いよいよ放送がスタートしたTVアニメ『妃教育から逃げたい私』。本作の主人公は、本当は外で遊ぶのが好きなのに、不本意ながら王子の婚約者となり「妃教育」を受けることになったレティシア。婚約破棄を願い、自由を求めるレティシアですが、王子クラークはそんなレティシアを溺愛していて――。「逃げる妃候補」と「絶対に追いかける王子」の物語は、果たしてどこへ向かうのか!?
放送を記念して、原作の沢野いずみ先生とコミカライズ担当の菅田うり先生の対談が実現! アニメ化において制作スタッフとどのような話し合いがあったのか、キャラクターを描くうえで先生たちが大事にしていることは? などなど、本作の魅力、見どころについてたっぷり語っていただきました。
アニメでレティシアの“ギャップ”がさらに面白くなった
――ついにTVアニメ第1話が放送・配信されました。まずはアニメ化が決まったときの心境からうかがえますか?
沢野 驚きました! 物語自体がとても短いので、もしアニメ化のお話がきたとしてもまとまらないのでは……と思っていたんです。そうしたら本当にアニメ化のお話がきて、この作品をどう膨らませるんだろうと思いながら、驚きと喜びを噛みしめました。
菅田 私は、レティシアが妃教育から解放されたときのような、「やったー!」という気持ちでした(笑)。
――アニメ化の相談があったときに、方向性についてはどんなお話がありましたか?
沢野 オリジナルの内容を入れて物語を膨らませたいとうかがったので、それに関してはぜひ入れてくださいとお願いしました。
菅田 田頭しのぶ監督が作品のよさを把握してくださっていて、何をスパイスとして加えるかも思いついている様子だったので、とてもワクワクしました。
――その“スパイス”というのは?
菅田 大きなところだとレティシアの独り言ですね。カメラ目線で自分の心境や状況を視聴者に語りかける演出がすごく新鮮だなと思いました。それから、監督は少し前にホラー系の作品を担当されていたそうで、そういった要素も少し入れたいと提案してくださったんです。面白くなりそうだなと思ったのを覚えています。
沢野 レティシアの心の声は、小説のモノローグの多さを逆手に取った演出にもなっているのがすごいなと思いました。最初のほうの打ち合わせで、カメラ目線でバーンと見せたいと監督からご提案があったんです。昔のアニメではたまにあった表現だと思うのですが、最近はあまり見なくなっていたのでかえって新しい表現だなと感じました。
――そういう意味では、アニメ制作サイドとしてはコメディ感を強めに出したいという狙いがあったのでしょうか?
沢野 その要素はかなりあったと思います。もちろん恋愛の要素も入れながらですが、原作はコメディ感が強いので、その部分を生かしたいとうかがいました。
――ほかに原作サイドとのやりとりで印象に残っていることはありますか?
沢野 アニメ化する範囲についてと、ブリアナのおっぱいをどうするか問題ですかね(笑)。
一同 (笑)。
沢野 原作ではかなりのボイン設定で描かれているのですが、アニメ化するうえでどこまでボインにさせるかは、かなり時間を掛けて話し合いました。
菅田 私もその打ち合わせに同席させていただきました。結果的におっぱいは揺らさない方向でいくとうかがって、「揺れないんだ!?」って驚いたのを覚えています(笑)。
沢野 思いますよね(笑)。
菅田 でも、田頭監督は信頼できる方だなと思ったんです。視聴者の方にお色気をアピールしなくても、レティシアとクラークの恋物語に十分な魅力がある。その魅力を引き出したいということをおっしゃってくれて、とても納得させられました。
――田頭監督はキャラクターデザインも担当されています。何かおふたりからリクエストされたことなどはありますか?
沢野 こちらから何かリクエストしたことはなかったと思います。最初、色味を拝見したときに原作とは少し違っていたのですが、アニメ映えを考えるとやはり色合いがカラフルなほうが映えるのかなと思って、そのお色で大丈夫ですとお伝えしました。
菅田 私も特にリクエストしたことはなかったと思います。いただいたデザインは私っぽいところもしっかり残してくださっていて、本当に「うまっ!」と思ったくらいです。漫画とアニメはやはり見せ方が違うと思いますし、私の絵はアニメに反映しづらいんじゃないかと心配していましたが、監督がとても上手に描いてくださってありがたかったです。
――特にいいなと思ったポイントはどんなところでしょうか?
菅田 クラークの表情ですね。優しい王子様感が出ていて素敵だなと思ったのと、そのあとのアフレコを聞くとすごく面白い感じもあって、素のカッコよさとギャップの面白さに惹かれました。
沢野 私もキャラクターの表情がいいなと思いました。みんな表情がコロコロ変わるんです。キャラクターデザインの段階でいろいろな表情が描かれていて、それがちゃんと各キャラクターの特徴をとらえていたのがすごかったです。
――では、シナリオや絵コンテをチェックされる際に、おふたりが大事にしたことについてもうかがえますか?
