アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』のアニメシリーズと、映画版の前章・後章が各配信サービスにて配信スタート。これを記念して、PASH!5月号に掲載された小比類巻健一役・内山昂輝さんのインタビューの一部をお届けします。
※本記事は2024/4/10発売「PASH!5月号」にて掲載したインタビューより、一部内容を抜粋したものになります。
※本記事は劇場版前編までのネタバレを含みます。ご鑑賞後にお読みください。
「小比類巻ははたから見るとよからぬ方向へ転落していますが、
彼自身はそれが正しいことだと信じています」
――『デデデデ』の原作漫画の印象を教えてください。
「侵略者」の母艦という「世界の終わり」を象徴するものがあるのに、それでもなんとなく続いていく日常の風景がとにかく異質で。自分の人生を重ねて共感できる部分と、想像もつかない要素が同居している雰囲気が独特な作品だと感じました。――『デデデデ』以外の浅野いにお先生の作品を読まれていたら、その魅力についてどう感じますか?
全部ではありませんが、『ソラニン』や『おやすみプンプン』、それと短編を以前読みました。日常の中で描かれる、若者たちの何とも言えない悶々とした複雑な感情が見事に描写されていて、作画も物語の内容も非常に濃密だと思います。そのなかでも『デデデデ』はSF的要素も活かした作品で、私にとってはとても新鮮でした。
――内山さんが演じる小比類巻の人物像についてどうとらえていますか?
音楽好きでミュージシャンの言動やネット上の意見に影響されやすい、基本的には普通の文化系男子なんです。それがある日、大きな悲劇がおこってしまってからは、人が変わって「侵略者狩り」に乗り出してしまいます。はたから見るとよからぬ方向へ転落しているんですが、彼自身はそれが正しいことだと信じている。その変化が大事なキャラクターだと思っていたので、高校生時代はちょっとかわいらしい感じを出すようにして、変化後はガツンとダークな方向へ振り切り、キャラクターの見た目の変化も含めて表現するように意識しました。ただ、最初のテストでは闇に堕ち過ぎていたようで、スタッフサイドから「ちょっと変え過ぎかな」と修正指示が入りまして。何度かやりとりをしながら、うまい落としどころを探っていったんです。
――闇落ち後の小比類巻の核にあるものとは何だと思いますか?
やはり大きいのは、キホさんのことだと思います。あれをきっかけに「侵略者」に対するスタンスがより憎悪の方向へ大きく傾きましたし、社会に対するいら立ちもあり、現状を否定したい思いが暴走したのだと推測しています。もともと自分自身の考え方が固まりきっていなかった彼が、悲劇をきっかけにさまざまなものの影響を受けて悪い方向へ転がった結果、ああなってしまったんでしょうね。
――本作の主人公である門出とおんたんの印象を教えてください。
ふたりともごく普通の女子高生に見えて、いろいろな意味でギャップを抱えていますよね。門出がよくできた優しい子で、おんたんが奇抜で変わった子なのかと思いきや、小学生時代のおんたんは意外にも内気な少女で、門出は正義を貫こうと強い意志を持つ少女で…。ふたりの印象がガラッと変わってしまうところに驚かされました。
――門出役を演じる幾田りらさんと、おんたんを演じるあのさんのお芝居をご覧になってどう感じましたか?
いやもう、見事としか言いようがないというか。すでに他の分野で大活躍されているおふたりが、声優としても見事なお仕事をされていて、素晴らしかったです。おふたりとも、素の声質がいいんですよね。うらやましいです。それだけでなく、難しいキャラクターの感情表現を見事にこなされていて。アフレコのときに幾田さんのセリフがスピーカーから流れたんですが、整音する前のはずなのにすごくよくて。また、あのさんの声は今のアニメのキャラクターにマッチしやすい声質だと思います。おんたんは普段のキャラクター性も独特で、号泣したり嗚咽したりするシーンがあったり、小学校時代は別人のようにおとなしかったりと、幅広い表現を求められる役柄なんです。セリフ量も多いうえ、独特のノリのセリフばかりなんですけど、どのポイントも見事に表現されていて。多才な方だなと思いました。
――完成映像をご覧になった感想はいかがですか?
設定が複雑でキャラクターも多く、前後章のアニメ映画にまとめるのは難しい作品なのに、一本の面白い映画として見事に成立させているところに、スタッフの方々のこだわりを感じました。「侵略者」の母艦や自衛隊の兵器といった派手で目立つ要素が緻密に描かれている一方で、日常生活でのキャラクターの動作や髪がなびくところ、風や雪の描写といった目立ちにくい部分も繊細に描かれていて、あらゆる部分にいたるまで作りこまれているのが伝わってきました。
――門出やおんたんたちの日常を描く物語序盤をご覧になって、どんな思いを抱かれましたか?
どこにでもありそうな、なんでもない1日を楽しそうに過ごしているところが、とても尊く見えました。平和を脅かす存在がいつも視界に入ってくるんだけど、それでも学校には行かなければならないし、放課後には友達の家に遊びに行ったりと、否応なしに世界は進んでいく。この平和な日常がいつまで続くかわからないけれど、だからこそ友人たちと過ごすなんでもない時間が、とても尊く、そして美しく映るんだと思います。自分にとって学生生活はもう遠い過去になっているので、なにも特別なことはないけれど楽しそうな時間が、とてもまぶしく見えました。
――個性的なキャラクターがたくさん登場しますが、特に内山さんが注目しているキャラクターは?
やっぱりひろしですね。まず諏訪部順一さんの声の説得力ですべてを持っていかれるというか。謎の発言が多くてうさんくさく思えるんですけど、彼が言っていることはだいたい全部物事の核心を突いているんですよね。そして、ひろしがおんたんの背中を押したことが大きな決断につながり、おんたんの行動が門出に影響を与えるので、物語の核にいて世界を変えるのはじつはひろしでもあるんです。とても個性的なので、飛び道具的なギャグキャラのように見えてしまうと思いますが、じつは非常に重要な役割を担っているキャラクターなんです。
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