2019年5月24日に公開された映画『プロメア』。突然変異で生まれた炎を操る人種〈バーニッシュ〉と、人々を守る高機動救命消防隊〈バーニングレスキュー〉のそれぞれに属するふたりの主人公が、ぶつかりあいながら共に地球の脅威に立ち向っていく、熱い魂がぶつかり合うバトルエンターテインメント作品です。差別や信念の対立といった深いテーマ性や、色鮮やかな色彩、ダイナミックな映像表現などで注目を集め、異例のロングランとなった本作がまもなく6周年を迎えます。こちらを記念して、PASH!2024年7月号に掲載されたクリエイティブディレクター・若林広海さんとEXILE/FANTASTICSの世界さんの対談インタビューを抜粋してお届けします!
気持ちよさと喪失感が共存した おかわりしたくなる魅力
世界(以下、世) 当時のお話をお聞きできたらと思います! まず、『プロメア』はどこから企画が始まったんですか?
若林(以下、若) 『キルラキル』の制作が終わった後、体力的にもオリジナルのTVシリーズ(2クール)を作り続けることに限界を感じていて、2時間の劇場作品なら限界までクオリティを高めてもやり切れるんじゃないかと思い、企画をスタートさせたんですけど…結果的に企画スタートから制作現場に入るまでのプリプロ作業に4年もかかっちゃいました(笑)。
世 それは言ってみればTVアニメより大変だった部分もあったりして。
若 ありますね(笑)。チームとしても劇場作品の制作が初体験だったので、逆に頑張りすぎてしまって。
世 なるほどなるほど。チーム的にはやり切った感じでしたか?
若 もちろん、完成当時としてはやり切ったつもりだったんですけど、改めて観返すとデザインや色彩などアートの部分に関して詰め切れてなかった部分に若干後悔があって。その数年後に制作した『STAR WARS:VISIONS EP3 “THE TWINS”』で両作のキャラクターデザインとアートディレクターを担当したコヤマシゲトさんを中心にリベンジじゃないですけど、『プロメア』でやり切れなかったアートをより進歩させようと思いました。そんな挑戦を、日々続けている感じですね。
世 止まらないですね! どうなっちゃうんですか、この先。当時は初めて観るTRIGGER作品が『プロメア』だという人も多かったんじゃないですか?
若 そうですね。『プロメア』をきっかけに『キルラキル』や『グレンラガン』まで遡ってくださって。
世 『トップをねらえ!』までいった人も…。
若 いると思います(笑)。
世 「あの立ち方は何なんだ」って。
若 そうそう。今石(洋之)監督チームとしても、これまで作ってきた作品は勿論、GAINAX時代に影響を受けた先輩方や作品へのリスペクトも込めた集大成にしたかったんですよね。そんなイースターエッグ的に詰め込んだ細かいネタも全部調べたいと何度も劇場へ通ってくださった方も多かった印象です。それに一度観た方が周囲に布教してくださり、そのおかげで広まっていった部分もあって。『プロメア』はそういった熱心なファンの皆さんに支えられた作品だとも思うので、本当にありがたいですね。僕らにとっても、まだ見ぬ新しいものを作っている高揚感があったと思います。
世 若林さんご本人は『プロメア』ではクリエイティブディレクターをされていますが、本当にいろいろなことをされていますよね。
若 なんでも"やりたがり"なんですよね(笑)。なので毎作品クレジットが変わっちゃう。
世 クリエイティブオフィサーって、なんだよって(笑)。
若 そうそう(笑)。ちょうど先週参加した海外イベントの取材でも全く同じ質問をされましたよ。
世 ははは、やっぱりそうですよね。こんな役職作るの、若林さんしかいないですよ。
若 直訳すると〝クリエイティブ警察”ですからね。監督やデザイナーが描くデザインを検閲してるイメージ。お前、なんでそんな偉そうなんだっていう(笑)。
世 どうするんですか、10年後くらいに本当にクリエイティブオフィサーができちゃったら。
若 意外と他にこのクレジットを使う人、出てこなかったですね。
世 誰もできないですよ。僕、TRIGGERさんの作品を観るたびに今回の若林さんの役職はなんなんだろうって気になります。これはたぶんTRIGGERファンはあるあるだと思うんですけど。
若 単純に、いろいろ口を出しすぎてるんですよね(笑)。
世 それは昔からなんですか?
若 そうですね。以前僕が所属していたGAINAXというスタジオの独特な文化だと思っていて。GAINAXって役職関係なくアイデアを出し合えたり、「やりたい!」とアピールすると、一度はバッターボックスに立たせてくれるんですよね。
世 おお。いい現場ですね。
若 絵描きじゃなくてもデザインのアイデアを出したいと言えば、じゃあやってみればみたいな。でもそこで結果を出さないと次の打席は回ってこないシビアな環境ではあったんですけど。
世 その精神、やろうと思ってもやれないですよ。
若 今の時代、ほかの人の仕事を奪いかねないのでどうなのか、みたいな意見もあると思うんですけど。TRIGGERでは今も立場関係なく熱量がある人にはチャンスを与えようという方針は続いています。
世 その方針だと、熱量がある人しか入ってこないですよね。
若 そうなるといいですね。若い世代が見たときに、先輩たちが楽しそうにアニメを作っているように見えるといいなという気持ちがずっとあります。さらに、その作品を観てくれた方々も楽しい気持ちになってくれたらそれ以上嬉しいことはないです。
世 まさしく『プロメア』の冒頭でタイトルが出て『inferno』が流れたとき、すごく楽しくなります。
若 わくわくしますよね。
世 気持ちよさもあれば喪失感もあって、合法ドラッグみたいな魅力が詰まっていて…おかわりしたくなっちゃうんですよね。
↑『プロメア』は劇中歌の良さも作品の魅力のひとつ!
