落ち着いたしゃべりと独特の口調、膨大なインターネット知識を持つ『にじさんじ』のニューカマーライバー・黛灰。クールな立ち居振る舞いが人気を呼び、デビューしてすぐに登録者9万人を突破した。そんな彼に、今までの生い立ちや環境、周囲の仲間について、たっぷり語ってもらった。
(※本インタビューは、「PASH!」2019年11月号に掲載されたものです)
<インタビュー>
――簡単に自己紹介をしていただいてよろしいでしょうか?
黛 『にじさんじ』所属バーチャルライバーの黛灰。どうぞよろしく。こんな感じかな。
――普段はどのような活動をされていますか?
黛 主にはゲーム実況。他には先輩たちの調査とかかな。
――ハッカーという噂をお聞きしましたが……?
黛 普段はホワイトハッカーとして企業に携わっているよ。ペネトレーションテスト(システムへの侵入を試みて、脆弱性を調べるテスト)っていう、セキュリティに問題がないかチェックしている係っていうのが正しいかな。
――登録者数が9万人を突破しましたが、今どのような心境ですか?
黛 いい意味でも悪い意味でも実感がないかな。トントン拍子にいっちゃった感じがするし、配信中のコメントは緩やかだから、人数の割にはのんびり活動させてもらってる。
――コメント以外の視聴者の反応は見ていますか?
黛 Twitterはもちろん、Discord内にあるファンの非公式サーバーに捨て垢で見に行ったりとかしてるね。あとは非公式wikiやニコニコ大百科のコメント欄の談義とか……「深淵を覗くものは深淵にまた覗かれている」みたいな。お互いに監視下にある感じが面白いかも。
――黛さんは『にじさんじ』全体を俯瞰的に観察しているイメージがあります。
黛 どういう人たちがいるのか興味があって、全体を見てるっていうのはあるかも。そもそも人と腹割って話すタイプじゃなくて、どっちかっていうと集団にスっと入って、全体を見て何か言って去っていく立ち回り方が多かったから。
――幼い時からそうだったんですか?
黛 そうだね。施設のほうでも、あんまり場に馴染めることは多くなかったかな。それで多分師匠がパソコンについてとか教えてくれたんだと思う。
――施設とは、どんなところですか?
黛 児童養護施設みたいなそういう感じだね。身寄りのない、小さい子から高校生まで。卒業したら出なきゃいけないし。
――何歳から入っていたのでしょうか?
黛 2歳だね。幼い頃に両親が事故で亡くなって施設に引き取られて、あまり馴染めなかったところを、職員の人が気を揉んでくれたって感じなのかな。当時から物静かなほうだったっていうのは言われている。
――師匠はどんな方か覚えていらっしゃいますか?
黛 大学の教授かなんかやってるのかな。技術訓練指導っていうの? 例えば音楽とか、興味のある分野に対して有志が来てくれるっていうのがあって。そのうちのひとりって感じかな。
――どのようなことを教えてもらっていたのでしょうか?
黛 パソコンに興味があったから触らせてもらっていて、あとは雑談が多かったかな。俺の好きな『serial experiments lain』(リアルとネットをテーマにした作品)っていうアニメを知ったのもそこからだし。プログラミングとかインターネットについて教えてもらって、あとは俺の独学って感じ。
――ネットカルチャーに触れるようになったのはいつぐらいからでしょうか?
黛 小学生ぐらいかな。WEBチャットが全盛期だった頃。インターネットに触れていたら、いつのまにか2ちゃんねるにたどり着いていて。ニコニコ動画ができる前のVIP板やネトゲ実況板の流れとか、ゲームに関する情報サイトをよく見てたかな。一緒に攻略するために、チャットサイトとか、あとMSNメッセンジャー、IRC、ICQ(いずれもメッセンジャーソフト)とかで情報交換することが多かった。
――配信時のゲームウィンドウが「2434system(詳細不明、一部のライバーが話題に出している。『にじさんじ』の配信に関係するとかしないとか?)」になっているのは、なぜですか?
黛 あれは単純に俺が「2434system」を使ってるから。
――他のライバーの方は「2434system」っていう言葉は使わないですよね。
黛 それぞれの世界があって解釈が違うんじゃないかな。俺も実際に使用しているけど、これがどういうことをしているのか、ひとことでは表せないんだよね。ただの配信アプリなのかな。それに関して調べているからこそ、鈴木(勝)君とか(出雲)霞とかに接触を持つ必要があったって感じかな。
――黛さんは普段どのような生活を送っておられますか?
黛 難しい質問だね。ネットワークのテストみたいなのをやってるから、あんまり人に話せないしさ。本当は職場に行かなきゃいけないんだけど、家から出たくないっていうのもあるし。それ以外の時は、ゲームをしたり、普通に人としての生活を送っているかな。生活リズムがめちゃくちゃなだけで。
――深夜配信が多いですよね。
黛 施設にいるから、声とか入らないようにって考えると、どうしても空いてる時間が深夜になるんだよね。他の子の邪魔になったりもするし。
――食事は普段どのようにされていますか?