沢野 こちらもあまりリクエストしたことはなかったと思います。原作とかけ離れていないか、オリジナルの展開はオリジナルとして成立しているかをチェックしたくらいですね。オリジナル要素がたくさん入っているので、たとえば「このキャラクターとこのキャラクターの出会うシーンが原作と違っている」とか、「アニメではすでに仲良くなっていて、ひょっこり遊びにくる」とか、設定を上乗せしてくださった部分があるんです。それを読ませていただいて、原作を知っている者として違和感がないか、初めて見る方でも混乱しないかという部分を中心に確認させていただきました。
――アニメオリジナルの展開や設定でも、アニメというひとつの物語として成立していればOKと。
沢野 そうですね。アニメに関してはド素人なので(笑)、ストーリーに大きな矛盾がなければ大丈夫ですと。きっと面白くしてくださると監督に絶大な信頼を寄せているので、その辺はお任せしました。
菅田 私も沢野先生と一緒でした。何かあればお伝えしようとは思っていましたが、いつも物語に引き込まれて、「面白かった!」で終わってしまって(笑)。一応、原作と違う展開や設定は「ここは原作と違っていますよね」と確認のためにお伝えしましたが、沢野先生も編集部もOKということでどんどん決まっていったので、私はひたすら物語に没入して楽しむということをしていました。それから、個人的にすごいなと思ったのは絵コンテですね。
――絵コンテ、ですか。
菅田 実は、『妃教育』の絵コンテは監督がおひとりで全部描かれているんです。こういうやりかたってポピュラーなんですか?
――そんなことはないと思います! なかにはたくさん描かれる方もいますが、それでも全話というのはあまりないと思います。基本は、第1話と最終話のような重要な話数だけ手がけるとか、話数ごとに分担されるのが普通かなと。
菅田 そうなんですね。送っていただく絵コンテが、ずっと監督のものだったので、そこで監督の作品愛をひしひしと感じました。
――これからの話数もすごく楽しみになりました! さて、今度はキャラクターの魅力やキャラクターを描くうえでおふたりが大事にしていることについてもうかがえればと思います。まずレティシアについてはいかがでしょうか?
沢野 レティシアは心の赴くままに動いているところがあるので、書くときは勢いを大事にしています。もともと、あまりめそめそしない強い女の子が好きなんです。何かあっても「まぁなんとかしよう」みたいなポジティブさに惹かれるので、そういう好みはかなりレティシアに反映されていると思います。
菅田 レティシアは自分のことを大切にしながらも、まわりのことも大切にできるところに聡明さを感じます。自分が正しいと強く主張すると、相手を否定することに繋がりかねないと思うんです。でも、レティシアは「自分も正しいし、相手も正しい。そのうえでどうやって幸せを見出すか」を考えられる。そういう部分を大事に描くようにしています。
沢野 レティシアは根がいい子ですし、妃教育を受けている間はあまりお友達もいなかったので、仲良くなった人をとても大切にするんです。絆を大事にしているところもしっかり書くようにしました。
――ではクラークについてはいかがでしょうか?
菅田 いちばんの魅力は、レティシアのことが大好きなところですね。アニメになって声と動きがついて、よりレティシア愛が感じられるようになりました。この先の話数でクラークがレティシアを「よーしよしよし」とハグするシーンが特に印象に残っていて、あのシーンは繰り返し見てしまいます。ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
沢野 クラークの魅力は、包容力でしょうか。レティシアの無茶な部分を全部包み込んでくれる優しさ、レティシアの心が決まるまで待とうという気長な性格にそれがよく表れています。気をつけているのは、クラークはまっすぐな性格をしているので、恥ずかしがらずにレティシアへの気持ちを書くことですね。
――それは沢野先生が恥ずかしがらずに、ということですか?
沢野 そうです。書いているこちらが恥ずかしくなってしまうので(笑)、「こんなセリフ、現実では言わないよ」と思いながらではありますが、なるべく素直に気持ちをぶつけるようにして、あわあわするレティシアを書くようにしています。
菅田 私もまっすぐ気持ちを伝えるクラークを大事に描くようにしています。ただ、私は全然恥ずかしくないんですよ(笑)。どちらかというと私はコメディを書くのは得意ではないので、沢野先生を通してコメディ要素を描き、私はラブの部分をもっと広げようと思いながら描いています。
沢野 菅田先生は、恋愛要素を上手に広げてくださるので本当にありがたいです! 私はコメディに逃げることが多いので(笑)、恋愛シーンを広げていただくと、「あ、ちゃんと少女漫画になってる!」って、毎回感動します。
――では、ナディルとブリアナについてはいかがでしょうか?
