいです。
(Text=大沢香月)
【プロフィール】
かつら・まさかず 12月10日生まれ。千葉県出身。主な作品に、『ウイングマン』『電影少女』『I”s』『ZETMAN』ほか。
さかもと・こういち 9月29日生まれ。東京都出身。主な作品に、『仮面ライダーフォーゼ』「獣電戦隊キョウリュウジャー』『ウルトラマンジード』ほか。
ふじおか・まいと 12月28日生まれ。東京都出身。主な作品に、『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』『君とゆきて咲く〜新選組青春録〜』『八犬伝』ほか。
【DATA】
ドラマチューズ!「ウイングマン」
ON AIR:2024年10月22日(火)スタート 毎週火曜日深夜24時30分〜 テレ東ほか
HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/wingman/
X:@tx_wingman
©桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
STAFF:原作=桂正和『ウイングマン』<集英社文庫(コミック版)>、監督・アクション監督=坂本浩一、脚本=山田能龍・西垣匡基・中園勇也
CAST:藤岡真威人、加藤小夏、菊地姫奈、丈太郎、的場浩司、中山忍、宮野真守 ほか
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