黛 放送が始まる前か終わった後にとってる。基本1日1食か2食かな。完全食で済ませるか、もしくはデリバリーだね。
――完全食とはどのようなものですか?
黛 それひとつだけで人が構成する栄養素を全部取れるみたいなもの。カロリーやその他の栄養素も含めた食品。飲み物とかグミとかもあって、それを摂取している感じかな。
――飲み物はいかがですか?
黛 水しか飲まないね。酒は好き好んで飲んだりはしないかな。でもお酒は強いほうだと思う。
――成人男性の飲酒配信は観てみたいです!
黛 呼ばれるなら興味はあるけど、俺が全員を介護することになりそうなんでちょっと怖いんだよね。
――最近19年デビュー組の男性とコラボで盛り上がっていましたが、他の3人それぞれの印象を教えていただいてよろしいですか?
黛 (三枝)明那はいいゲーム仲間だね。マイナーゲーとかに詳しくて、話題を振ると返ってくるんだよね。多分これが掲載されている頃には幾つかコラボしているんじゃないかな。俺たちふたりが主催で色んな人に勧めて、っていうのもある。このゲームはこの人にやってほしいね、っていうのを話しあう機会が多いから、仲はいい方なんじゃないかな。エクス(アルビオ)はやってることがめちゃくちゃなんだけど、人に愛されるような存在って絶対に必要だって言ってたら、案の定爆発的な人気を博すようになった感じかな。俺が好調だったところを追い上げてきたのに関しては、かなり悔しい部分もあるけど、同時に素晴らしいって思っているかな。裏でゲームを数回やってるんだけど、毎回エクスが俺に突っかかってきて。たぶん倒したい存在なんだろうね。(加賀美)ハヤトさんは、子供の頃先代社長についてくる感じで施設に来ていたね。俺を含めて施設の子がハヤトさんに遊んでもらう機会が多くて。特に俺は施設の子との絡みが少なかったから、とりわけ多かったかな。ハヤトさんが社長になってからは、距離感は正直掴みかねる部分はあるよね。お互い成長して立場も変わったし、子供のままじゃないから。でも一緒にゲームやってるときは、昔みたいにやれてるなって思う。根は変わらないんだろうねお互い。
――同期の相羽ういはさん、アルス・アルマルさんとの3人組「ぶるーず」で一緒に活動した感想をお聞かせください。
黛 ふたりのことはわりと好きかな。面白いし、ふたりが何してるのか、気になるところはあるかも。ういはは天然っていうか、どこかほっとけないような、施設の子供たちを見ているときの感覚に近い。時々出てくる突拍子もない発言とか怖いものなしな感じ、危うくもあるけどその純粋さを大事にして欲しいなって思う。アルスは察しがよくて、一緒に過ごしてて、安心するタイプ。『マインクラフト』でやり取りするときとかに通話をつないでなくても、仕草で伝わったりとかね。意思疎通を図らなくても伝わるから、安心する相手ではあるかな。賢い面白さ。
――他の方が、黛さんは先回りして気遣いのできる人物と称していたのを聞きました。何か気にかけていることはありますか?
黛 むしろクセになっているのかな。育ちからなんだろうね、「他人」と接する機会しかなかったわけだし。「家族」とか「友人」とかそういう関わり合いがなかったから。
――誰に対しても気を使ってしまうんですか?
黛 気遣いなのか、単純に自己保身なのか分かんないけど。人が何を望んでいるか、なんとなく察知するクセみたいなのがついてるんだと思う。俺自身もやってやろうと思ってやってるわけじゃないし。
――今後やってみたいことはありますか?
黛 正直やりたいことはほぼできている状態だから、より洗練した状態で継続していきたいという感じかな。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
黛 最後まで見てくれてありがとう。デビューする前は、VTuberって正直舐めてたんだよね。ふたを開けてみると、エンターテインメントとして面白いことをやろうと思ってる人がいっぱいいて、考えを改めさせられたかな。俺をきっかけにいろんなVTuberとか、『にじさんじ』の他のライバーとかを知ってもらえたらうれしいかな。ぜひ俺のライバー調査放送を観てほしいよね。俺のことをすでに知ってる人は、一緒に新しいことを観たり知ったりしてもらえるとうれしいかな。
Text=たまごまご
■にじさんじ
公式サイト : http://nijisanji.ichikara.co.jp/
公式Twitter : @nijisanji_app
黛灰:@mayuzumi_X
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Source: PASH! PLUS
『にじさんじ』落ち着きのあるトークと鋭い洞察力、 知性あふれるニューカマーライバー・黛灰にインタビュー!