沢野 ナディルはクラークと正反対の性格にしようと思って書いたキャラクターです。誠実さはあるけれど、その一方でどこかずる賢い部分もある。そういう部分を大事にしています。
菅田 ずる賢くもあり、ちゃんとした大人でもあるんですよね。この先、レティシアたちを叱る場面があるのですが、本当に修学旅行のときの先生みたいなところがあって(笑)。ちゃんとした大人がいてよかったなと思えるはずです。
沢野 ブリアナのキャラクターも最初から決まっていました。見た目が派手な子なので誤解されがちですが、実際はとてもいい子なんです。原作では親のために頑張る姿を意識して書いていました。
菅田 ブリアナは男性心理をレティシアにレクチャーするシーンがすごく効いているなと感じます。ブリアナ自身の性格も素敵ですが、ストーリーとしても重要な役割を担っているので、ぜひ注目してみてください。
――レティシア役の白石晴香さんとクラーク役の福山潤さんのお芝居はいかがですか?
沢野 レティシアは明るい子なので、オーディションでは声に明るさがある方がいいなと思っていました。白石(晴香)さんはまさに元気いっぱいのお声で、聞かせていただいた瞬間、「あ、レティだ!」と思って、白石さんにお願いすることになりました。
菅田 レティシアは早口で喋らないといけないシーンがたくさんあるんです。白石さんはかわいらしいお声を維持しながらしっかり早口で喋っていて、本当にすごいなと感動しました。かわいらしくて、優雅で、愛らしい……なのに、ものすごく早口で面白い。すさまじかったですね。
沢野 クラーク役もいろいろな方のお声を聞かせていただきましたが、福山さんは圧倒的な包容力がありました。この声で甘いセリフを言われたら原作ファンの方も絶対にたまらないだろうなと(笑)。
菅田 カッコいいのに面白いのもすごいですよね。
沢野 そうなんです! コメディ感とのギャップも素晴らしかったです。
菅田 アフレコをリモートで聞かせていただいて、キャストさん同士のやりとりも聞かせていただいたのですが、福山さんは普段からユーモラスで面白くて、それがクラークの包容力にも表れているのかなと思いました。
――では、第1話をご覧になった感想はいかがでしたか?
菅田 コミカライズよりもレティシアのお嬢様度が増していて、妃教育から解放されたときとのギャップに驚きました。さらに面白くなったレティシアの落差がお気に入りです。
沢野 第1話からオリジナル要素がかなり入っておりまして、実は原作ではレティシアの妃教育のシーンってほとんどないんです。だから、第1話を見たときは「うわ、レティかわいそう」と思ったのですが、そのぶん後半の妃教育から解放されるシーンは私も明るい気持ちになりましたし、素晴らしい構成と演出だなと感動しました。
――教育係のライラもいい味を出していましたよね。
沢野 そうなんです。書き下ろしに名前が出てきたくらいのキャラクターなのですが、教育係としてビシバシやってくれて(笑)。相手は絶対にへこたれるだろうという、くじらさんのお芝居が素晴らしかったですし、それに耐えて成長するレティシアの忍耐力もすごくて、2人とも魅力的でした。
――では、第2話以降で楽しみにしてほしいことを教えていただけますか?
菅田 これからメインキャラクター以外にも、どんどん面白いキャラクターが登場します。お隣のあの国のあのキャラクターとか、その従者のあのキャラクターとか(笑)。ぜひ楽しみにしていてください。
沢野 原作に沿いながらも、監督がアニメならではの面白さをどんどん取り入れてくださっているので、最後まで楽しく見ていただけると思います。これから登場する濃いキャラクターたちが、どのようなやりとりを見せてくれるのか。楽しみにしていただけたら嬉しいです。
妃教育から逃げたい私
【スタッフ】
原作:沢野いずみ(主婦と生活社刊)
キャラクター原案:菅田うり、夢咲ミル
監督・キャラクターデザイン:田頭しのぶ
シリーズ構成:金巻ともこ
美術監督:川上美穂
美術設定:佐南友理
色彩設計:田中美穂
撮影監督:山脇奈々実
編集:小野寺桂子
音響監督:郷田ほづみ
音楽:林ゆうき、近谷直之
音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:EMTスクエアード
【キャスト】
レティシア:白石晴香
クラーク:福山潤
ナディル:羽多野渉
ブリアナ:斉藤佑圭
ルイ:堀江瞬
ライル:土岐隼一
リリー:園崎未恵
マリア:末柄里恵
公式HP:https://kisakikyouiku.com/
公式X:@kisakikyouiku
©沢野いずみ・主婦と生活社/妃教育から逃げたい製作委員会
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