仕事を仕事だと思わず 遊び心をもつことが大切
世 今だからこそ言えることはありますか?
若 そうですね…今石さんと中島さんの作品では恒例なんですが、一度完成した脚本を全部捨てて書き直してもらってるんですよ。『プロメア』は元々リオが主人公で相棒が炎生命体のメラというキャラでジュブナイルものに近い設定でした。その脚本も面白かったんですけど、監督が描きたい映画と少しジャンルが違っていた。でも、方向転換は毎回なんですよ。『グレンラガン』も『キルラキル』も途中まで脚本が進むんだけど途中で捨てることになる。
世 TRIGGERあるあるですか?
若 今石・中島作品あるあるですね。
世 それはクリエイティブオフィサーとしてはどうなんですか?(笑)
若 オフィサー的にも(笑)、監督がこの脚本に体重を乗せられるかどうかは強く肌で感じられるので。どう方向転換するか一緒に考えるようにしています。
世 そう考えると若林さんって大事なキーパーソンですよね。
若 僕だけじゃなく、チームみんな今石監督のファンなんです。僕らは今石さんに対して、自身が納得いくものを作ってほしいという気持ちが強いんですよ。
世 それって結構不思議で独特な関係性ですよね。
若 今石監督は僕やコヤマさんやすしおさん含め、参加するスタッフの意見をすごく大事にしてくれるんですよね。スタッフがアイデアを出し易い空気感を作ってくれていて、くだらないアイデアも「うんうん」と聞いて面白ければ採用みたいな。やりたいことを汲んでくれつつ、それぞれがポテンシャルを発揮できる場を用意してくれる。その関係性は他のチームとも違うかもしれませんね。
世 一任するだけじゃないってことですよね。それはすごく魅力的な現場のひとつだし、その関係性で仕事ができるのはなかなか不思議ですよね。
若 脚本の中島さんもよく言うんですけど「脚本を読んだ今石さんが笑ってくれたら勝ちだ」って。そのために僕らは仕事をしてる、みたいなところはありますね(笑)。
世 それ、すごいですよね。幼馴染みたいな…なんだろう?
若 大先輩なんですけどね(笑)。
世 年齢も世代も違うのに、そういった関係を築けるのがすごいです。そんな若林さんが今、仕事を続けるモチベーションってなんですか?
若 昔から変わらず思っていることがあって、仕事を仕事だと思わないことが大事だなって。僕自身ずっと遊んでいるような気持ちで仕事をしているんですよ。それでも当然辛いこともありますよね。でも「ベースは楽しいことをやっているんだ」という気持ちがあるので、辛くても「楽しい」というゾーンのなかでの「辛い」出来事ではある。なので、基本的には何をやってても楽しいというか。この仕事をやっていて辛いときって、だいたい自分自身が自分の仕事に妥協できなかったり、諦めれば楽はできるけど諦めたくないとか。でもそれってやっぱり、仕事が楽しいからこそ生まれる辛さなので結果的に仕事は楽しいという結論に戻れるなって。
世 本当にそう思います。これを読んだ人はみんなそう思ってほしいなと思うのですが、僕みたいな若造が言っても説得力がないから、いろんな先輩の言葉を借りて伝えたいんです。遊び心、大切ですよね。辛くてもそれが経験値になるから。
若 あとは、興味のない仕事のなかに自分が興味を持てる部分をどう作るかが重要だと思うんです。
世 まさしく!
若 僕のやっている仕事ってほぼそれで。今石さんと中島さんがやりたい企画の中に自分がやりたいこと、好きでいられる要素をどれだけ作れるか、みたいな。ほんと些細な部分でも良いんですよ。それがあるだけでグッと興味が持てる要素が増えるわけで。
世 間違いないですね。金言だなぁ。
若 あとは、ずっと新人みたいな気持ちで仕事をしてます(笑)。
世 そうは若手がさせてくれないんじゃないですか。
若 新人みたいな立場でいたら、ずっと無責任なこと言っていられるじゃないですか(笑)。
世 若林さんって結構…語弊があったら申し訳ないんですけど、いい意味で"新人のちゃらんぽらん感"をずっとまとっている方だと思うんです。その武器は無敵だなって。
若 そう見えていたなら嬉しいですね。
世 それがいちばんいいですよね。永遠にやる気はあるし。いい言葉だと思うな。
若 どうしても、時間が経つと嫌でも立場って上がっていくじゃないですか。偉そうに見られたくなくても、若い子から見たらどうしても怖そうとか偉そうに見えてしまう。
世 そのイメージは若林さんには全くないですね。TRIGGERの座組がそうなのかもしれないけどみんな横並びのイメージで、だからこそいろいろなアイディアが出せるのかもしれないですね。アニメに限らず、クリエイティブの現場の理想形のひとつがこの座組なんだろうな、とお話ししていて感じました。
若 ありがとうございます。
世 そんな皆さんが作る次回作も、すごいことになりそうですね。楽しみにしています!
Text=鈴木 幸
(PASH!2024年7月号より抜粋)
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映画『プロメア』
アニメーション制作:TRIGGER
製作:XFLAG
配給:東宝映像事業部
■公式サイト:https://promare-movie.com/
■X:@promare_movie (https://x.com/promare_movie)
©TRIGGER・中島かずき/XFLAG
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